63.ネズミ
西の国のとある街。
その街に、竜人が出現した。
住民たちはすでに全員避難を完了していた。
しかし、街に駆けつけた竜征軍の隊員たちと連絡が途絶えた。
事態を重く見た竜征軍は、新たに二人の隊員を派遣した。
イフ・フォーエバー。
そして、ラク・ヴィリーブ。
二人は竜人を討伐するため、街へと足を踏み入れた。
***
「……人がいないと、なんだか怖いね……ラク!」
静まり返った街を歩きながら、イフが口を開いた。
「怖いんだったら帰れ、雑魚」
「……っ! やっぱり怖くない!」
「ほんとに帰れよ、カスッ!!」
そんなやり取りを交わしながらも、二人は周囲を警戒し、街の中を調査していた。
***
やがて、二人は一軒の古い建物へと、足を踏み入れた。
「……誰もいないね」
「ああ……そうだな」
建物の中は静まり返っていた。
「んー……。街の人がいないから、竜人がどこにいるのかも聞けないし……。どこにいるんだろう……」
「……黙って探せよ」
「むっ! 探してるよ!」
「じゃあ、後は黙れっ!」
「……うるさいっ!」
「なんだとぉ……!」
二人が睨み合った、その時だった。
カサカサカサカサッ。
「…………?」
何かが動くような音が聞こえた。
二人は同時に音のした方へと目を向ける。
「……でけぇネズミだ」
イフがボソッと呟いた。
「……静かな建物の中だから、ネズミの音が響くな」
ラクも小声で答えた。
一匹の大きなネズミが、部屋の奥へと走っていく。
そして、扉の向こうへと姿を消した。
「………………」
「………………」
二人はなぜか、その様子をじっと眺めていた。
すると――
「きぃ、きぃ、きぃ!」
ネズミの鳴き声が聞こえた。
「…………?」
イフが首を傾げる。
「……さっきのネズミだろ」
「……そうっぽいね」
「どうでもいい。ほっとけ。ここにはいなさそうだ。次を探すぞ……」
ラクが歩き出そうとする。
「……え? でもさ、ラク!」
「……あ?」
「ネズミって鳴くの?」
「……鳴くだろ、たまには」
「いや、鳴くだろうけどさ!」
「どっちなんだよテメエは!」
イフはラクの言葉を無視し、ネズミが入っていった部屋へと近づいていく。
「……なんか、こう……嫌な予感っていうか……。なんでネズミが鳴いてるんだろうなぁって……」
一歩。
また一歩。
イフは慎重に足を進めた。
「しょうもないなお前は……。先に行くぞ、俺は」
「いや、待ってよ! ラク!」
さらに一歩。
「……少し見るだけだから…………」
「………………」
ラクは呆れたようにイフを見ていた。
イフが、部屋の入り口へと手を伸ばす。
その瞬間――
「…………っ!?」
ラクの表情が変わった。
「だらああああっ!!!」
「ぐへえっ!?」
ラクの爆音波が、イフの身体を吹き飛ばした。
ドゴォンッ!!
イフの身体が壁に叩きつけられる。
「……な、なにすんだよラク!!」
イフが抗議の声を上げた。
――その直後。
ドチャアッ!!
「…………!?」
イフの目の前を、白い紐のような何かが通り抜けた。
「……え!? 何これ!?」
「攻撃されたんだよテメエは! 逃げろっ!!」
ラクが怒鳴る。
すると――
「うふふふ♡」
どこからか、男の笑い声が聞こえてきた。
「あんたら、少しはやるようだ」
「「…………!?」」
二人は声のした方へと振り向いた。
そこには――
腕が何本も生えた、異様な姿の男が立っていた。
「うふふふ♡ あんたらの探し物は俺だよ」
男は不気味な笑みを浮かべながら、二人を見つめていた。
「………………っ!」
イフは、先ほどまで覗こうとしていた部屋へと視線を向けた。
そこには、白い紐にベッタリと絡め取られ、身動きの取れなくなったネズミの姿があった。
「…………」
イフは息を呑んだ。
「……蜘蛛みたいな奴だな」
ラクが呟く。
すると男は、ニヤリと笑った。
「…………ご名答♡」
「ごへあっ……!!!」
ドゴォンッ!!
男の顔面に、イフの拳がめり込んだ。
「出やがったな竜人! ぶっ倒してやる!」
イフが拳を振り抜きながら叫ぶ。
「…………」
ラクはその光景を眺め、呆れたように頭を掻いた。
「…………なんかこの光景、見たことあるな」




