60.能力を知ろう
訓練所。
そこには、イフとサブの姿があった。
「いいか、イフ。龍から力を受け継いだ人間のことを、なんて言う?」
「竜人!」
「うむ。じゃあ、竜人から人間へも能力を継承できることは知っているな?」
「うん! もちろん! ……皆、竜人から継承されたんだよね!」
「ああ、そうだ。じゃあ、能力の継承方法がいくつもあることも知ってるな?」
「え、ええっと……。普通に授けたり、無理やり奪ったり……あとは、一部だけ渡したりだよね!」
「お見事」
サブはそう言って、人差し指を立てた。
「俺たちが持っている能力は、皆それぞれ違った方法で継承されたものだ」
「うん!」
イフは真剣な眼差しで、サブの話に耳を傾ける。
「まず、ラクは『音』だ。音で斬撃を生み出したり、でけえ声で爆発を起こしたり、逆に音を消したりもできる」
「うん! すごいよなっ!」
イフは勢いよく頷いた。
「エーズは『雷』だ。雷を全身に纏えば超スピードで動けるし、一点に集中させれば、雷を纏った強力な攻撃もできる」
「あれ、俺もやってみたい!」
イフは目を輝かせた。
そして、ふと思い出したように尋ねる。
「そういえば、キリは? キリも何か能力を持ってるの?」
「ああ。キリは『氷』だ」
「こおりっ!? すげえ!!」
「冷気を集中させれば、一瞬で氷を作り出せる。逆に、冷気を操って氷を溶かすこともできる。なかなか応用の利く能力だ」
「そーなんだ! すげえ!」
「お前が崖から落ちたときも、あいつは氷で階段を作って崖を下っていったぞ」
「そんなんもできるんだ!」
イフは感心しきりだった。
そして、勢いよくサブの方へ振り向く。
「じゃあサブは!? サブはどんな能力なの!?」
「ん? 俺か?」
「うん!」
「…………俺の……能力はな」
サブはそう言うと、胸ポケットから一本のペンを取り出した。
「……? ……ペン?」
イフが首を傾げた、その瞬間。
ドゴォンッ!!
「……うわおっ!?」
凄まじい音が訓練所に響き渡った。
サブが手にしていたペンが、地面に叩きつけられたのだ。
いや、正確には――。
まるで見えない巨大な手に押し潰されたかのように、ペンは地面へと深々とめり込んでいた。
「……な、なんだ!?」
イフは目を見開き、地面にめり込んだペンを凝視する。
サブは何事もなかったかのように口を開いた。
「俺の能力は『重力』だ。……竜王の力だよ」
「………………」
一瞬、沈黙。
そして。
「……す、すげええええええ!!!」
イフの目が、これまでにないほど輝いた。
「ま、マジか!? 竜王ってことは、めちゃくちゃ強いんじゃんっ!」
「うん。マジで強いぞ」
サブはそう言って腕を組んだ。
「……いいか、イフ。俺が言いたいのはな」
そこで、言葉を区切る。
「竜人を倒せるくらいに強くなるには、能力がほぼ必要不可欠になってくるってことだ」
「必要……不可欠」
「ああ。銃だけじゃ厳しい戦いもある。筋力を鍛え、頭をフル回転させて戦ったとしても、能力があるかないかじゃ大きく違ってくる。それくらい、能力ってのは脅威なんだ」
「……そ、そうだよね……」
イフは俯き、自分の手を見つめた。
自分には、能力がない。
これまで二度、竜人と戦った。
そして、二度とも負けた。
能力を持つ相手に、どうすれば勝てるのか。
自分に何が足りないのか。
イフはずっと考えていた。
すると、サブが勢いよく口を開いた。
「そこでだっ、イフ!」
「……え?」
「当面の最終目標は、竜人から能力を授かることだ!」
「おおっ! 目標!」
イフの顔がぱっと明るくなる。
「相手は弱い竜人でも構わない。まずは、そいつから能力を継承できるくらいまで強くなるんだ。そうすれば、能力を手に入れることができる」
サブはニヤリと笑った。
「能力さえ手に入れれば、あとはそれを伸ばしていけばいい。そこから一気に強くなれるぞ!」
「能力を……!」
イフは拳を握りしめた。
そうだ。
自分も能力を手に入れれば、もっと強くなれる。
今まで勝てなかった相手にも、いつか勝てるようになるかもしれない。
「そうだよね! 能力を手に入れるところからだもんね!」
イフは顔を上げ、サブを見据えた。
「わかった! じゃあ早速……俺、サブと戦ってみたい!」
「ははっ! 元気だな、イフ!」
サブは楽しそうに笑った。
「よし。そうと決まれば、何でも使っていいぞ?」
サブは軽く両腕を広げた。
「俺をぶっ倒してみろ」
「よっしゃあ! 任せとけ!」
イフは地面を蹴り、サブに向かって勢いよく走り出した。
サブとの特訓は、まだ始まったばかりだ。




