59.イフ、二度目の復活
一ヶ月後。
「復活だあああああああ!!」
イフの叫び声が響き渡った。
「うるせえよ!」
ラクがすかさず怒鳴る。
「えへへ! ごめんって、ラク!」
イフは鼻を人差し指で擦りながら、悪びれもなく笑った。
「ははっ! 元気だなお前ら」
サブはそんな二人を見て笑った。
「改めてお前ら、今回の『嵐の竜王』の件、よくやった!」
「……ほぼサブがやってただろうが」
ラクがぼそっと呟く。
「何言ってんだ、ラク! お前らがいなきゃ、俺はあいつに会うことすらできなかったかもしれないんだぞ」
サブは続けた。
「それに、竜王の襲撃にもかかわらず、人民への被害はほぼゼロだ。これは本当に凄いことだぞ」
「はいはい……」
「ははっ! 不貞腐れるなよ、ラク! 飯でも奢ってやる!」
「安いなぁ、おい!」
賑やかな二人。
イフはそんな二人を眺めながら、なんだか嬉しくなった。
すると、サブがふと思い出したように口を開いた。
「ところで、イフ!」
「……えっ!? はい!」
突然名前を呼ばれ、イフは背筋を伸ばした。
「今回の戦い、お前……竜王に何発か弾を当てたらしいな」
「う、うん! 何発か当てたよ!」
「……何発当てた?」
「えっと……」
イフは指を折りながら数え始めた。
「……4……いや、5発!」
「……ふぅん」
サブは腕を組み、しばらく考え込んだ。
そして。
「…………イフ。今日から毎日訓練だ」
「えっ!?…訓練!?なんで!?竜人討伐は!?」
イフは目を丸くした。
サブは淡々と答える。
「もちろん、討伐任務にもたまには出てもらうつもりだ。……だがな」
そこで一度、言葉を切った。
「まだお前は弱すぎる。単独で任務を任せられる実力じゃない」
「……っ!」
イフの表情が変わった。
「最初はな、1、2回ほど任務に同行させて、それで終わりにしようと思っていた」
サブはイフを見据える。
「……変に戦わせて、死なせたくなかったからな」
「…………」
イフは黙ってサブの話を聞いていた。
「……だが」
サブが口を開く。
「そんな弱いお前が……竜王に攻撃を当てた」
「……っ!」
「俺は、これを単なる偶然だとは思わない」
イフは目を見開いた。
「……少しは、最初の頃より期待してるってことだ」
「……ほんとに!? サブ!」
イフの顔がぱっと明るくなった。
「一人でそこそこの竜人を倒せるくらいには強くならないとな。だから、任務はしばらくお預けだ」
「……そ、そっかぁ」
イフは少しだけ肩を落とした。
……そうだ。
俺は、まだ弱い。
これまで二度、竜人と戦った。
そして、二度とも負けた。
今回だって、もし仲間がいなかったら……。
今こうして生きていることすら、奇跡だったのかもしれない。
イフはそう思った。
けれど。
やがて顔を上げ、サブの目を真っ直ぐに見つめた。
「わかった、サブ! 俺、もっと頑張るっ!」
「ははっ! いい度胸だ。毎日みっちり俺が特訓を見てやるよ……!」
「………………え?」
イフの動きが止まった。
「……ん? どうした?」
「さ、サブと一緒にできるの!?」
その声は、先ほどの復活宣言にも負けないほど大きかった。
「お、おう。そのつもりだが……」
「すげえ!! 竜王をぶっ倒したサブが見てくれるのか!」
イフの目がキラキラと輝いた。
そして、自分の両手をじっと見つめる。
「ははっ! ……もっと強くなれる!」
イフは拳をぎゅっと握りしめた。
「頑張るぞぉ!」
サブとラクは顔を見合わせた。
サブは、ほんの少しだけ笑みを浮かべた。
「よおし、イフ。今から早速やるぞ」
「えっ、今から!?」
「急いで部屋に戻って準備してこい。俺は先に訓練所へ行ってる」
「早速だなっ! わかった!」
そう言うや否や、イフは勢いよく走り出した。
あっという間に、その姿は見えなくなった。
「……おい、サブ」
ラクが鼻で笑いながら口を開いた。
「……ん?」
「あんなこと言っといて、どうせ見込みがねえって判断したら、もう任務に出さないつもりだろ?」
サブは一瞬きょとんとしたあと、笑った。
「はははっ! そう思うか?」
「……ん? どういうことだ?」
「……あいつは、見込みがあるかもしれないってことだ」
「……何?」
ラクが意外そうな顔をする。
「まっ……“かも”だけどな!」
「…………珍しいなお前」
「……そうかい? 俺の勘が鈍ったかもなっ!」
「…………勘っつーか……」
ラクは呆れたように呟いた。
「……まあ、そうだな。勘とかじゃねえな」
サブは笑いながら歩き出した。
「ただ、部下が頑張ってるのが好きなだけかもな」
「……親みたいだな」
「はははっ!」
サブは豪快に笑った。
「だが、マジで強くする気でいるよ。竜王に攻撃を当てたって話を聞いたときは、感心したからな」
「まあ、程々にしてやれよ」
「ああ」
そうして二人訓練所へ向かって歩き出した。
***
一方、エーズ。
腕を骨折したため、しばらく休養中だった。
ベッドの上で、エーズは不満げに唸る。
「……くそっ」
動かせない腕を見つめ、悔しそうに顔を歪めた。
そして、叫ぶ。
「俺も仕事したいっ!」




