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イフリート  作者: 野口プレシオサウルス太郎
第2章 竜征軍
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56/112

54.洞窟


「…………まじかよ……」


サブは崖を見下ろした。


思っていたよりも、ずっと高い。


「……くそっ……おい、キリっ!」


「…………!?」


「村の人を呼んで、ここまで連れてきてくれ!!」


「……あ!う、うん!」


「そいつらにラクとエーズを預けてやってくれ!その後でいいから、イフを探しに来てくれ!」


サブはそう言うと、もう一度崖の下を見つめた。


「……俺は先に探してるっ!」


「…………え、え!?」


キリが返事をするよりも早く、サブは崖を下り始めた。




***




一方。


洞窟の中。


「…………あ、あれ?」


イフは、薄暗い洞窟の中を歩いていた。


足元には大小さまざまな岩が転がっている。


ゴツゴツとした地面は歩きにくく、少しでも気を抜けば転んでしまいそうだった。


「……あ、あぶねっ!」


イフは慌てて体勢を立て直した。


「……………………」


ふと、足が止まる。


「お、俺……すぐ戻んないと…………」


コツコツ。


コツコツ。


再び歩き始める。


洞窟の中には、イフの足音だけが響いていた。


「……皆が危ないかもしれないのに…………」


コツコツ。


コツコツ。


「…………なんで洞窟の中に入ったんだ……?」


独り言をこぼしながら、イフは歩き続けた。


戻らなければならない。


頭では、そう分かっている。


それなのに。


「…………なんでだろう……………………」


コツコツ。


コツコツ。


「…………なんで…………」


コツコツ。


コツコツ。


「……………………………………」


コツ。


「…………なん……か…………」


コツ。


「……なんか……行かなきゃ……って思ったんだ」


コツコツ。


「……………………」


コツコツ。


「……なんで……行かなきゃって思ったんだ?」


自分でも分からない。


どうして、ここまで来てしまったのか。


どうして、足を止められないのか。


それでも。


「…………行かなきゃ…………」


コツコツ。


「……行かなきゃ…………」


イフは、さらに奥へと進んでいった。





ーーーーーーーーー






そして。


洞窟の最深部。


「………………ここは?」


イフは足を止めた。


洞窟の奥は、濃い霧に覆われていた。


冷たい霧が、地面を這うようにゆっくりと流れている。


天井から滴り落ちる水滴の音が、静寂の中にぽつり、ぽつりと響いていた。



「………………」


イフは、霧の中へと足を踏み入れた。



一歩。


また一歩。


そして――


「………………え?」





《……待ちくたびれたよ!》


妙に明るく、可愛らしい声が響いた。


「…………え……え?」


困惑するイフ。


濃い霧の向こうに、誰かがいる。





それは、


可愛らしい顔。


青く光る目。


大きな手には、少し尖った爪が生えている。


そして、子犬程の大きさだった。


イフは、その姿を見つめた。


「………………」




そこにいたのは。


『龍』だった。

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