↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イフリート  作者: 野口プレシオサウルス太郎
第2章 竜征軍
PR
55/116

53.重力


「ごへあぁ…………っ!!」


ザディの口から血が飛び散った。


全身に走る激痛。


そして、何本もの骨が折れた感覚があった。


「…………ぐおおおっっ!つ、強いっ!」


「二回も言わなくていいぞ?お利口鳥」


サブはそう言うと、ザディの頭をポンポンと叩いた。



「よしっ……。お前らぁ、大丈夫か!?」


すぐさまラクたちへと視線を向ける。


そこには、サブに向けて親指を立てるラクの姿があった。


「はははっ!大丈夫そうだな!」


「……ま、待て!サブ・ストレート!」


ザディが声を上げた。


「……ん?」


「そ、その力……その力は、もしかして!」


ザディは言葉を区切った。


「その力は……重力の竜王ギガントの力ではないか!」


「な、何故お前が!!……その力を!?」


サブはきょとんとした顔を浮かべた。


「な、何故って……理解できないか?」


「ま……まさか…………!」


「まさかだよ。……重力の竜王は俺が倒した」


「……な、何ぃ!!」


(重力の竜王は、既に死んだのか!?)


(確かに最近、姿を見ないと思ったが……!)


(こ……これほどまで……)


(これほどまでに、人間は力をつけているのか!?)


「そ、そんな……ことが…………」





その瞬間――


バサァッ!!


ザディは一気に翼を広げた。


「…………!!」


そして、瞬時に空へと飛び上がり、サブから距離を取った。


「早ぇ!……マジかよ!!」


サブが感心したように声を上げる。


「……はあ……はあ……はあ……」


ザディは荒い息を吐きながら、サブを見つめていた。


(重力の力が切れた瞬間、瞬時に距離を取れた!)


(この能力には射程距離があったはずだ!これほど離れていれば、届くわけがないっ!)


(…………だがっ!!!)


ザディは必死に思考を巡らせた。


一方、サブは。


ニヤニヤと、まるで遊んでいるかのような笑顔を浮かべていた。


「はははっ!さすが竜王!まだそんな体力あったのかよっ!」


弾んだ声でそう言うサブ。


「……………………」


「……………………」


ザディは、サブの表情をじっと見つめた。


その顔は、まるで子供と遊んでいるかのように明るかった。


そして――


ザディは悟った。





(私はこいつに勝てない)





「…………おい!来いよ竜王!」


サブが手招きする。


「死ぬのはお前なんだろ?殺してさしあげるよ!」


「……………………」


ザディはしばらく黙っていた。


やがて、静かに口を開く。


「……サブ・ストレートさん。あなたは強いですね」


「……そんな言わなくてもわかるって!」


「いえ、本当に強い。おそらく勝てないですね」


ザディは続けた。


「私は逃げます。……だが、覚えておいて下さい。私があなたを必ず殺します」


「はははっ!俺は別に会いたくねえよ!」


「それではサブさん。また会いましょう」


ザディはそう言うと、風を巻き起こした。


そして、空高く飛び去っていった。


「……………………」


(もう二度と会わなそうだな……)


サブはそんなことを思っていた。




「…………サブ!皆がっ!」


キリの声が響いた。


「……あ、ああ!す、すまん!」


サブは慌ててラクたちのもとへ駆け寄った。


「……お前ら、よくやったな!」


「あははっ。今は褒め言葉なんていらねえよ」


ラクが力なく笑う。


「ははっ、だが俺の勘は当たったな!」


「あぁそうだっ!!やべえだろ!お前!」


「はははっ。さすがに竜王がいるなんて思わなかったけどな!」


「……これからは、もっとお前を信用するよ……」


「おう!まあ、何より!」


サブは二人を見渡した。


「……無事で良かったな!お前ら!」


「……………………」


「……………………」


ラクとエーズの表情が曇った。


「……ん?どうした、お前ら」


サブが二人の異変に気づく。


「………………ねぇ、皆?」


キリが小さく呟いた。


「………………イフって子は、どこに行ったの?」


「…………っ!」


サブの表情が変わった。


すると、エーズの目に涙が浮かぶ。


「…………うぅ……イフは……イフは…………っ!」


「……イフがどうした?エーズ!ラク!」


サブが問いただす。


ラクは、しばらく黙っていた。


そして、ようやく口を開いた。


「……イフは…………あそこの崖から落ちたよ」


ラクは崖の方を指さした。


「………………なんだと!?」





***







少し前。


…………。


……。


「……っ」


イフは、ゆっくりと目を開けた。


「……いっつ……」


全身が痛む。


頭も、腕も、足も。


どこを動かしても、鈍い痛みが走った。


「……俺……どうなったんだ……?」


ぼんやりとした頭で、記憶をたどる。


ザディ。


戦闘。


崖。


「……あっ!!」


イフは慌てて身体を起こした。


「そうだ!!俺、崖から落ちたんだ!!」


「戻らないと!みんなの所へっ!!」


イフは周囲を見渡した。



薄暗い。


湿った空気。


足元には大小さまざまな岩が転がっていた。


どうやら、崖の下まで落ちてきたらしい。


「……生きてる……」


イフは胸を撫で下ろした。


そして、ふと顔を上げた。


「……ん?」



目の前。





そこには――


巨大な洞窟が、口を開けていた。


暗闇の奥は、どこまでも深く続いているように見える。


洞窟の入り口付近には、奇妙な形をした岩がいくつも並んでいた。


自然にできたものなのか。


それとも。


「…………」


イフは、しばらくその洞窟を見つめていた。


なぜだろう。


ただの洞窟には、見えなかった。


「……なんだ、ここ」


山の奥底。


誰も知らない場所。


イフは、ゆっくりと立ち上がった。


そして。


洞窟の入り口へと、一歩踏み出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。