52.嵐の竜王⑥
パチパチパチパチパチ。
拍手の音が響いた。
まるで、彼らの健闘を称えるような音だった。
「すごいぞ!お前ら!マジでよくやった!」
サブが高らかに声を上げた。
「強敵相手に、最後まで抗った!これはマジですごいことだぞ!お前ら!」
「…………………」
ザディはゆっくりと後ろを振り返り、サブを見た。
「しかも、見たところダメージも与えているな!」
そう言いながら、サブはゆっくりと歩み寄る。
「俺は優秀な部下を持ったなあ。今日はお前らに飯でも奢らないとなっ!」
そして。
サブはザディの目の前で立ち止まった。
「……………………」
「……………………」
サブの表情から、笑みが消えた。
「お前、竜王だろ?」
「………………………」
バギィッ!!
石が砕けるような音が響いた。
ザディは足に力を込め、へばりついていた氷を無理やり引き剥がした。
バサァッ!!
そして、大きく翼を広げ、宙へと舞い上がる。
「………………」
「………………」
二人は無言のまま、互いを見つめていた。
やがて、ザディが口を開いた。
「……あなた、お名前は?」
「サブ・ストレートだ」
「…………あなたは、他とは違いそうだな」
「ははっ。どういう意味だろうな」
「言葉の通りですよ……。一際、強そうだと言いたいんです」
「竜王に言われると嬉しいな……」
「お世辞じゃないですよ?」
ザディは眉間に皺を寄せた。
「……だけど、残念です。あなたは今ここで死ぬのですから」
「……あぁ。自分が死にたいってことか?」
「………………死ぬのはあなたです」
「戯言は死んでから言う方が面白いぞ?お利口鳥」
「……………………」
「……………………」
沈黙が残った。
そして――
ザディは大きく翼を広げた。
無数の羽根が、サブへと狙いを定める。
(……殺す)
羽根の弾丸を浴びせて殺す。
百発、いや、それ以上を叩き込んで殺す。
跡形もなく、無惨に殺す。
ザディはそう決めた。
そして。
サブへ向けて攻撃を仕掛けようとした、
その瞬間――
ドゴオオオオオオオオオッ!!!!
「…………………?」
ザディは、何が起きたのか理解できなかった。
(……何が起きた?)
先ほどまで翼を広げ、宙を舞っていたはずの自分が。
無惨にも、地面へと叩き落とされていた。
(…………なんだ?本当に何が起きた?)
(……私は空にいたぞ?なぜ地面に?)
ザディは体を動かそうとした。
「…………!?」
動かない。
(……体が動かない!なぜだ!)
必死に力を込める。
しかし、体はびくともしなかった。
そして、ザディはようやく気づいた。
「……違う!動かないのではないっ!」
ザディは目を見開いた。
「……体が……体が…………『重い』!!!」
「よーく聞いておけ、竜王」
「……!?」
ザディは残された力を振り絞り、視線を上げた。
そこには、サブが立っていた。
「………………お前……!」
サブは静かに拳を握りしめる。
「……俺の拳は一味違うぞ?」
「…………………………っ!」
ドガアアアアアアア!!!!
サブは地面に叩きつけられたザディへ、渾身の一撃を叩き込んだ。




