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イフリート  作者: 野口プレシオサウルス太郎
第2章 竜征軍
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52/111

50.嵐の竜王④


………………………………


静寂。


イフが吹き飛ばされ、崖下へと落ちていった。


「…………く、くそっ!!」


ラクが歯を食いしばる。


「…………そ、そんな……」


エーズも、目の前で起きた出来事を受け入れられずにいた。


「……………………」


ザディは、崖の方を一瞥した。


そして、静かに口を開く。


「……よし。これで一人目」


ゆっくりと、視線を戻す。


「…………そして」


その目が、ラクとエーズを捉えた。


「二人目と三人目ですね」




「………………っ!!」


空気が張り詰めた。


二人は身構える。


目の前にいる男は、仲間を崖下へと吹き飛ばした。


そして今度は、自分たちを殺そうとしている。


「……………………」




バチィッ!!


雷が閃いた。


「おらあああっ!!」


先に動いたのはエーズだった。

雷を拳に集中させ、ザディの腕へと叩き込む。



バキィッ!!


「……っ!」


一瞬。


エーズを掴んでいたザディの腕が緩んだ。

その隙を、エーズは見逃さなかった。


「ぅおらぁっ!!!」



バキッ!!


今度は、ザディの顔面へ拳を叩き込む。


「…………!」


ザディの顔がわずかに揺れた。


そして。

エーズの腕が、自由になった。


「今だっ!!」


ラクは一瞬で状況を理解した。


大きく息を吸い込む。


「がああああああああっ!!!」


爆音波がザディを襲った。


「ぬぐおおおおっ!!」


轟音が山中に響き渡る。


衝撃をまともに受けたザディの身体が、大きく吹き飛ばされた。


「危ねぇっ!!」


エーズはすぐさま距離を取る。


地面に土煙が舞い上がった。



「………………」


二人は、砂埃の向こうを見つめていた。


先ほどまでとは違う。


確かな手応えがあった。



「…………やったあっ!!」


エーズが思わず叫ぶ。


「まだだっ!! 油断するなあ!!」


ラクがすぐさま怒鳴り返した。


「…………っ!」


エーズは表情を引き締め、再び身構えた。


土煙が、ゆっくりと晴れていく。


そこには。


地面に倒れたザディの姿があった。



「……………………」


静寂。


しかし。


ザディは、ゆっくりと身体を起こした。


そして何事もなかったかのように立ち上がる。


「…………ふう」


軽く息を吐く。


「……なるほど」


二人を見つめ、静かに呟いた。


「……聞きそびれていましたね」


「…………?」


ラクが眉をひそめる。


ザディは、穏やかな口調で尋ねた。


「……あなたたちのお名前は?」


「………………ラク」


ラクが短く答えた。


その隣で、エーズが不敵に笑う。


「エーズ・キリングだ!! 俺の名前が、お前の最後に聞く名前だよ! バーカッ!!」


「…………ラクさんに、エーズさん……」


ザディは二人の名前を繰り返した。


そして、ゆっくりとうつむく。


「……人間よ」


声の調子が、わずかに変わった。


「ここまで力をつけているとは……」



一拍。



「正直、舐めていました」


ザディは顔を上げた。


その表情から、先ほどまでの穏やかな笑みが消えていた。


「……ですが」


周囲の空気が、わずかに震え始める。


「まだまだですね」



ごおおおおおおおおおっ!!


突如、強烈な風が巻き起こった。


地面の砂が舞い上がり、木々が大きく揺れる。


「…………っ!」


ラクとエーズは、風に耐えながらザディを見つめた。


ザディの身体がゆっくりと宙へ浮かび上がる。


「……ははっ」


ラクが思わず笑った。


「……マジかよ」



ごおおおおおおっ!!


風がさらに強まる。


エーズは拳を握りしめ、再び戦闘態勢に入った。


「…………やってやろうじゃねえか」



バサァッ!!


バサァッ!!


二人の耳に巨大な何かが羽ばたく音が響いた。


ザディの背中。


そこから、巨大な何かがゆっくりと広がっていく。


「……………………」


ラクは目を見開いた。


エーズも言葉を失う。


風が吹き荒れる中、ザディは宙に浮かんだまま、二人を見下ろしていた。


その背中には。


巨大な翼があった。

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