29.ラーとダラー
身長、3メートル。
岩石のように隆起した筋肉
逆立つ金色の髪。
そして、あらゆるものの本質を見透かすかのような、鋭く冷たい眼光。
そこに立つだけで、周囲の空気さえも支配してしまうような圧倒的な存在感。
この男の名は、ラー・シェリアス。
竜人の王。
十一人の竜王、その頂点に君臨する男である。薄暗い部屋の中央。
ラーは床に座禅を組み、静かに目を閉じていた
呼吸は深く、ゆっくりとしている。
身じろぎひとつせず、ただ静寂の中に身を置いていた。
しかし、その心は穏やかではなかった。
(オーグス……)
閉ざされた瞼の裏に、ひとりの男の名前が浮かび上がる。
(お前は……いつも俺の邪魔ばかりする)
ラーの眉間に、わずかな皺が寄った。
(何故だ……)
静かな部屋に、ラーの低い呼吸だけが響く。
(何故、あの時……分かり合えなかったんだ)
その問いに、答えはない。
そもそも、なぜ今になってそんなことを考えているのか。
ラー自身にも、よく分からなかった。
ただ、頭の片隅にこびりついたその記憶が、何度も、何度も蘇ってくるのだ。
るで、忘れることを許さないかのように。
――そして。
ラーの意識は、遠い過去へと沈んでいった。
◇
そこには、多くの竜人と人間がいた。
何処かの街だろうか。
記憶はひどく曖昧で、周囲の景色もはっきりとは見えない。
それでも、人々の声だけは、耳に焼きつくほど鮮明だった。
『もう争わなくていいんだ!』
誰かが叫んでいる。
『俺たちは分かり合える! 人間も竜人も、同じように生きていけるんだ!』
必死に訴えかける声。
その声には、希望があった。
いつか争いが終わると信じる者の、強い願いがあった。
だが――。
『あぁ……死ね』
別の声が響いた。
『死ねぇッ!!』
憎悪に満ちた叫び。
怒号が飛び交い、記憶の景色が揺らいでいく。
何が起きているのか。
誰が叫んでいるのか。
ラーには分からない。
ただ、そこには確かに、分かり合おうとする者たちと、それを拒絶する者たちがいた。
そして。
そんな混沌とした記憶の中に、不意にひとつの声が響いた。
『……ラー』
優しく、穏やかな声だった。
先ほどまでの怒号とはまるで違う。
その声を聞いた瞬間、記憶の景色が止まった。
『君は優しい』
ラーの目の前に巨大な龍の姿が浮かび上がる。
その姿は、あまりにも大きかった。
記憶の中だというのに、今にも押し潰されそうなほどの威圧感がある。
龍は、静かにラーを見つめていた。
まるで、ラーの心の奥底まで知っているかのように。
『君は……優しいんだ』
その言葉を最後に、龍の姿がぼやけていく。
輪郭が崩れ、光景が遠ざかる。
そして、記憶は再び闇に沈んだ。
◇
最後に、ひとりの男が現れた。
無精髭を生やし、だらしなく立つ大男。
その表情には恐怖も、敬意も、微塵もない。
ただ、目の前の相手を挑発するように口元を歪めていた。
『かかってこい。ゴミカス』
その男の名は――。
ダラー・オブ・ロイヤル。
ラーの記憶の中でダラーは不敵に笑っていた。
◇
「…………」
静寂。
ラーは、ゆっくりと目を開いた。
鋭い眼光が、薄暗い部屋の中を射抜く。
しばらくの間、何も言わなかった。
ただ先ほどまでの記憶を頭の中で反芻していた
オーグス。
巨大な龍。
そして、ダラー。
それぞれが何を意味するのか。
今のラーが、何を思っているのか。
その答えを知る者はこの部屋には誰もいない。
「…………クソカスめが」
吐き捨てるような、低い声。
静かな怒りが、その言葉に滲んでいた。
ラーは立ち上がった。
三メートルの巨体が、ゆっくりと起き上がる。
その背中には、広範囲にわたる大きな火傷の跡が刻まれていた。
皮膚は無残に焼け爛れ、古傷となった痕跡が、背中一面に広がっている。
まるで、過去に受けた凄まじい一撃を、今もなお身体に刻みつけているかのようだった。
ラーは何も語らない。
ただ、静かに歩き出した。
その背中に刻まれた傷だけが、彼の知られざる過去を物語っていた。
この話は書いてて楽しかったです。
ただやらかしたって思いました。
意味わかんないですもん。
知らんやつ出てきたし




