表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
姫さまと九人の女騎士  作者: 転生新語


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/3

姫さまと九人の女騎士

(かも)(にく)とは、また贅沢(ぜいたく)ですね。貴族(きぞく)料理(りょうり)()べられるとは光栄(こうえい)です」


 ワインを()みながら、私たちは(ひめ)さまと食事(しょくじ)(たの)しむ。()うまでもないが、こんな無礼講(ぶれいこう)など、通常(つうじょう)はありえない。()(あま)栄誉(えいよ)というべきで、()さくな(ひめ)さまへの敬慕(けいぼ)が、私たち(おんな)騎士(きし)にはあった。


「むしろ、もっと貴女(あなた)たちには、贅沢(ぜいたく)()ってほしかったです。この程度(ていど)のもてなししか、できないことが残念(ざんねん)ですね」


「やめてくださいよ。(ひめ)(あま)やかすと、私たちは(ふと)一方(いっぽう)になりますから。(よろい)()()けられなくなれば生死(せいし)(かか)わります」


 九人(くにん)のなかで、もっとも大柄(おおがら)(おんな)騎士(きし)(わら)ってみせる。つられて(みな)(わら)った。(いま)はもう、節制(せっせい)など(かんが)える必要(ひつよう)もないとなると、そこには解放感(かいほうかん)しかない。


残念(ざんねん)というなら、それは私たちこそですよ、(ひめ)さま。貴女(あなた)には、もっと(なが)()きをしてほしかった」


「いえいえ。()てくださいよ、この美貌(びぼう)を。こんな私が、あと五十年(ごじゅうねん)()きたら、どれだけシワが()えると(おも)いますか? この(うつく)しさのままで、()()らせてください」


 また(わら)いが()こる。本当(ほんとう)に、()(てき)(ひめ)さまだった。いつまでも(つか)えていたいと(おも)うのは、私だけではなかったはずだ。


「まあ(おとこ)(はじ)めた戦争(せんそう)で、(ひめ)さまや私たちが、この()から()されるのは(しゃく)ではありますね。騒動(そうどう)()こすのは、いつも(おとこ)たちですよ。そうやって(おんな)たちは()かされるばかりです」


(いくさ)()()てる、私たち騎士(きし)()うのも(なん)ですがね。同感(どうかん)ですよ。(ひめ)さまの父君(ちちぎみ)勇敢(ゆうかん)に、(てき)()()かわれて()くなりました。()(のこ)った我々(われわれ)(みな)(ごろ)しにされるでしょう」


 この(しろ)(てき)包囲(ほうい)されている。兵糧(ひょうろう)()めにあっている我々(われわれ)は、()って()るしかない。もう(しろ)備蓄(びちく)していた食料(しょくりょう)()きるので、私たちは最後(さいご)食事(しょくじ)(たの)しんでいるのである。


「むしろ、そのほうがマシですよ。()(のこ)れば私たちは、()よりも(つら)(あつか)いをうけることでしょう。私は(てん)(かえ)ることができるのです、信仰(しんこう)をもっていて()かったと(おも)います」


 この()(すく)いがなければ、(たし)かに()は、(てん)からの(すく)いなのだ。私たち(みな)が、そう(おも)っていた。


(ひめ)さま……、もし来世(らいせ)があるとしたら、(つぎ)はどのような(せい)(のぞ)みますか?」


 つまらない質問(しつもん)を私はしてみた。こんな機会(きかい)がなければ、(たず)ねることもなかっただろう。


「うーん……、すぐには(おも)いつきませんね。貴女(あなた)たちは、どうですか?」


 (ひめ)さまから、(ぎゃく)(たず)ねられる。すると、あちこちから回答(かいとう)()てきた。


「私は結婚(けっこん)ですかね。()()んで、(そだ)ててみたかったと(おも)います」


(のぞ)むのは、(いま)(ちが)った世界(せかい)です。そこで政治(せいじ)(たずさ)わって、戦争(せんそう)回避(かいひ)できれば()いですね」


(はな)()でて、()きてみたい。そう(おも)います」


 その()、ひたすら無責任(むせきにん)(あそ)びたい、来世(らいせ)贅沢(ぜいたく)をしてみたいなどなど。騎士(きし)とは無縁(むえん)生活(せいかつ)をしてみたい、という意見(いけん)一致(いっち)していた。さて、私は来世(らいせ)になにを(のぞ)むのか。


「私は……、来世(らいせ)も、(ひめ)さまにお(つか)えできればと(おも)います。この(けん)で」


 (こし)()している(けん)(しめ)しながら、私は(こた)える。(ひめ)さまは微笑(ほほえ)んでくれた。


「さすが、私を守護(しゅご)する(おんな)騎士(きし)(だん)の、団長(だんちょう)ですね。でも、あまり(しば)られてほしくないなぁ」


 (やさ)しい()で、(さら)(ひめ)さまは(つづ)けた。


(いま)、わかりました。私が(のぞ)む、来世(らいせ)(せい)が。私は貴女(あなた)たち九人(くにん)が、(しあわ)せな人生(じんせい)(あゆ)めるよう、(おく)()してあげたい。それが私の(ねが)いです。(ほか)には、なんにもありません」


 このときの私は、ただただ、(しあわ)せだった。この瞬間(しゅんかん)が、この世界(せかい)での私の人生(じんせい)において、もっとも幸福(こうふく)だったと断言(だんげん)できる。(ひめ)さまからの(あい)は、それほどまでに(おお)きかったのである。食事(しょくじ)()えた私たちは、円卓(えんたく)から()()がる。


「これから、最後(さいご)(たたか)いに()かいます。一足先(ひとあしさき)に、(てん)()っていますので」


 一礼(いちれい)して、あとは()(かえ)らず、私たちは(ひめ)さまから(はな)れていく。厩舎(きゅうしゃ)まで移動(いどう)し、(うま)にまたがって「開門(かいもん)!」と私は(めい)じた。(ひら)かれた城門(じょうもん)から私たちは(そと)へと()()していって────この()、私たちは祖国(そこく)(とも)滅亡(めつぼう)した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ