第3話:破壊を生み出す者(3)
「ナラ君。……君に、倒すべき『悪』の正体を伝えておく」
私は、鉄扇の手入れをしはじめたナラに声をかけた。
ナラは、鉄扇をパチンと鳴らし、獣のような目で私を見た。
「……待ってたわ。で、どこのどいつ?」
私は、深く息を吸い込んだ。
「奴の名は……」
私が、その名前を言おうとした瞬間だった。
壁に設置された魔導テレビ。
画面には、『緊急特番:天才ヴェリタス姉妹の衝撃の真実』というテロップが踊っていた。
「……?」
私の思考が停止した。
画面に映し出されていたのは、記者会見の席に座る一人の男だった。
黒いコートは着ていない。
包帯も巻いていない。
仕立ての良い高級スーツを着て、髪を整え、清潔感のある眼鏡をかけた紳士。
だが、その目つきだけは変わっていない。
あの、爬虫類のように冷たく、計算高い目。
リニア・アルゴリズムだった。
『……はい。その通りです。私は、探偵のナラティブ・ヴェリタスと、科学者のエラーラ・ヴェリタスの、実の父親です。』
リニアは、マイクに向かって、流暢に、沈痛な面持ちで語り出した。
『若い頃、私は貧しさゆえに、娘たちを手放してしまったのです。ですが、私は片時も忘れたことはありませんでした。彼女たちが立派に育っていると知り、私は、恥を忍んで名乗り出たのです。しかし……』
リニアは、ハンカチで嘘の涙を拭った。
『娘たちは、私を拒絶しました。私を追い返したのです。私はただ、失われた家族の絆を取り戻したかっただけなのに……』
スタジオがどよめく。コメンテーターたちが騒ぎ立てる。
「……なに……これ……?」
ナラが、震える声で呟いた。
彼女は、画面に映し出された証拠書類――DNA鑑定書と、戸籍謄本を凝視していた。
父:リニア・アルゴリズム
長女:エラーラ(旧名エル)
次女:ナラティブ(旧名無し)
ナラが、ゆっくりと振り返った。
世界が崩れる音がした。
「……お母様……これ……どういうこと?」
「……」
「あんた……あたしの、お姉ちゃんだったの?そして……あの『キモいおっさん』が……あたしたちの、パパ……?」
バレた。
最悪の形で。最悪のタイミングで。
リニアの「痛い演技」は消えていた。
中二病設定は、すべてかなぐり捨てていた。
彼は今、「悲劇の父親」という、大衆が最も同情し、好む「設定」に乗り換えたのだ。
「……殺すか……」
私の右手に、青白い魔力が収束した。
高密度のプラズマ光弾。
これを放てば、テレビ局ごとあの男を蒸発させることができる。
私には『救星の勲章』がある。
この勲章は「世界を破滅から救った魔女」エラーラ・ヴェリタスのみに与えられた、実質的な免罪符だ。
あの男は、国際的な人身売買の元締めだ。殺す正当性は大いにある。
その時。
私の腕が、強い力で掴まれた。
ナラだ。
「放せ!あいつを生かしておいてはいけない!あいつは私たちの人生を……!!」
「ダメよ!」
ナラが、悲鳴のような声で叫んだ。
彼女は泣いていた。
だが、その手は私の腕を万力のように締め上げていた。
「あいつを殺したら……お母様が死ぬわ!」
「何を!私には救星の勲章が……!」
「そんなもの、ないのよ!」
ナラは、私を揺さぶった。
彼女の目が、絶望に染まっていた。
「『救星の勲章』には、一つだけ例外が……『尊属殺人』……」
私は、凍りついた。
王都法第108条。
『子による親の殺害は、いかなる理由があろうとも、即時死刑とする』
この国は、儒教的価値観で動いている。
親は絶対だ。
「あいつが『他人』なら殺せたわ。でも、あいつは『父親』だと公表した。DNA鑑定書まで出した。世界中が、あいつをあたしたちの親だと認めたのよ!」
ナラの声が震える。
「今あいつを殺せば、お母様は即座に処刑台行きよ!あいつはそれを知ってて、わざとテレビに出たのよ!」
私は、腕から力を抜いた。
リニアは、知っていたのだ。
私が勲章を持っていることも。私が彼を殺そうとしていることも。
だから、先手を打った。
テレビを使って、大衆を味方につけ、法という最強の盾を構えたのだ。
「……あ、あぁ……」
私はその場に崩れ落ちた。
私の最強の武器は、あの道化師の手のひらの上で、ただのガラクタに変えられた。
『……さらに、専門家の意見を聞いてみましょう』
テレビの声が続く。
法律家が、冷徹に解説している。
『王都では、子は親に対し、財産の半分を分与する義務があります。これは一般的慣習です。ヴェリタス姉妹は、富豪です。つまり、彼女たちが親に財産を渡さずに逃げていたというこの客観的な事実は……』
王都市民の怒りの声が流れる。
この国では、子供は「年金」代わりだ。
子供は親に資産を奪われ、自分が親になって自分の子供から奪い返すことで元を取る。
その「いじめ」の連鎖が、社会経済のシステムとして定着している。
私とナラは、一夜にして国民の敵となった。
その時。
階下のドアが、乱暴に蹴破られた。
悲鳴が聞こえる。1階の獣医師ケンジと、その妻アリアの声だ。
階段を上ってくる足音。
事務所のドアが開いた。
そこに立っていたのは、高級スーツを着崩し、葉巻をくわえたリニアだった。
「……よお。愛しい娘たち。パパが帰ってきたぞ」
リニアは、靴のまま部屋に上がり込み、ソファにドカッと座った。
そして、テーブルにあったナラの宝石箱を勝手に開け、中身をジャラジャラとポケットに入れた。
「……触るな」
ナラが、掠れた声で言った。
「あたしの……あたしが命がけで稼いだ金よ……」
「生意気言うな!」
リニアは、ナラの頬を札束で叩いた。
「誰のおかげでこの世に生まれたと思ってる?俺がいなけりゃ、お前らなんて存在すらしてないんだよ。つまり、お前らの体も、才能も、稼いだ金も、全部俺の所有物だ」
リニアは、私のデスクに足を乗せた。
「エラーラ。お前の勲章、俺によこせ。あれがあれば、俺のビジネスはもっと広がる。ゼランディアだけじゃない。世界中のスラムから奴隷を集めて、合法的に売りさばける」
「……貴様……!」
私は殺意で視界が真っ赤になった。
右手が熱くなる。撃ちたい。蒸発させたい。
だが、動けない。
窓の外には、野次馬とマスコミが群がっている。
今ここで彼に指一本でも触れれば、私は「親殺しの狂人」として即座に連行される。
ナラも共犯になる。
リニアは、ニヤリと笑った。
「悔しいか? 天才科学者様。だが、これが『現実』だ。お前の科学も、勲章も、この国の『道徳』の前では無力だ。俺から卑屈に逃げていた分際で。まず謝れ、この卑怯者」
彼は、私が大事にしていた研究論文を破り捨て、それで葉巻の灰を受けた。
「痛いおじさん?中二病?……バカはお前らだ。俺はな、他人を騙すために、『無能なフリ』をしていただけだ」
リニアは、やりたい放題だった。
冷蔵庫の高級食材を食い荒らし、壁に飾っていた絵画を剥がし、家具を蹴り壊した。
「おい、ナラティブ。コーヒーだ。前みたいに『リニア様すごーい』って言いながら淹れろよ。あの猿芝居、傑作だったぜ?娘が親父とも知らずに、媚びへつらって餌付けしてるんだもんなぁ。腹抱えて笑うのを堪えるのが大変だったよ」
ナラは愚かな男を手玉に取っていると思っていた。
だが、実際は逆だった。
この男は、私たちが彼を嘲笑っていることさえ知った上で、それを楽しんでいたのだ。
「さて!……これからは毎日来るからな。今日の稼ぎの半分、きっちり用意しておけよ」
リニアは、高笑いしながら部屋を出て行った。
窓の外からは、市民の歓声が聞こえてくる。
蹴り壊された家具。食い散らかされた料理。
そして、床に座り込んだまま動かないナラ。
私は、瓦礫の中に立ち尽くしていた。
息苦しい。
絶望が、私の気道を塞いでいる。
法も、世論も、血縁も、すべてがあの男の味方。
私たちは、搾取されるための、家畜。
「……ねえ、お母様」
ナラが、消え入りそうな声で呟いた。
「あたしを未来で拾ってくれたのは、アンタだった。……どうして?」
ナラが、潤んだ瞳で私を見た。
「あたしが『特別』だったから?世界を救う英雄の素質があったから?」
「違う」
私は、首を横に振った。
「私が君を助けたのは……魂が、君を、知っていたからだ」
ナラの目が大きく見開かれた。
「私は知らなかった。君も知らなかった。私が姉だなんて。……でも、私の魂は知っていたんだ。『この子も、私だ』と。『この子も、私と同じ呪いを背負い、同じ孤独の中にいる半身だ』と」
私は、ナラの目を見据えた。
科学者としての冷静さと、姉としての情熱を込めて。
「ナラ君。私は、地獄へ行くつもりだ。あの男を……私たちの父親を、社会的に、精神的に、そして物理的に抹殺する地獄へ。……ついてくるかい?」
ナラは、涙を拭わなかった。
代わりに、私に飛びつき、強く、肋骨が軋むほど強く抱きしめた。
彼女の腕の中で、私は確信した。
私たちは、折れていない。
・・・・・・・・・
数日後。
リニア・アルゴリズムは、我が世の春を謳歌していた。
彼は連日テレビに出演し、「悲劇の父親」を演じながら、私たちへの批判を煽っていた。
そして、ついに彼は、大衆の支持を盤石にするための「大博打」に出た。
記者会見の席上。
レンヤは、神妙な顔つきで宣言した。
『……世間では、親が子の財産を管理することに批判もあるようです。ですが、考えてもみてください。親とは、子のすべてを背負う存在です。私はここに誓います。私は、娘たちの資産だけでなく、すべての負債も、親として責任を持って肩代わりします!!』
フラッシュが焚かれる。
称賛の嵐が巻き起こる。
リニアは、勝ち誇った顔でカメラを見据えた。
彼は知っていたのだ。
ヴェリタス姉妹は「富豪」だ。借金などあるはずがない。
「負債も背負う」と言ったところで、実質的なリスクはゼロ。
金のない庶民に対し、「俺はリスクも背負う聖人だ」とアピールするための、完璧なパフォーマンスのつもりだった。
探偵事務所のテレビでそれを見ていた私は、冷ややかに笑った。
「男気とやらを見せるか!……だが、よく言ったと褒めておこう!ハーッハッハッハ!」
リニアは、致命的な見落としをしていた。
彼は、自分より愚かな人間を騙すのは得意だが、「自分より賢い人間が仕掛けた罠」を嗅ぎ分ける能力が欠落している。
修羅場での危機管理能力が、決定的に低いのだ。
私は、手元の通信機を起動した。
相手は、王都政府の財務大臣だ。
「……ヴェリタスだ!『あれ』を解凍してくれ!」
『……本気かね?あれを公表すれば、君の信用に関わるぞ』
「構わない!今の私の保護者は、リニア・アルゴリズム氏だ!彼が全責任を負うと、たったいま、全国民の前で宣言したばかりだからね!」
『いいだろう。手続きは完了した』
数分後。
会見中のリニアの元に、政府の役人が青ざめた顔で駆け寄った。
そして、一枚の書類――いや、辞書のように分厚い請求書の束を渡した。
『……なんだこれは?政府からの感謝状か?』
リニアは、余裕の笑みで書類を開いた。
そして、凍りついた。
請求書:王都防衛戦における市街地損壊賠償、および大規模魔術行使による環境浄化費用
請求先:エラーラ・ヴェリタス(代行者:リニア・アルゴリズム)
請求額:300,000,000,000クレスト
『……ぱ?』
リニアの声が裏返った。
これは、ブラフだ。
かつて私が世界を救った際、戦闘で街を破壊しまくった。
本来なら賠償請求されるところだが、政府は私に「最高勲章」を与えることで、「賠償金は請求されているが、勲章の特権により支払いを無期限延期する」という政治的処理を行っていたのだ。
いわば、私の「武勲の大きさ」を数字で示すための、架空の負債だ。
政府と私しか知らない、国家機密レベルの帳簿上の数字。
だが、リニアは宣言してしまった。
「娘の負債をすべて背負う」と。
そして、私が勲章の効力を一時的に停止させた瞬間。
その3000億クレストの請求は、法的に有効な借金として、リニアの肩にのしかかったのだ。
『さ、3000億……!?ば、バカな……! ゼロの数が……!』
リニアは、生放送中であることを忘れ、書類を握りしめて絶叫した。
冷や汗が滝のように流れ、整えていた髪をかきむしる。
『間違いだ!陰謀だ!俺は払わんぞ!こんな金、払えるわけがない!』
記者が突っ込む。
「リニアさん?先ほど、全責任を負うと……」
『うるさいッ!これは……これは「闇の組織」の攻撃だ!』
リニアの目が泳ぐ。
呼吸が荒くなる。
そして、彼の表情から、「知的な紳士」の仮面が剥がれ落ちた。
『そうか、そう来たか……!世界政府の「影の支配者」たちが、俺の財力を削ぐために経済制裁を仕掛けてきたか……だが無駄だ!俺は物理法則を超越している!俺は……俺は選ばれし「ゼロ・ブレイブ」だぞぉぉぉッ!』
会場が静まり返った。
誰もが、ポカーンとしている。
私は、画面の前でコーヒーを啜った。
「……戻ったね」
リニアの「まともそうな言動」。
あれこそが、彼が必死に身につけた『演技』だったのだ。
本来の彼は、プレッシャーに弱く、現実逃避癖のある、痛々しい中二病患者だ。
3000億という、想像のキャパシティを超える現実を突きつけられ、彼の精神は「妄想」へと逃げ込んだのだ。
ここからが、彼の本領発揮だ。
それからの数日、レンヤの奇行は加速度的に悪化した。
彼は、高級レストランで無銭飲食を繰り返した。
「お勘定は?」と聞かれると、彼は真顔でこう答える。
「……フッ。俺は『王都の父』。もはや私はリニア・ヴェリタスだ。この国の経済は俺が回している。つまり、この店も俺の領土だ。領主が領土で食事をして、なぜ金を払う必要がある?」
店員がつまみ出そうとすると、彼は店先で演説を始める。
「見ろ!愚民どもよ!俺の娘、エラーラとナラティブは、悪の科学者と破壊魔人だ!あいつらが作った3000億の借金は、世界を滅ぼすための兵器開発費だ!俺は、それを一人で背負い、世界を守っているのだ!崇めろ!称えろ!俺こそが『ヴェリタス第三の男』だ!」
通行人は、遠巻きに彼を見て、ヒソヒソと話し始めた。
「……あれ、本当に父親か?」
「頭おかしいんじゃないの?」
「あんなのが親だったら、そりゃ娘たちも縁切るわよ」
「3000億の借金って、全部こいつが作ったんじゃ……?」
世論の風向きが変わり始めた。
「可哀想な父親」から、「触れてはいけない狂人」へ。
そして、「あんな狂人に粘着されているヴェリタス姉妹への同情」へ。
……だが、まだ足りない。
「狂人」なだけでは、法は彼を裁かない。
「悪人」と断定させなければならない。
私は、ナラティブに合図を送った。
「……ナラ君。トドメの準備だ」
ナラは、ニヤリと笑った。
「最高のステージを用意したわ」
その日、王都最大のホールで『世界魔導学会・年次総会』が開かれていた。
当然、テレビ中継も入っている。
私は、壇上に立った。
スポットライトが私を照らす。
「……本日は、魔法の発展について話す予定でしたが。
予定を変更します」
私は、背後の巨大スクリーンに、あるデータを投影した。
会場がざわめく。
映し出されたのは、魔法陣でも数式でもない。
『南国ゼランディア・人身売買ツアー顧客名簿』と『裏帳簿』だった。
「私の父と名乗る男、リニア・アルゴリズムのスキームの正体を、ここで公表します」
私は、淡々と事実を述べた。
「彼は、過去10年にわたり、発展途上国の貧困層の女性を『王都への留学』と騙し、富裕層向けの人身売買サービスを斡旋する国際犯罪組織の元締めをしていました。これは、その証拠映像です」
スクリーンに、隠し撮りされた映像が流れる。
リニアが、南国の酒場で少女たちに囲まれ、汚い笑みを浮かべている映像。
会場から悲鳴が上がる。
私は、さらに畳み掛けた。
「彼は、娘である私たちがこの事実を知っていると気づき、先手を打って『親権』を主張し、私たちを口封じしようとしたのです」
カメラのフラッシュが、嵐のように焚かれる。
テレビの前の国民は、今、真実を知った。
あの「痛いおじさん」の正体が、笑えない「国際指名手配級の犯罪者」であることを。
王都政府のホットラインがパンクした。
『私も騙された!』
『あいつに子供を産まされた!養育費を払え!』
『娘が帰ってこない!あいつが連れ去ったんだ!』
ゼランディアだけでなく、周辺諸国からも。
100人を超える被害者たちが、一斉に声を上げた。
リニアの顔と名前は、あまりにも特徴的すぎた。
「黒いコートの包帯男」という、あまりにも目立つ痛い格好が、皮肉にも「確実な証拠」となって、過去の悪事を紐付けたのだ。
そして、彼女たちが請求した損害賠償額。
一人当たり数億クレスト。
合計すれば、数百億クレストに上る。
政府は発狂した。
「あのバカを何とかしろ!国が潰れる!」
深夜。
探偵事務所に、一本の電話が入った。
発信者は不明。だが、その声は王都の最高権力者のものだった。
『……エラーラ・ヴェリタス君かね。単刀直入に言おう。リニア・アルゴリズムの件だ』
声は、疲労と焦燥に満ちていた。
『DNA鑑定の結果は……彼は間違いなく、君たちの父親だ』
「知っています」
『だが、国家存亡の危機だ。だからこそ、我々は、公式見解として、以下の決定を下した』
相手は、息を飲んでから、告げた。
『リニア・アルゴリズムは、ヴェリタス姉妹の父親ではないと「判明」した。彼は、他国のテロリストであると断定する』
私は、受話器を握りしめた!
『勝った』!
「……つまり?」
『つまり、だ。彼は「尊属」ではない。ただの「国家反逆者」だ。君の持つ『特別免罪符』の適応範囲内だということだ』
事実上の、殺人許可。
いや、「暗殺依頼」だ。
『飛行場と港は、すでに封鎖した。もし彼が、国交のない第三国へ高飛びし、亡命でもされたら、王都の威信は地に落ちる。我々が動けば、外交問題になる。つまり……』
「『民事』として、娘たちが処理しろと?」
『察しが良くて助かる。あの「汚点」を完全に消去してくれたまえ。依頼でも許可ではない。「命令」だ。』
電話が切れた。
私は、受話器を置いた。
震えは止まっていた。
あるのは、冷徹な、「狩り」への高揚感だけ。
「ナラ君。お上の許可が出たよ」
私は、ナラを見た。
「リニア・アルゴリズムは、『私たちの父親ではなかった』。これより、全力で叩き潰す」




