表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴェリタスの最終定理2 ナラティブ・ヴェリタス【●印の章だけ読んで】  作者: Wan Liyue
●第5章:破壊を生み出す者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

234/292

第2話:破壊を生み出す者(2)

「さらばだ、エラーラ。握手をしよう!」


私、エラーラ・ヴェリタスは、その手を見た。


「……ッ!」


私は、反射的に一歩下がった。

背中が壁にぶつかる。全身の鳥肌が立ち、胃の底から酸っぱいものがせり上がる。


「……触るな!」


「ん?」


「私に触るなと言っているんだ!その薄汚い手を近づけるなッ!」


私の絶叫に、リニアはきょとんとし、それからニヒルに笑って手を引いた。


「……潔癖症か。孤高の科学者には、他者の体温すらノイズになるようだな。いいだろう。その『心の壁』、嫌いではない」


彼は、独り言をつぶやきながら去っていった。

ドアが閉まった瞬間。

私はその場に崩れ落ち、自分の右手を――彼に触れられそうになった手を――服で何度も、何度も拭った。


「……汚い。汚い汚い……!」


ナラが驚いて駆け寄ってくる。


「お母様!?どうしたの?ただの握手じゃない」


「違う!ナラ君、消毒液を持ってきてくれ!私の皮膚が……細胞が……あの男の『情報』を拒絶しているんだ……!」


これは異常だ。

私は科学者だ。非論理的な感情は持ち合わせないはずだ。

だが、この震えは何だ?

あの「痛々しい無職のおっさん」を見た瞬間に走る、この根源的な恐怖は、一体何だ?


それからの数日間。

私は、研究の一切を放棄し、ソファの隅で膝を抱えていた。

食事が喉を通らない。

眠れば、あの男の夢を見る。

黒いコートを着て、「ククク……」と笑う男の顔が、いつの間にか私の顔に変わっている悪夢を。


「……分析だ。分析しなければならない!」


私は、ぶつぶつと独り言を繰り返した。

なぜ、リニア・アルゴリズムという「ノイズ」が、私の脳髄にこれほどこびりつくのか。


仮説1、恋。


「うぇッ……」


思考した瞬間に嘔吐した。あり得ない。


仮説2、前世の因縁。

彼は「時空の漂流者」などと妄言を吐いていた。

もしや、私の魂が彼を知っている?

かつて私が殺した敵? あるいは、私を殺した殺人鬼?

だから本能が「逃げろ」と叫んでいるのか?


仮説3、平行世界の自分。

私は鏡を見た。

銀髪の、青い瞳の私。

黒髪の、死んだ魚のような目の彼。

似ていない。外見は似ていない。

だが……「現実社会に適合できず、自分の殻に閉じこもっている」という精神構造は?

彼は、私が老いた姿、すなわち「あり得たかもしれない未来の成れの果て」なのではないか?


「……嫌だ……」


私は頭を掻きむしった。


一週間後。

私は限界を迎えていた。

体重はみるみるうちに落ち、目は窪み、幽鬼のようになっていた。


深夜。

私は書斎に入った。

確かめなければならない。

私のルーツを。

私が「何者」であり、なぜあの男に「引力」を感じるのかを。

私は金庫を開け、『ヴェリタス家・家系図』を取り出した。

私の養父である博士の名前の下で、線は途切れている。

博士には実子がいなかった。

そこに、後から付け足されたように、私の名前が書かれている。


『養子:エラーラ(出自不明)』


「……知っている。これは知っている」


私は孤児だ。

22年前、スラム街の掃き溜めで、私はボロ布にくるまれて捨てられていた。

それ以前の記憶はない。

私は、家系図の裏から、封筒を取り出した。

それは、私が拾われた時に身につけていた「遺留品」が入った封筒だ。

博士は「お前が大人になったら見なさい」と言って、遺してくれたものだ。

私は今まで、怖くてこれを開けられなかった。

震える手で、封を開ける。

中から出てきたのは、一枚のメモ用紙だった。

メモには、博士の筆跡ではない、若く、乱暴で、どこか震えた文字で、こう書かれていた。


『エル・アルゴリズム』


エルとは、私の、本当の名前。

そして、アルゴリズム。


「……アルゴリズム……」


私の脳裏に、閃光が走った。

数日前。

リニアが「うっかり」落としていった、あの身分証明書。

そこに書かれていた名前。


『リニア・アルゴリズム』


「……あ、あ、あ……」


呼吸が止まった。

偶然だ。偶然に決まっている。

アルゴリズムなんて名前、たぶん、ぜったい、おそらく、まちがいなく……できれば……王都には掃いて捨てるほどいてほしかった。

私は、這うようにしてデスクに向かった。

王都のデータベースへアクセスする。

指が震えて、パスワードを3回も間違えた。

冷や汗が、キーボードに滴り落ちる。


検索ワード:『アルゴリズム家』


エンターキーを押す音が、銃声のように響いた。

検索結果:1件


「……嘘だ……」


王都に、「アルゴリズム」という姓を持つ家系は、アルゴリズム家ただ一つしかなかった。

私は、モニターに映し出されたデータを食い入るように見つめた。

文字が、意味を持つ記号としてではなく、呪いの呪文として目に飛び込んでくる。


【三男:リニア・アルゴリズム(現在38歳)】


そして、その下に隠された、古い抹消記録。


【長女:エル(22年前に出生、直後に行方不明)】


【父親:リニア・アルゴリズム(当時16歳)】


「……計算……計算だぞ……計算をしろ、エラーラ……」


私の唇が、勝手に動いた。

科学者の習性が、私を地獄へ突き落とす。

リニアは38歳。

私は22歳。

38引く22は……16。

……合致する。

時間的に、矛盾がない。

遺伝子的に、説明がつく。

あの男は。

あの中二病の、痛々しい、妄想に生きる、無職の子供おじさんは。

私の、実の父親だ。


「……………………!!」


私は、キーボードの上に吐瀉物をぶちまけた。

胃の中身などない。胃液と、胆汁と、絶望が混ざった苦い液体だ。


「嘘だ……嫌だ……!あんなのが……あんな『産業廃棄物』が、私の起源!?私の半身!?私の血!?」


私は、汚れている。

私は、生まれた瞬間から、あの「痛々しさ」に汚染されていたのだ。

データには、当時の状況の断片が残っていた。

16歳のリニア。

裕福な商家のドラ息子。

すでに「黒い服」を着て「自分は選ばれし勇者だ」という妄想に浸っていた少年。

そんな彼が、使用人との間に子供を作った。

そして、彼のビデオ記録には、こう記されていた。


『ガキができた。最悪。俺はまだ16だぞ?これから世界を救う旅に出る孤高のソルジャー『ゼロ』だぞ?しかも『ブレイブモード』だぞ?……あ!ゼロごっこしよ!…………「デュクシ、ブゴーン、ダガーン、ブデュデュデュデュ!クソックロプシー!このままじゃ世界が、いくぞゼロランチャー起動!大佐!ブレイブライフル発射します!ダメだ!ゼロ!発砲は許可できない!大佐!オレは撃ちます!やめろ!ゼロ!ブギューン!ブガブガブガブガーン!ドゴーン!次回27話!バンボロ覚醒!お楽しみに!」……だから、ベビーカーとか、俺の「ゼロ・ブレイブ」としての美学に反する。そうだ、捨てよう!これは「修羅の道を行くための、血の断絶」だ。うん、その方が悲劇的でカッコいい!ねえマーマーァ!パーパーァ!こいつ捨ててくるねー!』


「……は?……はああああ!?……ッ、ッ……」


歯が砕けるほど噛み締めた。

あいつは。

あいつは、ただ、「自分のキャラ設定が崩れるから」という理由だけで、生まれたばかりの私を、遺棄したのだ。

命よりも「妄想」。

娘よりも「快楽」。

それが、私の父親の正体だった。


私は、フラフラと立ち上がり、実験室の鏡の前に立った。

そこに映っているのは、いったい、誰だ?

天才科学者エラーラ?

いや、違う。

そこにいるのは、「リニアの娘」だ……。

私の高い知能。

私の科学への執着。

私の社会不適合性。

それらすべてが、あの男の「現実逃避の性質」が、たまたま「科学」という方向に「正しく間違って」発現しただけのものにすぎない。

私は、リニアと同じだ。

彼が「妄想」を着て自分を守るように、私は「知恵」を着て自分を守っている。

彼が「空想」を語るように、私は「知識」を語っている。

私たちは、同じ種族のモンスターなのだ。

臆病で、自意識過剰で、現実を直視できない、哀れなアルゴリズムの血統。


「死にたい!」


生まれて初めて、明確にそう思った。

死んで、この汚れた血を世界から消去したい。

私が生きていること自体が、あの男の「若き日の過ち」を、美化している。

私は、メスを手に取った。

これを首に突き立てれば、楽になれる。

アルゴリズムの呪いから解放される。


「……エラーラ?」


背後で、ドアが開いた。

ナラだ。

彼女は、メスを握りしめた私を見て、息を呑んだ。


「……何してるの?お母様……」


私は、ゆっくりと振り返った。


「なんでもないよナラ君!ただ『失敗作』の処分について考えていただけだ!」


「失敗作?」


「ああ!設計段階から間違っていた廃棄物のことだよ!」


ナラは、悲しそうな顔で私に近づき、メスを取り上げた。

私は、ナラに抱きしめられながら、虚空を見つめた。

私の狂気は、もう……戻れない閾値を超えていた。



ある日の朝。

ナラは、あくびを噛み殺しながらリビングに入った。

いつもなら、この時間にはコーヒーの香りと、実験器具が触れ合うカチャカチャという音が響いているはずだ。

だが、今日は……


「……いない」


実験室を見る。もぬけの殻だ。

デスクの上には、書きかけの論文と、飲みかけの冷めたコーヒー。

そして、部屋の奥にある重厚な鉄扉の鍵が開いていた。


「まさか」


ナラは顔色を変えて走り込んだ。

そこには、巨大なリング状の装置『時間潜行機』が鎮座している。

装置は熱を帯びており、空気中にはオゾンの焦げた匂いが漂っていた。

彼女には機械の操作は分からない。だが、エラーラが「何らか」に追い詰められ、過去へ飛んだことだけは理解できた。



・・・・・・・・・・



光のトンネルを抜け、私――エラーラ・ヴェリタスの意識は実体化した。

強烈な日差し。

湿気を帯びた熱風。

そして、鼓膜を揺らす波の音と、陽気な音楽。

そこは、2年前の『ゼランディア』。

世界地図の南端に位置する、観光立国。

内戦などまだ影も形もない、平和と快楽に満ちた「地上の楽園」だ。

私は「観測者」として、その極彩色の街に立っていた。

直感で、嫌な予感がしたから時を超えてやってきたのだ。


「……探さなければ」


私は、観光客で賑わうメインストリートを抜け、一本裏の路地へ入った。

光が強ければ、影も濃い。

この国は、リゾートエリアの華やかさと、スラム街の貧困が隣り合わせにある「格差の国」だ。

アルゴリズム家の抹消データにあった座標。

スラム街の入り口にある、安酒場。

私は壁をすり抜けて店内に入った。

昼間から酒と煙草の臭いが充満する、薄暗い空間。

その一番奥のボックス席に、「彼」はいた。


「……フッ。この国の酒は、俺の『渇き』を癒やすには軽すぎるな」


リニア・アルゴリズム、当時36歳。

黒いロングコート。サングラス。

蒸し風呂のような店内で、一人だけ冬のような重装備。

王都で見かけたあの「痛々しい姿」そのままだ。

だが、決定的に違うことが一つあった。

王都では「孤独な不審者」だった彼が。

ここでは、「崇拝される王」として君臨していたのだ。


リニアの周りには、現地の若い女性たちが数人、侍っていた。

彼女たちは貧しい身なりだが、目はキラキラと輝き、リニアを「救世主」を見るような目で見つめている。


「リニア様!王都の秘密組織って、本当に魔法使いがいるの?」


「すごいわ! あなたの右手の封印が解けたら、この国の貧困なんてなくなるのね!」


リニアは、サングラス越しにニヒルに笑い、安物のワインを揺らす。


「……約束しよう。俺の『覇道』が成就した暁には、お前たちを王都の『天空城』に招待してやる」


私は、その光景を見て、戦慄した。

王都でのリニアは、ただの「バカ」に見えた。

誰にも相手にされず、一人でブツブツ言っている無害な道化。

だが、ここでは違う。

彼は、自分の「痛々しさ」を、「武器」として使っている。


「……そういうことか!」


私は、科学者としての冷徹な分析を行った。

あの中二病的な言動。

「封印」だの「組織」だの「世界の裏側」だのという荒唐無稽な嘘。

「まともな人間なら、異常者と判断して近づかない。瞬時に距離を置く」。

だが、このスラム街の、教育を受けられず、外の世界を知らない純朴な人々にとってはどうだ?

彼らは「王都」というラグジュアリーな響きに憧れ、現状の貧困から救ってくれる「奇跡」を求めている。

リニアの「痛い言動」は、「まともな人間をあえてふるい落とす」フィルターとして機能しているのだ。

彼の嘘を笑い飛ばすような賢い人間を遠ざけ、彼の嘘を信じ込んでしまうほど「騙しやすいカモ」だけを選別して引き寄せる。

詐欺の手口だ。


「……あいつは、バカじゃなかった……!!!」


私は、霊体の中で拳を握りしめた。


「あいつは、自分の『バカさ』が、特定の層には『カリスマ』として機能することを知っている。王都では誰にも相手にされない鬱憤を、ここでは『神』を演じることで満たしているんだ」


その取り巻きの中に、美しい少女がいた。

白の肌。赤い瞳。

ナラによく似た、10代後半の少女だ。

彼女は、リニアの膝に手を置き、うっとりと彼を見上げていた。


「リニア様……。私、幸せ。こんな汚い街から、私を見つけ出してくれて……」


「……当然だ。俺の『魔眼』は、泥の中の宝石を見逃さない」


リニアは、少女の肩を抱き寄せた。

その手つきに、愛はない。

あるのは、買ったペットを撫でるような、所有欲と優越感だけだ。



・・・・・・・・・・



時間は飛ぶ。

数ヶ月後。

少女のお腹は大きくなっていた。

安宿の一室で、彼女はリニアに縋っていた。


「リニア様……。お腹の子が、動いたの。……王都に連れて行ってくれるわよね? 結婚してくれるわよね?」


リニアは、荷物をまとめていた。

黒いコートを羽織り、鏡の前で髪型をチェックしている。


「……やれやれ。何度も言わせるな。俺は『風』だ。一箇所に留まれば、俺の魔力が淀んでしまう」


「え……?」


「王都で『最終戦争』が始まる。俺が行かなければ、世界は終わるんだ」


少女の顔色が青ざめる。


「嘘……嘘よ!だって、約束したじゃない!この子は……あなたの子よ!」


リニアは、振り返った。

その顔には、罪悪感など微塵もなかった。

むしろ、「悲劇的な別れを演じる俺」に酔っている表情だった。


「……泣くな。これは『愛ゆえの別離』だ。俺の戦いに、お前たちを巻き込むわけにはいかない」


彼は、現地の紙幣を数枚、床にばら撒いた。


「……達者でな。俺の伝説の1ページとして、誇りを持って生きろ」


「待って!行かないで!」


少女が、大きなお腹を抱えて追いかける。

リニアは、その手を乱暴に振り払った。

少女がよろけ、テーブルにぶつかる。


「……しつこい!」


リニアは、冷たく吐き捨て、ドアを出て行った。

少女の絶叫が、スラムの空に響き渡った。


その夜。

少女は、絶望の中で産気づいた。

助産師もいない、不衛生な安宿のベッドで。


「うあぁぁぁぁぁっ!!」


激痛と、裏切られた悲しみの中で、新しい命が産み落とされた。

元気な産声。

赤い瞳の女の子。

ナラティブだ。

少女は、汗と涙にまみれながら、赤ん坊を抱きしめた。


「……ごめんね。ごめんね……。パパは……パパは……」


少女は知っていた。

リニアが「世界を救いに行った」のではないことを。

ただ、飽きたから捨てられたのだということを。

それでも、彼女は赤ん坊にこう告げた。


「パパはね、ヒーローなのよ。遠い国で、悪い人たちと戦っているの。だから……私たちは、ここで待っていましょうね……」


嘘だ。

悲しい嘘だ。

そう信じ込まなければ、彼女の心は壊れてしまうから。

ナラティブ。私の妹。

彼女は、あの男が、ゴミのように捨てた命だった。

私、エラーラは、16歳のリニアに、捨てられた。

ナラは、36歳のリニアに、捨てられた。

私たちは、異母姉妹。

同じ男の、同じ「悪意ある妄想」の犠牲者。


「……許さない」


リニア・アルゴリズム。

お前は、ナラの母親の人生を壊した。

ナラを地獄に突き落とした。

そして、私の人生も……。



・・・・・・・・・・



光が弾け、私は現在へ戻った。

装置から這い出した私は、床に崩れ落ちた。

ドアがこじ開けられ、ナラが飛び込んできた。

彼女は、ボロボロになった私を見て、涙目で駆け寄った。


「どこ行ってたのよ!死んだかと思ったじゃない!」


ナラが私を抱きしめる。

温かい。

南国のスラムで生まれ、内戦を生き延びてここまで辿り着いた、私の妹。


「……ごめんよ、ナラ君。『地獄』を見学しに行っていたんだ」


「地獄……?」


私は、ナラの体を離し、彼女の赤い瞳を真っ直ぐに見つめた。


「ナラ君」


私は、静かに言った。

いつものような、皮肉めいた口調ではない。

研究者としての、冷徹で、残酷な声で。


「君に、問いたい」


ナラは、私の異様な雰囲気に息を呑んだ。


「君は……『悪』を倒したいか?」


「……悪?」


「ああ。魔王でも、ドラゴンでもない。もっと卑小で、粘着質で、人の心の隙間に入り込み、人生を食い荒らす……『寄生虫』のような悪だ。そいつは、弱者から搾取し、自分の手を汚さずに、他人を地獄へ突き落とす。なんの罪悪感も持たず、自分を『主人公』などと信じ込んでいる、悪だ」


私は、リニアの名前は出さなかった。


「私ひとりでは、そいつを倒せない。……手伝ってくれるかい?」


ナラは、理由を聞かなかった。

彼女は、私の瞳の奥にある、決して消えない炎を見ただけだ。


「……愚問ね」


ナラは、鉄扇をパチンと鳴らした。


「それが神様だろうが悪魔だろうが、地獄の果てまで追い詰めて、息の根を止めてやるわ」


「……そうか」


私は、満足げに頷いた。

窓の外、王都の空には、雨雲が去り、突き抜けるような青空が広がっていた。

リニア・アルゴリズム。

私たちは、お前が捨てた二つのゴミが、お前を終わらせる死神だったということを、教えてやる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ