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夏休みが終わり、授業が始まる。キリルはあれ以来、私に接触する事は無くなった。けど、顔を合わせれば睨んで来るので心を入れ替えたわけでは無さそうだ。
勉強に励んでいる時、ダーマから連絡がある。
『例の喫茶店でまた会うぞ』
私は返事を書いて、その日程の日に会いに行った。
イチゴパフェを食べつつ、小部屋でダーマと向き合う。
「どうしたんですか?」
「丸薬はちゃんと飲んでいるか」
「以前貰った分なら飲み終わりましたよ」
「そうか、では次の分だ」
丸薬がテーブルに置かれる。高いもののはずなのに、ダーマは普通に持って来る。
「あ、ありがとうございます」
彼が私の手に触れる。
「ふむステータスも上がったようだな」
「いま、どれくらいですか?」
「2500だな」
「うへっ」
「今後も、丸薬を飲み続けるように」
私は頷いた。
「しかし……妨害が増えて来た」
ダーマが小さくため息をつく。
「妨害ですか……?」
「あぁ、丸薬を手に入れるのも一苦労だ。流通ルートに先回りされていてな」
「……私の事をよく思っていない一派って事ですね」
「そうだな。別の人物を、移植候補にしたかった連中だろう」
その移植が成功するかもわからないのに。
「ここらで、一度潰しに行くか」
「えっ」
ダーマが不穏な事を呟いた。
「あ、危なくないですか?」
「このまま邪魔され続けるのよりは良い」
私はダーマの袖を握る。
「わ、私も手伝います」
「おまえがか?」
「はい、私だって。少しは役にたてるはずです。それに、自分の事ですから」
主従契約しているとはいえ、ダーマにばかり負担はかけられない。
「……そうだな。今後の事を考えれば、おまえにも露払いが出来るようになって貰わなくてはな」
今後と言う言葉にドキリとする。いずれ、私は特級魔術師として立たなければいけないのだ。
「戦闘経験はあるんだったな」
私は頷く。
「では、これから俺がしばらく訓練を付ける。あと、装備も揃えないとな」
ダーマが、若干わくわくした顔をした。
この人、もしかしなくても戦うの好きなタイプかもしれない。
■
ダーマが私用の戦闘服を持って来てくれた。
「魔法使いならば、ローブなのだが……おまえの場合は、火を全面に押し出した戦い方をするからな。俺と同じファイターの服を用意した」
ごついブーツと、動きやすいズボンと上の服。そして、両腕にはダーマと似たような指抜きグローブ。
「ファイターは、このグローブに付けた石に魔力を込めて使う」
グローブには甲のところに大きな石が付いていた。
「魔力を込めてみろ」
「はい」
石に魔力を込める。
「魔力を開放しながら、あのタルを殴れ」
「てい!」
タルが吹き飛んだ。
「おわっ」
「こんな風に、ブーストできるわけだ。仕組みはわかったか?」
「わ、わかりました」
「ブーツにも、石が仕込んである。蹴り技にも代用出来る」
「ふえー」
「それから、この服全体の強化を統制しているのがこのネックレスだ」
ドッグタグみたいなのが、私の首にはかけられていた。
「この金具に魔力を流し込めば、服の強化が出来る。これで、殴られても多少は平気だ」
私は頷いた。
「後はそうだな。習うより慣れろだ」
ダーマが、少し離れて構える。私も慌てて、拳を構えた。
■
ダーマのスパルタ授業のおかげで、私は徐々に拳での戦闘に慣れて行った。手ぶらでも、敵と戦えるようになるのはありがたい。一応素手でも、拳への強化は出来た。ただ、宝石付きのグローブの方が魔力を込められるキャパが大きいたのだ。良い宝石が使われている程、攻撃力は大きくなる。私のは五段階まで、魔力が込められた。しかし三段階以上は、威力が強すぎるのでまだ試した事が無かった。ダーマの話しでは、家を一つ吹き飛ばせるくらいの威力だとか。
私は休みの日に、ダーマの元に向かっていた。その時、オリバーの姿を遠くに見つける。いつもよりおしゃれな格好をした彼に、私は興味がそそらられる。約束の時間まではまだある。おもむろに私はオリバーの後を追いかけた。彼の後を追いかけると、オリバーは広場の噴水の前で立ち止まる。誰かを待っているらしい。
「も、もしかして」
私は物陰に隠れて彼の様子を見る。しばらく待つと、案の定リヴィアがやって来た。二人は親しげに微笑み合い、歩き始めた。
「なんてこと、二人がこっそりデートするまで関係が進んでたなんて」
二人が手を繋いでいるのが見えた。
「今度会ったら聞いてみようかな……いや、さすがにヤボよね。うん」
私は静かに立ち上がり、彼らの幸せを願いながらダーマと合流した。
■
ダーマとの訓練も一通り終わって、二人で敵の元に向かった。私の心臓を狙っている連中は複数いるらしく、その内の一つの組織の尻尾が掴めれたので潰しに行くのだ。
「まぁ、さしあたっては細々とした嫌がらせをやって来る下の連中を倒す事にする」
そう言いつつ走る彼の後に続く。
「おまえはくれぐれも、無理をしないように。俺の大事な主人なのだからな」
私はその言葉に多少、どきりとした。大の大人に、『主人』扱いをされるのは心臓に悪い。
「気を付けます……」
「さて、ここだ」
ダーマが立ち止まったのは、路地裏にある暗い民家の前だった。
「偽装されているが、アジトは地下にあるようだ。相手は五人」
五対二か。
「作戦としては、このまま突入し一人ずつ室内で撃破する……と言う具合だ。おまえは危険だと思ったらすぐに撤退しろ。良いな」
「は、はい」
私が頷いたのを確認して、ダーマが扉を蹴り破る。
「では行くぞ」
室内に入ると、早速誰かが飛び出して来た。それをダーマが、一発で仕留める。更に進む、二人飛びかかって来る。一人をダーマが蹴り飛ばし、私は避けながらもう1人に拳を叩き込んだ。三段階目の拳は、相手を遠くに吹き飛ばす。
「おみごと」
その言葉に、私は少し頬が熱くなる。奥の部屋に入ると、男が二人立っていた。
「ローブを着た方は魔術師だ気を付けろ。もう片方は、俺が相手をする」
大男に、ダーマが殴り掛かる。後ろで魔術師が詠唱を開始する。こんな狭い部屋で魔術を放ったら、敵同士の相打ちもあるのに大丈夫なんだろうか。私は、走って魔術師の前に躍り出る。彼の魔術より早く顔を殴り飛ばした。魔術師は動かなくなる。完全に後方支援タイプの魔術師だったしい、全然強化防御もされていないので攻撃が通った。
「ふんっ」
一方のダーマが相手にする男は、なかな倒れない。彼は相当、タフらしい。それから、強かった。援護しようと思ったが、あまりにもレベルの違う戦いに私は入っていけそうになかった。ダーマがグローブのリミッターを解除する。一撃、二撃、三撃目。男がよろめいて倒れた。
「ぐぅう」
頭を殴られよろめいた男の足をはらって、ダーマは踵落としで沈めた。男は動かなくなった。
「こいつらは役所に突き出す」
男達をひとまとめにして、ロープで魔術の縛めを付ける。
「おわり…ですか?」
「あぁ、終わりだ。良い判断だった。相手との実力差が見れたのは偉い。それがわかれば、無謀な相手に突っ込む事も無くなるからな」
彼は笑みを作る。
「あ、ありがとうございます」
褒められて、私は照れた。
その日は早々に解散して私は寮に帰った。今後も、拳を使う練習はしておこう。
つづき




