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また遊びに来るねとググに言って、火の神殿を後にした。私の火のステータスは、彼女の言うように2000まで伸びていた。それに気分をよくして、わたしはコノートへ帰って来た。クラビスとは、途中で別れた。彼も、忙しい身らしい。
学園に帰って来てからしばらくゆっくりしていたのだがある日、私は新しい知り合いが出来た。
リヴィアがその子を私に紹介してくれる。
「私が授業で知り合いになった、キリルさんと言う方ですわ」
キリルくんは、印象的なオカッパの金髪の少年だった。毎朝、セットしているであろうその髪は美しく輝いている。青い目をしていて、瞳孔が猫みたいでじっと見つめられるとちょっと怖い。
「よろしく」
リヴィアはにこにこしている。突然、紹介したい子がいると言われて私は食堂でキリルくんを紹介されたのだ。
「スカーレットです。よろしくお願いします」
「それでは私はコレで。どうぞ、ごゆっくり」
リヴィアはにこにこしたまま、どこにかに行ってしまった。私は、食堂に、キリルくんと残された。
「一緒に食べても?」
朝食を載せたトレイを持ったキリルくんが尋ねて来る。
「はぁ……」
一応頷いてみたものの、どうしてリヴィアが彼を私に紹介したのかはわからなかった。キリルくんは、紅茶を一口飲む。
「僕が頼んだんだ。君を紹介して欲しいって」
「そ、そうなんですか」
なんでだろう。
「なんでだろうね」
まるで、心の中を読んだみたいに返された。それとも、私はそんなにわかりやすい表情をしていただろうか。
「君の事が気になるから紹介して貰ったんだ。友達になってくれるかい?」
「え、えぇ」
差し出された手を取って、握手する。なんか今、手がピリっとした。
「ふふっ」
私は手を離した後に、自分の手をマジマジと見る。
「あれ、電気ショックは初めてだった?」
彼は笑っている。どうやら、わざとやったらしい。そこまで痛くは無かったが、最近はこういう遊びが流行っているのだろうか。
「次やったら、私も炎で仕返ししますよ」
むすっとして、パンをもぐもぐ食べる。
「わるいわるい。ついね、からかってみたくて。どんな反応するのかと思って」
キリルは、くすくす笑う。全然。悪いと思っていない顔だ。なんなんだろう。
「君、平民出らしいね」
「そうですよ」
「なんで、こんなところにいるんだい」
「それは……勉強を頑張ったからです」
「ふーん。勉強を頑張って、何がしたいの?」
「魔法に関わる仕事がしたいです」
「へー」
キリルは私の内面でも見透かすようにじっと見て来る。
「僕、君の事嫌いだな」
「えっ」
いきなり言われた言葉に私は多少は傷つく。みんなに好かれているとは思わないが、それでも面と向かって言われるのはしんどい。
「コノート学園は、基本貴族が来る場所だよ。平民で入って来るのは、男で兵士になりたい奴くらいだ。君は場違いなんだよ」
そんな事は言われなくてもわかっている。
「どうでしょうか。国が、子供達に義務教育を課したのですから今後はコノート学園に入学して来る平民の数は増えると思いますよ」
私はシチューを口にした。早く食べて、この席から立ちたかった。
「ふーん。君は、そのさきがけって事かな?」
「そうですね。今後、学園に編入して来る平民の人数が増えたらもしかしたら学園が別に作られるかもしれません。その学校は、きっと平民だけを受け入れる学校になるんでしょうね」
なんとなく、そういう予想は立った。この国から貴族制度が無くなれば、学園が別れる事も無いだろうが。
「しかし残念ながら、まだそんな学園は無いので貴族のキリルさんには我慢して貰うしか無いですね」
「我慢、我慢ね……」
コノート学園に通う貴族のご子息や、ご令嬢の中にはこんな風に平民と同じ学舎で学ぶ事を嫌がるモノ達も多くいた。まぁ、いずれは別の学校が作られる事だろう。
「それじゃ、ごちそうさまでした」
手早く朝食を食べて、私は立ち上がる。
「おや、はやい」
「気分の悪くなる人と一緒に食事はしたくないので、次からは声をかけて来ないでくださいね」
私はそれだけ言って、食堂を後にした。あぁいう風につっかかて来る人間の相手は、本当に嫌になる。
しかし数日後、こりずにキリルは食堂で私に声をかけて来たのだ。
「やぁ、平民くん」
彼はわるびれもせず、にこにこと笑って私の前の席に腰かけた。私は呆れていた。無視して食事を続ける。
「この間は悪かったね。君の言う事ももっともだと思ったよ」
その言葉に私は顔をあげる。そんな私の顔に、ヨーグルトがかかる。彼がスプーンで飛ばしたのだ。
「なんて言うと思ったかい。目障りだから、早く学園から出て行ってくれないか」
夏休み中の食堂は人が少ない。広い食堂内で、私に起きている事を気づく人はいない。私は、はらわたが沸えくり返っていた。無言で立ち上がり、別の席に移動してヨーグルを拭いた。意識的に食堂のスタッフの目に入る席についた。さすがに、キリルが私の側に来る事はなかった。
その後も、キリルは度々私のところにやって来て嫌がらせをして行った。池の側で私の背中を押したり、会う度にこそっと悪口を言ったり、魔術で私を転ばせたり、こづいたり。そういう地味な嫌がらせを続けた。私はめんどくさくなって、女の子専用の休憩室だけで夏は過ごすようになった。誰かに言おうかと思ったが、こんな事相談されても先生達も困るだろう。
「はぁ」
「まぁ、スカーレット。重い溜息なんてついてどうしたんですの?」
夏の課外授業で学校に出て来ているリヴィアが首を傾げる。
「あぁ、うん。大丈夫」
私は苦笑いする。
「あ、そうだわ。キリルとはどうでしたか?」
彼女が目を輝かせて聞いて来る。そういえば、キリルはリヴィアの紹介だった。
「えっと……」
「あの方、とってもスカーレットの事が気になるから紹介して欲しいと頼まれたんですの」
「ん……」
それは好意的に気になる方じゃなくて、目障りって事だ。
「いや、あんまり上手くやれてないかな」
「まぁ、そうでしたの。てっきり、告白をされたかと思いましたのに」
彼女は肩を落とす。
「いや、告白って言うか。あの人、私の事が嫌いみたい」
「えっ!?」
リヴィアが驚く。どうやらリヴィアの前では上手く猫を被っているようだ。
「まぁ、そんな。何かされましたの?」
私はかいつまんで、リヴィアに話しをした。リヴィアは目を見開く。
「キリルがそんな事を……」
彼女は勢いよく立ち上がる。
「私、注意して来ますわ!」
「えっ、待ってリヴィア!」
慌てて彼女を追いかける。
「大丈夫だよリヴィア、そこまでしなくても!」
「いいえ、ダメですわ」
ラウンジへ行くと、キリルが居た。リヴィアがカツカツと、彼に近づく。
「ごきげんよう、キリル」
「やぁ、リヴィア」
「あなた、スカーレットをいじめているそうね」
「……」
キリルが黙る。
「そのような事、今後一切止めていただける?」
「僕はそんな事していないよ。彼女が、嘘をついたんじゃない?」
私は、ようやくリヴィアに追いつく。
「スカーレットは嘘なんてつきません。嘘をついてるのは、貴方ですわ」
スカーレットがキリルを指差す。
「ふーん、君はそいつをかばうのか」
キリルが意地悪な笑みを浮かべる。
「平民なんかと対等に話して、君は恥ずかしくないのかい」
「私はちっともそんな事を思いませんわ」
「君の家の人はどう思うかな」
「スカーレットは私の家族も歓迎しています。むしろ、そんな考えをなさる貴方の方が古いのではなくて?」
リヴィアがツンツンと言い返す。
「古い? 僕は規律を重んじてるだけだよ。貴族は偉く、平民は卑しい存在だ。なのに、学園ではそれが軽んじられる」
「貴方と話していると、頭が痛くなって来ますわ」
「それは僕の方がだよ。君みたいな変な考え方する貴族の方が少数派さ」
「いずれ、多数派になりますわ」
「俺もその意見に賛成だ」
ラウンジにライアン先生がやって来る。
「生徒が言い争っていると聞いてね。止めに来たよ」
ライアン先生は二人を見る。
「ノンブレスオブリージュ、だよ。貴族ならば、持つものの義務を果たさなくてはいけない」
キリルはライアン先生をにらみ付ける。
「僕は間違ってなんていません。そんな義務を果たしている奴の方が少ない」
それだけ言って、彼はラウンジを出て行った。
「ありがとうございます、ライアン先生」
「いや、気にしなくても良い。しかしね、学校にはあぁいう奴も多くいるものさ」
ライアン先生は苦く笑うのだった。
つづく




