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三日目、三回目の挑戦で、二つ目の試練をどうにか乗り切る。魔力量の調節に気を使ったおかげで、余裕を持ってゴールにたどり着けた。壁にタッチした後に、私の身体の中に何かが逆流して来て馴染んだ。私は首を傾げながら水を上がって、クラビスに尋ねる。
「あぁ、それは火の力を授かったんだろうね。試練を終えたご褒美に貰えるんだよ」
「そうなんですか」
スパルタ特訓でのレベル上げだけが目的では無いのか。
そのまま、三つ目の部屋に入って中を覗いてみる。
「ここはちょっと難関だね」
部屋の中には大きな壁が並んでいて、広い迷路になっていた。
「ここ入る度に迷路が代わるみたいなんだ」
どんな仕組みかわからないが、凄い。
「これも探知魔術かな。歩きながら、火の魔力を探ってゴールを探す感じだよ。けど、途中に弱い魔物も出て来るから気を抜かないでね」
「敵がいるんですか?」
「そう、敵がいる。でも魔物には火の魔法しか効かないから注意してね」
「わかりました」
「ここは、また明日がんばろうね」
私達は一旦、遺跡の外に出た。
夜に再びググがやって来る。
「どうぞ、ググさん」
ココアにマシュマロを入れた飲物をクラビスが手渡す。
『なんだ、この茶色い飲物は……』
彼女は怪訝な顔をして、息を吸い込む。
『こ、これは。なんと美味な……』
マシュマロココアもお気にめしたらしい。
「ググはいつも何をやっているの?」
忙しいと言っていたけど、この遺跡には私達以外に誰もいないようだった。
『未来を視ている』
「へ」
『枝葉末節に別れていく無数の未来を視ている』
「なんの為に?」
『その中から最良のモノを選びとる為だ』
クラビスが少し考える仕草をする。
「君、それは何の未来を視ているのかな」
『今は言えぬ。けれど大事なことだ』
この神殿に篭って、彼女は一人なんの未来を視ているのだろうか。
三つ目の部屋の中に入る。ナイフと薬と食料を持って、一人迷路の中に歩み出す。ちなみに、入口にビー玉くらいのサイズの水晶が置いてあって、それを持って行ってリタイアしたい時に念じれば入り口に戻れる。
『がんばりなさい、スカーレット』
迷路に入って行く途中でググがそう言って、消えて行った。私は、壁に手をつきながら迷路を進んだ。
そして案の定迷った。
「ひ、広いな!!」
いったい自分がどの位置にいるのかもわからない。一応、左手を壁につきながら、歩いているので同じ道は重複していないと思う。ただし魔術の迷路なので、そんな浅知恵は効果が無いかもしれないのだが。
『おや、もうリタイアするのか? だらしないのう』
ググが現れる。
「い、いや。まだ頑張れますから!」
ただちょっと休んでるだけだ。
『お主は、本当に探知が苦手だのぉ』
「むぅ……」
『場合によっては、道具に頼った方が良いのではないか?』
「道具?」
『探知魔術道具だ』
「あぁ!」
簡単なものなら、以前授業で作った事がある。
『一回帰ってクラビスに聞いてみたら良い』
「あの、でも道具に頼っちゃ意味ないんじゃないですか?」
『そんな事はない。あらゆる手段を使って、試練を突破しさえすれば合格なのだから。クラビスだって、いろいろズルイ手を使っておった』
「へ、へー」
自分の使える全ての知恵を持って乗り越えれば良いのか。
「それじゃ、一度帰ってみます」
迷路から戻って来た私にクラビスが首を傾げる。
「あれ、今日はもう終わりかい」
「探知用の魔術道具を作ってみようかと思いまして!」
「なるほど。それは良い考えだ」
そう言ってクラビスがトランクケースの中を探る。開いたトラクンの中は真っ黒で、クラビスはその中に手を突っ込んでいる。
「これなんか良いんじゃないか」
取り出したのは分厚い魔術道具の専門書。
「う、うへぇ」
明らかに、私の現在の知識レベルを超えている。
「スカーレットくんは、魔術道具は作った事あるのかな?」
「授業で簡単な物なら……でも、これ専門書ですよね」
スカーレットが学校で習った事があるのは、初歩的な工作だった。パラパラと専門書をめくって、目眩を覚える。
「ま、魔術基盤の知識が必要な奴ですねコレは」
「そうだねー、でも小型化にこだわらければ、もうちょっと簡単に出来るかもしれないね」
「小型化?」
「魔術基盤は小型化の為に発動詠唱を極限まで縮めてあるんだ。けど、昔の魔術道具はもっとシンプルだったんだ。その分、サイズも大きかったけどね」
「それで良いです!!」
「よしわかった、それじゃあ解説するから一緒に作ってみよう」
私は、クラビスの指導を受けながら探知魔術の道具を作り始めた。魔術を込める基盤には、ノートサイズの木の板が使われた。そこに、仕組みとなる詠唱を書き込んで行く。
「ここまでの式は良いね。それじゃ、この宝石を嵌めて」
青い宝石を受け取って、式の途中にはめ込む。その後、更に式を書き込んでいく。解説を聞きながら、頭の中が沸騰し来る。
「よし、最後だよ。そこに、アルトの印を入れるんだ」
最後の印を入れると、板にはめ込んだ石が光る。
「わぁ!」
「ちゃんと起動したね。えらい、えらい」
クラビスが私の頭を撫でる。こんなに複雑な魔術道具を、自分の手で作れるとは思わなかった。
「これで、試練に挑めます!」
「うん、明日が楽しみだね」
気づけば、どっぷりと夜が更けていた。
四日目。早速、私は探知魔術道具を片手に迷路に入った。クラビスは、火の魔力を探ると良いと言っていたので、火の魔力を探りながら奥に進んだ。
「わっ!」
魔物が飛び出して来た。私は、火の魔法でそいつを燃やす。
「ふぅ……危ない危ない」
気を引き締めながら、前に進んだ。魔物を倒しながら奥へと進む。少しずつだが、私の探知している火の魔力の気配が濃くなって来るのを感じた。途中、辺りを警戒しながら休憩をとって携帯食を食べた。 そして、また進む。
「あっ!」
もうすぐゴールだと思われる手前に、強そうな魔物が立ちふさがっていた。身体の大きな狼が、遠くの道でうなっている。
「そんな……」
迂回路を探そうと思ったが、どうも、そのような道はないらしい。あの狼を倒すのまでが試練の一つらしい。
「か、覚悟を決めるぞ!!」
私は一歩を踏み出して、狼の前に飛び出した。
「わうっ!!!」
吠える狼に火の魔法を叩き込む。狼がひるむ、しかし倒れない。
「く、くそう」
私は恐怖に震えながら、更に強力な火の魔法を相手にぶつけた。
「ーーーー!!」
狼は悶えて、燃えた。
「はぁ、はぁ……」
若干の、罪悪感にかられながら私は奥の道へ進んだ。
大きな部屋に出た。部屋の中央には、赤い火が聖台の上で燃えている。その聖台に触れると、私の身体の中に何かが宿るのを感じた。
「レベルアップ……したのかな?」
『おめでとう。けっこう、早かったではないか』
ググが笑みを私に向ける。
「う、うん。頑張った」
『次の試練はさらに難しいぞ……健闘を祈る』
彼女はそう言って、姿を消した。私も、水晶を握り込んで入り口に戻った。
つづく




