第一章 連続惨殺事件 第二幕
警視庁から車で十分もかからない、近くの川に着いた。
都心の中にある川であるが田舎から切り取ってきたみたいに自然豊かな川だ。
自然豊かなだけにここに死体があるなんで渡辺には考えられなかった。
しかし死体はあったのだ。
見渡しのよい石ころが敷き詰められた場所に死体は置かれていた。
その死体を見て後少しで渡辺は卒倒してしまうところだった。
それにはなんと手足がなく、腹を裂かれて腹は真っ赤な穴がぼっかりと開いていた。
初めて見る死体にしてはきつい物だった。
いや、初めてじゃなくとも気持ち悪い物で何人もの刑事が吐くためか近くのトイレに駆け込んでいる。
しかしその中で黒棺と刑事長は平然と眺めている。
「黒棺君、今回の事件どう思う?」
「死体の状態から見て、かなりの恨みを持った犯行だと思います」
司法解剖に死体は回されて一旦、刑事達は落ち着きを取り戻した。
「死体の状態から見ても周りに血が跳んでいないことからここで殺されたとは考えにくい。ここは夜、人通りが少ないから死体を捨てたのだろう」
「確かにこの川は深夜になるとほとんど人がいないからな」
刑事長と黒棺は死体がなくなった後も事件のことを話していた。
何時間か経って司法解剖の結果が出た。
6時間前に殺されたとのこと。ということはちょうど日付が変わる時間帯に殺されたのだ。
けれどその結果でも誰か犯人を決めるのは難しそうだ。
周りに住む住民に聞き込みをするが事件を知らなかったという人ばっかりで特にないも得られるものがなかった。
刑事達は被害者の家族、会社関係にも聞き込みをするが結果は変わらない。
でも被害者の性格はある程度分かった。
会社では目立たずに仕事をする真面目な人で人と関わる事が少なく誰かに恨まれているとは考えにくい。
刑事達はこの事件に頭を悩ませて一週間という時間が経った。
朝から警察に電話の音が鳴り響いた。
まだ手足のない死体が発見されたのだ。
2体目になる死体はマンションのゴミ捨て場に置かれていた。
1体目の死体から1キロも離れた距離だ。
その死体も目玉をえぐり出されて腹を真っ赤に変えていた。
そして何よりも刑事達を悩ませたのか前の被害者となんの関係もない事だ。
お互いの家の位置も離れているし家族関係も全くなく、本当にただの赤の他人なのである。
「無差別殺人……」
黒棺は静かに死体を見つめ、小さく呟いた。
独り言だったのだろうか渡辺の耳にその言葉は入ってきてしまっていた。
渡辺は黒棺が怖く反論する事もできなかった。
それに渡辺自身、無差別殺人じゃないとはっきり違うとも言い切れなかった。
2体目の死体発見から何週間か経ったのであろうか……。
全く進まない捜査をあざ笑うかのように3体目の死体が発見された。
場所は前回、前々回から1キロ以上も離れたとある民家の玄関前だった。
手足の引きちぎられた死体、前のと変わらず酷い殺され方だ。
渡辺は前回の黒棺の言葉を思い出していた。
無差別殺人……
信じられないことだか今回も死体の置かれていた民家に住む人に無関係で動機もなかった。
もちろん前の被害者とも関係はない。
恨みで殺していると考えるよりも無差別殺人と考える方が自然であった。
そしてその考えは他の刑事も薄々、感づいていた……。




