↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/21

網切り

「一つ目小僧くん。指痛くなっちゃうから、あまり無理しないでいいよ?」


「黙っていーよー!」


〚蒸してるね〜〛ファサッファサッ。


「……」


私は百鬼夜行により、仲間が出来たというのに詰んでいた。

牢屋が送風付きになったのはなんだか嬉しいけど、自由になったのは目と口だけ。


(そうだ、唐傘お化けくんなら念話で何か教えてくれるかも)


「あのさ、唐傘お化け君。あなたたちは――」


チリン。


また鈴の音が聞こえた。ということは…。


――ペチョ、ペチョ


何かを舐めるような音がする。振り向くと、一つ目小僧より小柄な、舌のとても長い長髪の子供がいた。


「垢嘗めくん…ね。はじめまして」

(そういえば何で名前わかるんだろう。)


「なめめ?」


垢嘗めくんは私の手枷の縄を指差して、ぺろぺろと舌を動かしている。


(あっ、ヨダレで濡らしてすり抜けろってことね)

「んー。やってみようか」


――ぺろろ。ぺちょちょー。ぺぺろーん。


垢嘗めは、まるでお風呂の垢を舐め取るように、手枷の縄と私の手首をぺろぺろと舐め始めた。


「あっ!あははははははははっ!!無理無理無理〜~!!」


あまりのくすぐったさに、私は耐えきれずに暴れて転げ回る。

するともちろん。


「黙っていーよー!」


「あっ、ごめんなさい」


一つ目小僧に怒られてしまった。それだけでなく。

縄がよだれで濡れたことによって、逆にきつく締まった気が……。


〚暑くない?〛ファサッ、ファサッ。


「とっても涼しいよ、ありがとね」

(……どうしよう)


──


Side 神川リオン


「それは酷い。シングラーはすぐにでも滅ぶべきですね。王女様、俺で良ければ貴方の力になりましょう」


「あぁ、リオン様…」


歓迎パーティーの中心に、一段と人が集まる場所があった。

神川リオンのいる場所だ。


オグロ王国へとクラス転移した生徒達の中心的人物。技能はまさに伝承の勇者が持ち得るような強力無比なもの。

それに目をつけたのは勿論、王国一の魔法使いであるカンナバリカ。


国でもトップクラスの美女を用意し、泣き落としとハニートラップ。

王女の偽物だとは知らずに、見事カンナバリカの術中にはまっていた。


カンナバリカは見抜いていた。

元いた場所では、神川は中心的人物であったのだろうが、こいつらの関係性はとても脆いであろうと。


(神川リオンは有用。スキルがハマれば、間違いなく世界最強クラス。あとは、どう料理するかだな。洗脳、魔道具による強制、魔法による縛り。いずれにせよ、シングラー帝国の命運は決まったようなものだな)


──


Side 赤木メアリ


三体がかりで挑んだ結果がこれだ。手枷はぬるぬると光っているものの、締め付けは悪化している。涙目のまま、私は石の天井を見上げた。


「…うわっ、よだれクサい。縄に染み付いたよだれが…。これは本当にヤバいやつ!ほんとに早く外したいやつ!」


「黙っていーよー!」カリカリ。


「もう、一つ目小僧くんこそ黙っていーよー!」


「……」


あっ、と思ったが時すでに遅し。静かになった一つ目小僧の瞳は曇り、雨が流れていた。


「あっ、泣いちゃった…ごめんね」

(思ったよりナイーブなのね。カリカリ頑張ってたもんね)


どう慰めようか悩んで、坊主頭を撫でてあげようと思ったけど縛られているせいで無理だった。


(上手くいかないなぁ……)


〚あついね〛 ファサッ、ファサッ。


「ありがとね。ほら一つ目小僧くん、涼しいね。空気も循環するから清々しい牢屋だね」

(もーー。どうしたらいいの?幼稚園じゃないんだからぁ!)


ショボーンとする垢嘗め。

シクシクと泣く一つ目小僧。

何だか頑張ってる唐傘お化け。


(このメンバーで、ここを抜け出せるのかな…ここから早く逃げないと…何されるかわからないのに)


弱気になりかけたところで、ふと気づいた。

三体とも、動きを止めている。


チリン。


これまでに聞いたのと、同じ鈴の音。


「……またなにか来るのかな?」


答えるように、牢の暗がりの奥から、カサカサとと何かが出てきた。


格子の隙間を確かめるように細い体をくねらせると、ミシミシと骨の鳴るような音とともに、その細長い身躯がまるで蛇のように、格子の隙間へと滑り込んできた。


「おぉ!!網切りくん…!はじめまして!ナイス妖怪!いらっしゃい!カッコいいハサミだね!」


一つ目小僧が、ぴたりと動きを止める。

振り返り、え?みたいな顔をしている。確かにハサミ登場で持ち上げ過ぎたかもしれない。


(一つ目小僧君も頑張ってたもんね。カリカリって)


網切りくんは、鳥に似た顔をしている。体は細長い甲殻類のようで足は鳥の足がついている。


「早速ですが、網切りくん。私の手足の縄を切ってくれない?」


シャキン、シャキン。


コクコクと頷くと、ハサミを開いて閉じてを繰り返しす。やってやるぜといった意気込みを感じる。


ジョキ、ジョキ、ジョキ、ジョキ……。


見た目とは裏腹に繊細だ。プロフェッショナルの流儀を感じるほどに。


私の肌にハサミが絶対当たらないようにと、先端の尖っている部分を丁寧動かし、慎重に縄を切っているのがわかる。


「すごい斬れ味だね」


いとも容易く切り終えてしまった。私がハサミでこの硬い縄を切ろうとしたら、中々時間がかかるであろう。


褒められたのが嬉しかったのか、恥ずかしかったのか。長い身躯の尻尾の方を丸めて、くるくると宙を回転しだした。

チョチョキンッ、とリズムよくハサミを閉じたのを、私は見逃さなかった。


「よし、これでようやく動ける。みんな、ありがとね」


一つ目小僧の頭を撫でた後に、唐傘お化けと垢嘗めを抱きしめ、網切りの背中を撫でた。


「あとはここからどうやって抜け出すか」 


そう言って妖怪達と一緒に腕を組んで格子を睨む。


「これより、作戦会議を開始します!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。