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わたくしは……最初からユーナ、あのアリサの母親ですが、あのメイドが嫌いでした。少し男に媚びるところがあって、雇った当初から嫌な予感がしたものです。
予感は当たり、ある日ユーナは勝ち誇った顔でお腹を撫でて見せつけてきました。あの子が産んだのが娘であるアリサだったことで、わたくしはどれほど安堵したことでしょう。
あの人、夫であったデュルマ男爵は、ユーナとアリサを街外れの村の隠れ家に囲いました。わたくしのところより居心地がよかったようで、入り浸りだった時期もありましたわ。
幸い、わたくしは妊娠できましたし、生まれてきてくれたのは男児でした。どれほどほっとしたことか。跡取り息子ができたことであの人も落ち着いて、村の家に行くこともなくなり、安堵していました。
でも……成長したアリサは、街の商人の元で売り子になりました。いいえ、その頃にはもう、わたくしの方も嫌いとか憎いとか、そういう話ではなくなっていました。
ただ、あの子が笑うと皆おかしくなるのです。
使用人も兵士も。夫まで。男という男は皆、アリサに夢中でした。わたくしはぞっとしました。仕えるべき男爵家のあるじを誘惑して妊娠するようなユーナの性質が、あの子の人生を歪めてしまったのだとかわいそうにも思いました。
そうしたら、成長したアリサが【宝石姫】だなどと。
それでも、耐えられたのです。あの娘を養子に取り、デュルマ男爵家の戸籍まで汚すようなことは、あの人はなさらなかったから。跡取り息子はわたくしのあの子だから。
そうしたら、今回の騒動です。よりにもよってミストリオス公爵家のお姫様を蹴落とし、自分が王子様の婚約者に収まろうだなんて!
「恥ずかしくて恥ずかしくて。何より、デュルマ男爵家の名はこれで永遠に汚されてしまう。それが悔しくて、たまらないのです……」
未亡人はハンカチに顔をうずめてすすり泣いた。
「夫はさすがにアリサを問い詰めるため、王都へ向かいました。当家もミストリオス公爵家の恩恵は受けておりますもの、ええ、そうしなければ他の常識ある貴族たちにどんな目で見られたことか。そうして、戻ってきたらあの人は目もうつろで……それで……」
「首を括ってしまったんですね」
とシドがぽつりと言うものだから、私は彼の脇腹に肘鉄を食らわせる。
「その、元メイドはどうなりましたか? まだ隠れ家にいるのでしょうか? 実母なら、アリサについて何か知ってるかも」
「三年前に失踪しました」
「な、なんてこと……」
「ええ、アリサの仕業だと思います。でも、確証はありませんの」
「アリサは今、王都にいるのですね?」
「そうです。父親の葬儀にも帰ってきませんでした!」
血を吐くような叫びだった。
「そう」
私はもらい泣きしそうになりながら、なんとか頷いた。
「貴重なお話をありがとうございました。もし、私がアリサを追い詰めることができたなら、きっとあなたの話してくださったことを忘れません」
未亡人ははっと息を詰め、それからほんのりと、花が開くように笑った。




