第八十四話 君だけを、ずっと。
食事を始めたものの――
お互いに、これから話す内容が気になって仕方がない。
会話も続かない。
お酒も進まない。
箸も、ほとんど動かなかった。
しばらくして、未来が小さく息を吐く。
「彬……やっぱり。」
「ん?」
「気になって……喉を通らない。」
そう言って、未来は箸を置いた。
彬も、グラスをテーブルに置く。
「……俺も。」
「え?」
「実はさっきから、何を話せばいいのか分からない。」
彬は苦笑した。
「だったら……もう話そう?」
未来は真っ直ぐに彬を見る。
「私、ちゃんと聞くから。」
「この二年間のこと。」
「何があったのか……全部。」
「そうだな。」
彬は一度、深く息を吐いた。
「先ずは……俺の気持ちから伝えてもいいかな?」
「うん。」
未来が頷く。
彬は少し照れくさそうに笑ってから、
真っ直ぐ未来を見つめた。
「俺は……大学の頃から、未来のことが好きだったよ。」
「え……?」
未来は目を丸くする。
「真二みたいに優しくもできないし。」
「好きすぎて、どう接していいのか分からなくて……上手く話せなかった。」
「だから、いつも未来に嫌な思いをさせてたと思う。」
「大学の頃から……?」
未来は信じられないという顔をする。
「私、彬には嫌われてるとばかり思ってた。」
「逆だよ。」
彬は苦笑した。
「学年が違うからさ。」
「少しでも未来に会えるように、サークルの子に未来のバイト先を聞いて、偶然を装って行ったり。」
「……未来の乗る電車の時間まで教えてもらったりしてた。」
「えっ? だから、よく電車で会ってたってこと?」
未来が目を見開く。
「それ……ストーカーじゃん!」
「……だな。」
彬も苦笑する。
「初めて人を好きになったから、どうしていいか分からなくて……。」
「気持ち悪いことしてたよな。ごめん。」
「なんか突っ込みたいけど……時効だから許す!」
二人の間に、少しだけ笑いがこぼれた。
けれど――
未来はふと、大学時代の彬を思い出す。
いつも周りには、
綺麗な女性たちが集まっていた。
「でも……。」
未来は少し俯く。
「彬はいつも綺麗な人たちに囲まれてたから。」
「私なんて……眼中にないと思ってた。」
その言葉に、
彬は一瞬、黙り込んだ。
「俺は、未来だけを見てたから。」
未来が顔を上げる。
「周りにどんな女の人がいても……俺が見てたのは、未来だけだったから。」
「辛かったよ……。」
彬は少しだけ視線を落とした。
「未来は、俺のことに興味がない。」
「むしろ……俺のこと、苦手なんだと思ってた。」
「……。」
未来は何も言えない。
胸の奥が、少しだけ熱くなる。
「だから、どう接したらいいのか分からなかった。」
「好きなのに……近づくほど、もっと嫌われそうで。」
彬は小さく笑った。
「結局、ずっと遠回りしてたんだよ。」
その言葉を聞きながら、
未来は静かに彬を見つめていた。
ここまで読んで下さり、ありがとうございます!
彬の長年の片思いが重すぎて衝撃ですが、
真二よりも、ずっと大切にしてくれそうな感じがしてキュンとしますよね!




