↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
曖昧な記憶の、その隣で  作者: はる乃


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
82/89

第八十三話 この時間を楽しみたい

彬の家に着くと、

彬はあらかじめ用意していた皿に、

出来合いのお惣菜やおつまみを手際よく並べていった。


「私も手伝うよ!」


「手伝うようなこと、そんなにないから。」


彬は笑いながら、料理を並べていく。


「未来は、とりあえずゆっくりして待ってて。」


「うん。」


未来はソファに座り、

彬の手元を眺めていた。


けれど。


さっきの映画のチケットが、頭から離れない。


(真二先輩と……クリスマスイブに映画を見に行くつもりだったのかな。)


(彬は……私と真二先輩の関係を、どう思ってたんだろ。)


断片的に蘇った記憶を思い返しているうちに、

未来はいつの間にか俯いていた。


その時。


「未来?」


気がつくと、

目の前に彬が立っていた。


「……え?」


「疲れたのか?」


彬は心配そうに、未来の顔を覗き込む。


「どうかしたか?」


「……ごめん、ごめん!」


未来は慌てて顔を上げた。


「ちょっとボーッとしちゃってたね。」


そして、テーブルに並んだ料理を見て笑う。


「すごく美味しそう!」


「……だろ?」


彬も笑う。


「未来が好きそうなもの考えて買ってきたから。」


「今日は、いっぱい食べよう。」


「うん!」


未来は嬉しそうに頷いた。


けれど――


ふと、何かを思い出したように彬を見る。


「ねぇ、彬。」


「ん?」


「話って……何?」


「……。」


彬の手が、一瞬止まった。


「やっぱり……この二年間のことだよね?」


「あぁ……。」


「先に教えて!」


未来は少し身を乗り出す。


「良いこと? 悪いこと?」


「んー……。」


彬は困ったように笑った。


「難しいな。」


そして、少しだけ視線を落とす。


「でも……やっぱり、悪いことかな。」


「え……?」


未来の表情が変わる。


「教えて、彬。」


「この二年間のことも……もっと知りたいよ。」


「私が忘れてしまったことなら、ちゃんと知っておきたい。」


彬は、そんな未来を黙って見つめる。


(……そうだよな。)


(お前には、知る権利がある。)


「……分かった。」


彬は小さく息を吐いた。


けれど――


「その前に。」


「先に食べてからにしないか?」


「えー?」


未来は少し不満そうに頬を膨らませる。


「なんで?」


「せっかく買ってきたんだ。」


「冷めたらもったいないだろ?」


「……それだけ?」


「あぁ。」


彬は笑った。


けれど、その笑顔の奥には。


これから未来にすべてを話す覚悟と、

それを恐れる気持ちが入り混じっていた。

ここまで読んで下さり、ありがとうございます。


「先に食べてから」は、

彬が最後の時間を

少しでも普通に過ごしたい気持ちにも見えて、

切ないですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。