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曖昧な記憶の、その隣で  作者: はる乃


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第七話 思考停止の夜

二人の唇が重なった。


未来の思考が、

音もなく止まる。


嘘……。


そう思った。


けれど目の前の光景は、

何度瞬きをしても消えてはくれなかった。


胸の奥が、

ぎゅっと締め付けられる。


苦しい。


息ができない。


「……」


声が出ない。


名前を呼ぶことさえ、

できなかった。


二人はまだ、

未来に気付いていない。


だから未来は、

そっと踵を返した。


一歩。


また一歩。


静かにその場を離れる。


涙が頬を伝う。


(どうして……。)


半年前の約束。


「この案件が取れたら、結婚しよう。」


その言葉だけを信じて、

ここまで頑張ってきた。


休日も。


睡眠も。


自分の時間も。


全部、

真二のために捧げてきた。


なのに。


「……私、何を頑張ってきたんだろう。」


エレベーターの扉が閉まる。


その瞬間。


張り詰めていた糸が切れた。


ぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。


スマートフォンが震えた。


――真二。


画面を見つめる。


いつもなら、

一番に出る相手。


でも。


今は、その名前を見るだけで胸が痛い。


着信は鳴り続ける。


未来はそっと電源ボタンを押した。


画面が暗くなる。


「……ごめん。」


誰に向けた言葉だったのか、

自分でも分からなかった。


ホテルを出る。


雨はもう上がっていた。


濡れたアスファルトが、

街灯の光をぼんやりと映している。


行く当てもないまま歩く。


どこへ向かっているのかも分からない。


スマートフォンが、

再び震えた。


真っ暗な画面に、

着信だけが何度も浮かび上がる。


未来は見ないふりをした。


見てしまえば、

また信じてしまいそうだったから。


交差点に差しかかる。


信号が青に変わる。


未来は涙を拭うこともなく、

ゆっくりと一歩を踏み出した。


その瞬間。


眩しいヘッドライトが、

視界いっぱいに広がった。


「危ない!!」


誰かの叫び声。


激しいブレーキ音。


世界が白く弾けた。

この後は、どんな泥沼になっていくのでしょうか?


フォローもしくは、いいねをして貰えると励みになります。

宜しくお願いします!

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