第六話 裏切りのキス
乾杯が終わり、
和やかな雰囲気の中で歓談が続く。
未来も取引先の営業部長へ挨拶に向かった。
「先ほどは資料をありがとうございました。」
営業部長は笑顔で頭を下げる。
「少し拝見しましたが、本当に素晴らしい内容でした。」
未来は驚いて目を丸くする。
「ありがとうございます。」
「こちらの細かな要望まで反映してくださっていて、本当に助かりました。社長からも、あなたが中心となって準備を進めてくださったと伺っています。」
その言葉に、
未来は胸が温かくなった。
半年間の苦労が、
少しだけ報われた気がした。
「こちらこそ、このたびはありがとうございました。」
深く頭を下げる未来に、
営業部長は満足そうに頷く。
「今後とも、よろしくお願いいたします。」
挨拶を終えた未来は、
ふと会場を見回した。
「あれ……?」
さっきまでそこにいたはずの真二の姿がない。
「社長なら、先ほどテラスへ行かれましたよ。」
近くにいた社員が教えてくれる。
「ありがとうございます。」
未来は小さく微笑み、
テラスへ向かった。
ガラス扉の向こうには、
夜景を眺める二人の姿があった。
真二と、美香。
思わず足を止める。
二人は未来の存在に気付いていない。
「真二、本当にいいの?」
美香が少し困ったように笑う。
「未来ちゃん、探してるんじゃない?」
真二は軽く笑った。
「大丈夫。」
「でも……。」
「未来は最後まで仕事をきっちりやるから。」
少しだけ空を見上げ、
穏やかな口調で続ける。
「終わったら迎えに行くよ。」
その言葉に、
未来の胸が少しだけ温かくなる。
(迎えに来てくれるんだ……。)
そう思った、その瞬間だった。
美香が真二のネクタイを軽く引く。
「……ほんと、ずるい人。」
真二は美香を見つめ、
小さく笑った。
「今だけ。」
次の瞬間、
二人の唇が重なった。
未来の思考が、
音もなく止まった。
真二には二面性がある事に気付く未来。
これから、どうなっていくのでしょうか?




