第五話 取り残された未来
ドアを開けると、
会場は立食形式のカジュアルなパーティーだった。
堅苦しい雰囲気ではない。
それでも女性たちは、
ワンピースやセットアップなど、
思い思いにおしゃれを楽しみ、
笑顔で談笑している。
仕事帰りそのままのスーツ姿は、
未来だけだった。
思わずジャケットの袖を整え、
小さく息をつく。
「……やっぱり、浮いてるよね。」
苦笑しながら会場を見渡す。
すると、
すぐに真二の姿が目に入った。
提携先の社長と営業部長を囲み、
隣には同僚の美香が立っている。
淡い色のワンピースに身を包んだ美香は、
柔らかな笑顔で話に加わっていた。
その姿は、
まるで最初からそこにいるべき人のように自然だった。
未来は手にしていた資料へ視線を落とす。
親睦会までにと頼まれ、
何とか間に合わせた書類。
少しだけ力が入った指先をほどき、
深呼吸を一つする。
(まずは仕事。)
そう自分に言い聞かせて、
真二たちのもとへ歩き出した。
未来は小さく深呼吸をすると、
資料を抱えたまま真二たちのもとへ歩いていった。
「真二。」
声を掛けると、
真二はすぐに振り返った。
「あっ、未来! 来てくれたんだ。」
その笑顔に、
未来の胸は少しだけ軽くなる。
「頼まれていた資料、できたよ。」
「助かった!」
真二は資料を受け取り、
その場で軽く目を通す。
「さすが未来だな。完璧。」
照れくさそうに笑う未来。
その時だった。
「藤崎社長、お知り合いですか?」
提携先の社長が興味深そうに尋ねる。
未来の胸が高鳴る。
(もしかして……。)
半年前の約束が頭をよぎる。
──この案件が成功したら、結婚しよう。
今日こそ。
みんなに紹介してくれるのかもしれない。
そんな期待が胸いっぱいに広がる。
真二は笑顔のまま未来へ目を向けた。
「ああ、うちの社員です。」
未来の笑みが、
わずかに固まる。
「事務だけじゃなく、スケジュール調整や資料作成まで何でもこなしてくれる、頼れるスタッフなんですよ。」
「それは心強いですね。」
「彼女がいると本当に助かるんです。」
笑いながら話す真二。
悪気なんて、
これっぽっちもない。
未来も笑顔を崩さない。
「ありがとうございます。」
そう頭を下げるしかなかった。
恋人ではなく、
婚約者でもなく。
“頼れる社員”
それが、
今の自分の立場だった。
その時。
「社長。」
美香がグラスを片手に近づいてくる。
「そろそろ乾杯のお時間です。」
「ああ、ありがとう。」
真二は自然な流れで、
未来から視線を外し、美香と並んで歩き出した。
取り残された未来は、
二人の後ろ姿を見つめる。
(今日じゃ無くても、
ちゃんと紹介してくれる。)
そう自分に言い聞かせながら、
小さく笑った。
不穏な空気になってきました!
更なる展開を楽しみにしていて下さい!
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