第四十八話 距離が少しづつ
未来は鍵を大切そうにバッグの内ポケットへ戻した。
「見つかって、本当に良かったです。」
彬は小さく頷く。
「良かったな。」
「帰りに部屋へ寄ろう。」
「着替えとか必要なものもあるだろ。」
未来は嬉しそうに笑った。
「はい。」
「着替えやパジャマも取りに行きたいです。」
「あと……。」
少し照れたように続ける。
「どんな生活をしてたのかも、見てみたいです。」
奈緒は会計を済ませると、にっこり微笑んだ。
「そっか。」
「今は彬が面倒見てくれてるなら安心だね。」
「また髪が伸びたら、いつでもおいで。」
「次はもっと可愛くしてあげるから。」
未来は深々と頭を下げた。
「はい。」
「今日は本当にありがとうございました。」
店を出ようとしたその時――。
彬は何も言わず、未来のバッグを手に取る。
「あっ、私が持ちます。」
「いい。」
「そろそろ足、限界なんだろ。」
ぶっきらぼうな口調なのに、その手つきはどこまでも優しかった。
未来は少しだけ笑って頷く。
「……はい。」
店のドアが開き、夕暮れの柔らかな風が二人を包む。
奈緒はその後ろ姿を見送りながら、小さく微笑んだ。
(早く思い出せるといいね。)
(この人が、どれだけ未来ちゃんを大切に想ってきたか。)
そう願いながら、静かに手を振る。
「またね、未来ちゃん。」
「はい!」
未来も笑顔で手を振り返した。
⸻
そして――。
車は未来の住むマンションの前へ静かに停まった。
彬はエンジンを切り、マンションを見上げる。
ここへ来るのは初めてだった。
未来はシートベルトを外しながら、少し申し訳なさそうに笑う。
「あの……。」
「部屋の中、散らかってるかもしれないので。」
「車で待っててもらってもいいですか?」
彬は未来を見る。
「それは構わない。」
「ただ。」
「二階まで抱っこさせてくれるならな。」
未来は目を丸くした。
「えっ!?」
「な、何言ってるんですか!」
「私、ちゃんと歩けます!」
彬は呆れたようにため息をつく。
「さっきまで足を引きずってただろ。」
「……無理するな。」
少しづつ無意識のうちに、2人の心の距離が近づいている感じが初々しくてドキドキしますね!
彬は、未来の部屋に入るのか?入らないのか?
続きも楽しみにして貰えると嬉しいです。




