第四十四話 永遠の片思い
「今日は、どうしようか?」
奈緒が鏡越しに未来へ笑いかける。
未来は少し困ったように笑った。
「突然連れて来てもらったので……。」
「正直、どうしたらいいのか分からなくて。」
奈緒は優しく頷く。
「そっか。」
「じゃあ、一緒に考えよっか。」
その時、彬が口を開く。
「未来。」
「さっき美容部員さんに、ボブも似合いそうだって言われてただろ。」
未来は自分の髪へ触れる。
「はい……。」
「でも、似合うのかな。」
「切ったことないし、ちょっと勇気がいります。」
奈緒は未来の輪郭を見つめ、にっこり笑った。
「絶対似合う。」
「未来ちゃん、顎のラインがすごくきれいだから。」
「今より少し軽めのボブにしたら、もっと可愛くなるよ。」
未来は鏡の中の自分を見つめる。
「そうなんですか……。」
奈緒は懐かしそうに笑った。
「未来ちゃんは知らない事だけど。」
「大学の新入生の頃、可愛い子が入ってきたって結構話題だったんだよ。」
未来は目を丸くする。
「えっ、私がですか?」
「うん。」
「サークルでも結構ざわついてた。」
「でもね。」
奈緒はくすっと笑って彬を見る。
「彬と真二君が、近寄ってくる男子をさりげなく追い払ってたよね。」
「小蝿でも払うみたいに。」
「奈緒。」
彬が低い声で制する。
奈緒は肩をすくめた。
「はいはい、ごめんごめん。」
健太が思い出したように笑う。
「彬、覚えてるか?」
「お前、わりとモテたのに、一度も彼女作らなかったもんな。」
「紹介しようとしても、『好きな子がいるから』の一点張り。」
「未来ちゃん見たら、そりゃ仕方ないって思うわ。彬、良かったな!」
未来は驚いたように彬を見る。
「そう……だったんですか。」
彬は居心地が悪そうに視線を逸らした。
「……うるさい。」
「髪切りに来ただけだ。」
奈緒は二人を見つめ、そっと微笑んだ。
(昔から、ずっと好きだったもんね。)
(未来ちゃんが真二君と付き合うって聞いた日は、何日も落ち込んで、お酒ばかり飲んでたっけ。)
(もう諦めたと思ってた。)
(だから今日、二人が並んで店に来た時は、自分のことみたいに嬉しかった。)
(彬、本当に良かったね。)
未来にとっては何気ない一日ですが、彬にとっては大学時代から憧れ続けた人を隣に連れて歩く、夢のような時間だったのかもしれません。
一方で奈緒や健太は、本当に二人が結ばれたと思って心から喜んでいます。
だからこそ、その優しい勘違いが少し切なくもあります。
次回は、イメチェンした未来が登場します




