第三十九話 行動力
美容部員は未来の肌を見ながら、にっこりと微笑んだ。
「お肌、とてもきれいですね。」
「素材がいいので、お化粧のしがいがあります。」
未来は少し照れくさそうに笑う。
「そんなこと言われたの、初めてです。」
「本当ですよ。」
「今日はナチュラルな雰囲気がお似合いなので、その魅力を活かしていきましょう。」
美容部員は肌色を確認しながら、下地やファンデーションを選び、アイシャドウやリップを一つひとつ試していく。
鏡の中の自分が少しずつ変わっていくのを見て、未来は何度も目を丸くした。
「すごい……。」
「これ、本当に私ですか?」
「もちろんです。」
美容部員は最後に鏡を見せながら微笑んだ。
「とてもお似合いですよ。」
未来は鏡に映る自分を見つめ、照れくさそうに笑う。
「こんなにちゃんとメイクしてもらったの、初めてです。」
「ありがとうございます。」
美容部員は嬉しそうに頷いた。
「それと……。」
未来の輪郭を見つめながら、優しく続ける。
「顎のラインがとても綺麗なので、ボブくらいの長さもすごくお似合いになりそうですね。」
未来は思わず髪に触れた。
「ボブですか?」
「やったことないです。」
「でも……ちょっと憧れます。」
「きっとお似合いになりますよ。」
美容部員が笑顔で言うと、彬も未来を見て頷いた。
「……俺もそう思う。」
未来は照れたように笑う。
「本当ですか?」
その時、彬のスマートフォンが震えた。
画面を見ると、小さく未来へ声を掛ける。
「悪い。」
「一本だけ電話してくる。」
「ゆっくり見ててくれ。」
「はい。」
未来は美容部員とリップの色を見比べながら、楽しそうに話し始めた。
⸻
店の外へ出ると、彬は迷わず一つの番号へ電話を掛けた。
『もしもし?』
「久しぶり。」
「彬だけど。」
『えっ、珍しいじゃん!』
『どうしたの?』
相手は大学時代からの友人、奈緒。
夫婦で美容室を営んでいる。
「急で悪い。」
「今日、このあと一人お願いできるか。」
『もちろん。』
『誰を切るの?』
彬は少しだけ間を置いた。
「……知り合いだ。」
「さっき化粧品売り場で、ボブが似合いそうだって言われてな。」
「本人も少し興味があるみたいだから。」
「似合うように任せたい。」
電話の向こうで奈緒が笑う。
『なるほどね。』
『彬がそこまで頼むなら、気合い入れなきゃ。』
『夕方ならちょうど一枠空いてるよ。』
「助かる。」
短く笑って電話を切る。
スマートフォンをポケットへしまい、デパートの入口を見上げた。
(未来が、喜ぶなら。)
そう思いながら、彬は再び売り場へ戻っていった。
ただの知り合い!と言う障害が、肩透かしですが、
この行動力憧れますね!




