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曖昧な記憶の、その隣で  作者: はる乃


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第三十七話 鈍感と心配の狭間

店の外へ出ると、真二は周囲を見回してから口を開いた。


「彬。」


「……やりすぎだろ。」


彬は眉をひそめる。


「何がだ。」


「未来のことだよ。」


「お前、本気で引っ越しまで考えてるのか?」


「ああ。」


迷いなく答える彬に、真二はため息をつく。


「お前の本当の彼女じゃないんだぞ。」


「恋人のふりだ。」


「そこまで世話を焼く必要はない。」


彬は黙って真二を見つめる。


真二はポケットから鍵を取り出した。


「これ。」


「未来の部屋の鍵。」


「事故のあと、未来の会社の社長って事で未来の父親から預かってた。」


彬は受け取りながら尋ねる。


「そうだったのか。それなら、未来との思い出の物は。」


「ああ。」


「写真もプレゼントも、俺の荷物も一先ず全部片付けた。」


「未来が見ても思い出さないようにな。」


彬は小さく息を吐く。


「住所送っとけよ。」


「彼氏が一度も部屋に行ったことないなんて、不自然だからな。」


真二は苦笑した。


「彬、防犯がどうとかは気にしなくていい。」


「お前が気にすることじゃない。」


その一言で、彬の表情が変わる。


「……お前。」


「何でそんなことが言える。」


真二は怪訝そうに眉を寄せた。


「は?」


「彼氏だったんだろ。」


「未来は、残業が多いんだろ?帰る道とか、オートロックとか防犯も気にしてやれよ。」


「お前、彼氏として心配じゃないのか?」


真二は言葉に詰まる。


「会社も忙しかったし……。」


「それに未来は、何も言ってなかった。」


「だから放っておいたのか。」


彬は一歩近づく。


「未来が平気だって言ったら、それで終わりか?」


「恋人なんだから、もっと親身になってやれよ!」


真二は思わず目を逸らした。


「……。」


彬は鍵を握りしめる。


真二が低い声で言う。


「勝手に引っ越しなんてさせるな。」


「記憶が戻ったら、どうせ結婚するんだ。」


「引っ越す必要なんてない。」


彬は静かに答えた。


「引っ越すかどうかは、未来が決める。」


「俺は選択肢を作るだけだ。」


真二は眉をひそめる。


「彬。」


「余計なことはするな。」


彬は真二をまっすぐ見つめた。


「一つだけ聞く。」


「未来と結婚するつもりなんだよな。」


「ああ。」


「そのつもりだ。」


迷いなく答える真二。


彬は小さく息を吐いた。


「だったら。」


「未来が大型案件で毎日終電まで働いていた半年。」


「あいつがお前のために必死だった半年。」


「その間、お前は誰と付き合ってた。」


真二の表情が固まる。


「……。」


「答えなくていい。」


「お前が何をしてきたかは、俺が一番知ってる。」


静かな声だった。


だからこそ重い。


「未来は、お前を信じてた。」


「それだけは忘れるな。」


真二は何も言えなかった。


彬は鍵をポケットへしまう。


「未来が安心して暮らせるなら、それでいい。」


「俺は俺にできることをする。」


そう言い残し、店へ戻っていった。

彬は感情で責める人ではなく、相手が一番痛い事実を静かに突きつける人ですが、

このままだと親友と言う関係も危うくなりそうで心配ですね。


続きが気になる方は、次回もフォローして貰あると嬉しいです!

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