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曖昧な記憶の、その隣で  作者: はる乃


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第三十六話 俺は心配

彬は二人の会話を聞きながら、未来へ視線を向けた。


「そういえば、お前、家の鍵が見つからないんだろ?」


未来は困ったように笑う。


「事故の時になくしちゃったみたいで……。」


「バッグに入ってなかったんです。」


彬は眉をひそめた。


「まだ鍵穴のあるアパートなのか。」


「女の一人暮らしなんだから、もう少し防犯を考えろ。」


未来は少し驚いたような顔をする。


「大学に入る時、亡くなった母と一緒に探した部屋だったから。」


「だから……離れられなかったんだと思います。」


その言葉に、彬は少しだけ目を伏せた。


「……そうか。」


短く頷くと、真っ直ぐ未来を見る。


「不動産屋の知り合いも多いし、休職してる間に引っ越そう。」


未来は慌てて首を振る。


「えっ、大丈夫ですよ。」


「お前が大丈夫でも、俺は心配だ。」


ぶっきらぼうな口調だった。


けれど、その言葉には隠しきれない優しさが滲んでいる。


「思い出は大事だ。」


「でも、お前の安全の方がもっと大事だろ。」


「……。」


「お母さんだって、きっと同じことを思う。」


未来は少し目を潤ませ、小さく頷いた。


「……はい。」


彬は空気を変えるように軽く息を吐く。


「一先ず、足もまだ本調子じゃない。」


「買い物の前に、今日は生活に必要な物だけ揃えよう。」


未来も気持ちを切り替えるように微笑んだ。


「携帯も使えるようになったので、大家さんに連絡してみます。」


「鍵のことも相談してみます。」


「そうだな。」


彬は頷く。


「番号、俺にも教えとけ。」


「何かあった時、連絡が取れた方がいい。」


未来は素直に頷いた。


「はい。」


「ありがとうございます。」


「服も下着も、化粧品も。」


「今は困らない程度に揃えればいい。」


彬は時計に目をやった。


「俺たちはこのあと買い物もある。」


「未来、そろそろ出るぞ。」


そう言って立ち上がろうとした。


「未来、先に会計してくる。」


すると真二が伝票へ手を伸ばした。


「待て。」


「俺に払わせてくれ。」


彬は首を横に振る。


「いや。」


「先に席を立つのは俺たちだ。」



真二は苦笑する。


「相変わらず律儀だな。」


「社長同士でそんな遠慮するな。」


「今日は俺に払わせろ。」


彬は少しだけ考え、小さく息をついた。


「……悪い。」


真二は伝票を持って立ち上がる。


「その代わり。」


「彬、少しいいか?」


「話がある。」


「五分も取らせない。」


彬は未来へ視線を向けた。


彬は未来へ視線を向けた。


「未来。」


「少し待っててくれ。」


真二も笑って言う。


「悪いな。」


「すぐ戻る。」


未来は何の疑いもなく笑顔で頷いた。


「はい。」

彬は「未来の安全」を当たり前のように考えてい所が 素敵ですよね!

男同士の話し合い、どんな話しになるのでしょう。


興味のある方は是非フォローして応援して貰えると嬉しいです!

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