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曖昧な記憶の、その隣で  作者: はる乃


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第三十一話 恋人役

メニューを開き、未来が困ったように首をかしげる。


「二人は何を頼んだんですか?」


真二は笑って答えた。


「美香はタラコパスタで、俺はマルゲリータピザ。」


「あとは食後にコーヒーかな。」


「そうなんですね。」


未来もメニューへ目を落とした。


「昨日もパスタだったし……どうしよう。」


迷っている未来の横で、彬がメニューを覗き込む。


「これにしろ。」


指差したのはビーガンライスボウルだった。


「野菜も多いし、お前、こういうの好きだろ。」


「それとフィッシュアンドチップス。」


「二人でつまむなら、それくらいで十分だ。」


「でも待てよ!季節野菜のピザも食べたいだろ。」


未来は目を輝かせた。


「わぁ! 全部おいしそう!」


「じゃあ、それにします。」


嬉しそうに笑う未来を見て、彬もわずかに口元を緩める。


その光景を見つめながら、真二は小さな違和感を覚えた。


(……なんだ?)


未来の好みを、彬があまりにも自然に口にした。


まるで、ずっと一緒に過ごしてきた恋人のように。


胸の奥がざわつく。


(いや、違う。)


彬は頼まれて恋人役を演じているだけだ。


未来も記憶を失っているから、それを信じているだけ。


二人の距離が近く見えるのは、そのせいだ。


そう思い直そうとする。


それでも。


未来が彬へ向ける笑顔は、どこか柔らかくて自然だった。


(記憶が戻れば、全部元に戻る。)


(未来は俺の婚約者だ。)


(彬は、俺が安心して任せられる唯一の相手。)


(……あいつが、本気になるわけがない。)


そう何度も自分に言い聞かせる。


けれど胸の奥に芽生えた小さなざわめきだけは、

どうしても消えてはくれなかった。

彬はもう惹かれ始めてるよ…真二!


と、肩を叩いてあげたい場面ですが。

なかなか当事者は気付かないのが恋愛ですよね。


この先の展開も興味あるかたは、是非フォローして貰えると嬉しいです!

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