第二十一話
「どこか具合でも悪いのか?」
彬が心配そうに顔を覗き込む。
「大丈夫か?」
未来は慌てて笑顔を作った。
「大丈夫です。」
「ただ……。」
少し照れくさそうに視線を逸らす。
「大学時代の先輩しか覚えてないから、ちょっと驚いちゃって。」
「そうか。」
彬はそれ以上は聞かず、小さく頷いた。
未来は安心したように微笑む。
「じゃあ、お言葉に甘えます。」
「その代わり。」
「できることがあったら、何でも手伝わせてください。」
彬は少し考え込むように腕を組む。
「じゃあ……。」
「味見係、頼む。」
未来の表情がぱっと明るくなる。
「それなら任せてください!」
その笑顔を見ながら、彬はキッチンへ向かった。
冷蔵庫を開け、中を覗き込む。
「未来、肉は苦手だったよな。」
「ナスとトマトがある。」
「簡単なパスタでもいいか?」
未来は目を丸くした。
「はい!」
思わず返事をしたあと、小さく笑う。
――やっぱり。
恋人だったんだ。
私の好き嫌いまで、ちゃんと覚えていてくれる。
胸の奥が、ふわっと温かくなる。
大学時代の冷たかった黒沼先輩しか知らない私には、
今の先輩が少しだけ新鮮で。
少しだけ、嬉しかった。
未来は幸せそう、彬は切ない、
という温度差が、今後どんな風になっていくのか
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