第二十話 本の少しの違和感
客間へ荷物を運び終えると、彬は腕時計に目をやった。
「もう夕方か。」
未来も時計を見る。
その時。
ぐぅぅ……。
静かな部屋に、お腹の音が響いた。
「あっ、また……。」
未来は慌ててお腹を押さえ、耳まで赤くなる。
「き、聞こえました?」
彬は肩を震わせた。
「思ってたより食い意地張ってるんだな。」
「ち、違います!」
未来は頬を膨らませる。
「病院のご飯って、すぐお腹空くんです!」
「言い訳か?」
「違います!」
その必死な様子がおかしくて、彬は珍しく声を出して笑った。
「笑わないでください!」
「悪い。」
そう言いながらも、笑みは消えない。
ひとしきり笑うと、彬は冷蔵庫を開けた。
「夕飯どうする?」
「私が作ります!」
未来は勢いよく立ち上がる。
しかし、一歩踏み出した瞬間、
「っ……。」
足に痛みが走り、体がぐらついた。
彬はすぐに腕を支える。
「だから無理するな。」
「でも、お世話になるのに何もしないなんて……。」
「今日は俺が作る。」
その一言に、未来は目を瞬かせた。
「黒沼先輩、お料理できるんですか?」
「一人暮らしだからな。」
「それくらいはできる。」
未来は小さく頷いた。
けれど、胸の奥に小さな引っ掛かりが残る。
――恋人だったなら。
忙しい日も、疲れて帰った日も。
今迄も、
こうしてご飯を作ってくれたりしたんだろうか。
そんなことを考えた瞬間。
胸がちくりと痛んだ。
「どうした?」
彬が不思議そうに覗き込む。
未来は慌てて首を振る。
「ううん。」
「何でもありません。」
理由は分からない。
でも。
心のどこかが、ざわついている。
真二は、未来に対して労っていなかったのかな?と思わせる場面ですね!
少しの違和感が積み重なっていくと、どうなっていくのか。




