第十七話 初々しい気持ち
「未来。」
彬は呆れたようにため息をつく。
「……お前、俺で遊んでるだろ。」
「えへへ。」
未来がいたずらっぽく笑う。
その瞬間。
コツン。
「いたっ!」
額を軽く押さえた未来が頬を膨らませる。
「デコピンなんてひどいです!」
「全然痛くねぇだろ。」
「痛かったです!」
「嘘つけ。」
二人は思わず笑い合った。
ひとしきり笑ったあと、未来は少し真面目な表情になる。
「でも……。」
「先輩。」
「大学の頃、私のこと嫌いでしたよね?」
彬の笑みが少しだけ消える。
「何があって恋人になったのか。」
「気にならない方がおかしいです。」
未来は真っ直ぐ彬を見つめた。
しばらく沈黙が流れる。
やがて彬は、静かに口を開く。
「……大学の頃も。」
「お前のことは嫌いじゃなかった。」
未来は驚いたように目を見開く。
「え?」
彬は照れ隠しのように視線を逸らす。
「ただ……。」
「女とどう接すればいいのか、分からなかった。」
未来は思わず吹き出した。
「えぇ?」
「黒沼先輩が?」
「私の記憶だと、いつも綺麗なお姉さん達に囲まれてましたよ?」
「大学でも、すごくモテてましたし。」
「私なんて、話しかけるのも緊張してたくらいです。」
彬は苦笑する。
「……あいつらは勝手に寄ってきてただけだ。」
「俺が相手してたわけじゃない。」
「そうなんですか?」
「そうだ。」
少し間を置いて、彬はぽつりと呟く。
「分からなかったのは……。」
「お前への接し方だけだ。」
未来はきょとんと瞬きをする。
「私だけ?」
「ああ。」
「お前は、他の女とは違った。」
それだけ言うと、彬は照れくさそうに立ち上がった。
「……この話は終わりだ。」
「えー!」
未来は思わず笑い声をあげた。
「黒沼先輩、照れてます?」
「照れてねぇ。」
「絶対照れてます。」
「うるさい。」
そのぶっきらぼうな返事が、妙に心地よくて。
未来は自然と笑みをこぼしていた。
何も知らない未来。
知ってる彬で、きっと会話をしてても。
心中複雑なものの、初々しさって素敵ですね!
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