第十六話 ぎこちなさ
コンコン。
「失礼する。」
病室のドアがゆっくり開く。
未来はベッドの上で本を読んでいた。
「あっ!」
顔がぱっと明るくなる。
「黒沼先輩!」
その笑顔に、彬は少しだけ目を逸らした。
「……体調は。」
「もう大丈夫です!」
未来は嬉しそうに答える。
「来てくれると思ってました。」
「約束したからな。」
ぶっきらぼうな返事。
でも昨日より少しだけ柔らかい。
未来はクスッと笑う。
「黒沼先輩って、不器用ですね。」
「……うるさい。」
「ふふっ。」
昨日まで緊張していた空気が、
少しだけ和らぐ。
看護師から短時間なら歩いても大丈夫と言われた未来は、窓の外を見つめながら小さく呟いた。
「黒沼先輩。」
「……ん?」
「リハビリも兼ねて、お散歩に付き合ってもらえませんか?」
彬は少し驚いたように未来を見る。
「歩けるのか?」
「少しなら。」
未来は照れくさそうに笑った。
「一人だと心細くて。」
その言葉に彬は小さく息をつく。
「……分かった。」
病院の中庭。
雨上がりの風が木々を揺らしていた。
未来はゆっくり歩き始める。
けれど数歩進んだところで、
「っ……。」
痛みに顔をしかめた。
体がふらつく。
その瞬間。
彬は反射的に未来の腕を支えた。
「無理するな。」
「ご、ごめんなさい。」
「謝るな。」
「転ばれる方が困る。」
未来は少し照れながら笑う。
「ありがとうございます。」
そのまま歩き出す二人。
最初は腕を借りることに遠慮していた未来も、
少しずつ体重を預けるようになる。
やがて中庭のベンチへ腰を下ろす。
彬は未来との間を一人分空けて座った。
未来はその距離を見て苦笑する。
「黒沼先輩。」
「……なんだ。」
「恋人なのに。」
「そんなに離れて座るんですか?」
彬は言葉を失う。
「……。」
「私、何も覚えてないから分からないんですけど。」
「そんなに遠かったですか?」
困ったように笑う未来。
彬は観念したように小さく息を吐く。
「……悪い。」
そう言って、未来の隣へ座り直した。
肩が触れそうなくらい近い距離。
未来は嬉しそうに笑う。
「私達、付き合ってた時はどんな感じだったんですか?」
その笑顔に、
彬は思わず視線を逸らした。
(勘弁してくれ……。)
彬の勘弁してくれよーが、伝わってくる会ですね。
しばらく。この場面が続きます!




