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曖昧な記憶の、その隣で  作者: はる乃


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第十二話 複雑な気持ち

未来は改めて三人を見渡した。


その時だった。

不安げな顔の美香が、そっと真二の腕に触れる。


その手つきは、迷いがなかった。


まるで、そうするのが自然だと言わんばかりに。

未来は思わず首をかしげる。


「あの……」

三人の視線が未来に集まる。


「もしかして……美香と真二先輩って、付き合ってるんですか?」


病室の空気が、ぴんと張りつめた。


美香が息をのむ。


真二は一瞬だけ彬を見て、それから小さくうなずいた。


「ああ」「そうだ」


「えっ……」


未来は目を丸くした。


「そっか……」


その瞬間、胸の奥がちくりと痛んだ。

(なんで、こんなに……)


大学時代の記憶がよみがえる。

講義室、学園祭、研究室。笑って話す真二の姿。


誰にも言えないまま、胸の奥で育ててきた片思い。


(……そうだ)(私、真二先輩のことが好きだった)



まだ消えきっていない、

その気持ちが痛みの正体なのだと、

未来は思おうとした。


けれど、すぐに別の考えが浮かぶ。

(違う)(今の私は……)


ゆっくりと彬を見る。

(この人の恋人なんだ)


なのに、何も覚えていない。

二年間のことも、思い出も、好きになった理由も。


全部、手のひらからこぼれ落ちたみたいに、

残っていない。


胸がきゅっと縮む。

(私……)

(黒沼先輩に、ひどいことしてる)


未来は申し訳なさそうに頭を下げた。


「ごめんなさい」

「記憶がなくて……」

「恋人なのに、何も思い出せなくて」


彬は静かに未来を見つめる。


「……謝るな」

短く、それだけだった。


けれど、その声は少しだけやわらかく聞こえた。

未来はまた、胸の奥がちくりと痛むのを感じた。

彬が、1番複雑な立場ですね。

今後、どの様な展開になるのやら。


興味のある方は是非フォローして貰えると、嬉しいです!

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