第十話 重たい嘘
「断る。」
彬は間髪入れずに言い放った。
「お前の尻拭いを、俺がする義理はない。」
真二は困ったように頭をかく。
「頼むよ。」
「一生のお願いだ。」
「嫌だ。」
彬は真二を真っ直ぐ睨みつけた。
「未来は物じゃない。」
「都合よく預けたり、迎えに行ったりする相手じゃねぇ。」
真二は黙り込む。
彬はさらに言葉を続けた。
「それに、お前。」
「未来がどれだけお前のために頑張ってきたか、一番知ってるだろ。」
「……。」
「その未来を泣かせておいて、遊びたい?」
「ふざけるな。」
重苦しい空気の中、美香がおずおずと口を開いた。
「……もう、やめようよ。真二。」
真二は首を横に振る。
「美香。」
「旅行に行きたいとか、二人でゆっくり過ごしたいって言ってただろ。」
美香は視線を落とす。
「言ったけど……。」
「でも、こんな形で叶えたいわけじゃない。」
真二は苦笑した。
「大丈夫だよ。」
「未来とは、いずれ結婚する。」
「それは変わらない。」
「今だけなんだ。」
「今だけ、お前だけを大切にしてやりたい。」
美香は返事ができなかった。
罪悪感と嬉しさが入り混じった表情のまま、唇を噛みしめる。
その時だった。
検査を終えた未来が、看護師とともに廊下の向こうから歩いてくる。
その姿を見つけた彬は、小さく息を吐いた。
「……勘違いするな。」
低い声で真二に告げる。
「俺は、お前に協力するんじゃない。」
「未来を一人にしないためだ。」
真二が顔を上げる。
彬は未来から目を離さず、静かに続けた。
「その代わり——。」
「後悔するなよ、真二。」
「この嘘は、お前が思ってるよりずっと重い。」
そう言うと彬は未来の元へ歩き出した
複雑な4人。
今後、この嘘がどの様な展開に発展していくのか。
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