盃
ライオンの獣人を全ての力を使ってギリギリ倒すことが出来た。
私よりも強い彼に勝てたのは彼を絶対に近づけなったからに他ならない。
彼の戦闘スタイルは近距離だ。
魔法も少し使うけど全て自分の持ち味である近距離を活かすように使っていた。
だから私は遠距離の攻撃をメインにして彼に攻撃をさせずらいように動いた。
何度も接近されて攻撃を受けそうになったけど、その場合は攻撃を捨てて逃げに徹した。
少しでも焦れば間違いなく死ぬ。
彼の弱点だけを付いただけだ。
彼もそれに気が付いたけど、それでも力でねじ伏せる気でいた。
実際、彼の攻撃スタイルや手の内を知らなければ死んでいたし、私が進化して体力や魔力が上がっていることを知られていなかったことも大きかった。
彼は以前の私を想像して戦闘をしていたのだ。
何とかもぎ取った勝ち星。
「おんや? このライオンはお前が殺したのかえ?」
「誰!?」
まったく気配がなかった。
すぐさま起き上がり、剣を構えた。
「こんな小娘に負けるとは情けないのう」
猫の獣人だ。
この人は強い。
ヤバい。
全快した状態でも勝てるビジョンが湧かない。
「警戒しないで良いでありんす。私はお前を連れこいと言われたので来たのだ」
「誰に言われたの?」
「デュラハンじゃよ」
あの子は一体何やってるの?
「あなたは敵」
「私は思うところあってお前たちに味方することに決めたのじゃ!」
良く見れば遊女のように豪華絢爛で煌びやかな着物を完全に着こなしている。
「私はあのデュラハンを姉と慕うことにしたので、お前を助けに来たのじゃが必要なかったのう」
本当の事を言ってるのか分からない。
「ちょっと待って。連絡するから」
「あい分かった」
あの人のスキルを使ってデュラハンに連絡をする。
「あ、もしもし。香奈ですか? そっちに猫の獣人が行ってませんか?」
「来てるけど、仲間になるって本当なの?」
「本気のようですね。何か思うところがあったようで」
え?
本当なの?
「信用できるの?」
「それは香奈がスキルを使ってください」
あの人からエクストラスキル【テイマー】をもらってるけど、こんなことに使うなんて。
「それは良いけど、翔はどうしたの?」
「あ~彼はどうも自己進化したようで主様からのエクストラスキルもなくなってしまってるんですよね」
「え? どういうこと?」
何があったの?
え?
「そう言うことなんでよろしくお願いしますね」
「あ、ちょっと!」
そう言って切られた。
あの子には説教が必要だ。
これが終わったら絶対に説教をしてあげよう。
「話はおわったかえ?」
「えぇ。これから仲間にするスキルを発動するけど、仲間になる気が無ければスキルは発動しない」
「了解でありでありんす」
一度深呼吸をして、彼女に問うた。
「私たちの仲間になる気はあるか?」
「もちろんでありんす」
スキルは正常に発動し、彼女は仲間となった。
「未練はないの?」
「覚悟の上であるんす。ただ、生きていたら説得する気ではありんした」
ライオンの獣人の身体を見て少し寂しそうな表情を浮かべる彼女に少しだけ警戒を緩めた。
「翔の方に行ったの?」
「そうでありんす。そしたら猿と同士討ちで倒れていたでありんす」
彼女の話を聞くと、翔は猿の獣人と戦闘になり同士討ちなって倒れていることろにデュラハンと彼女が現れて翔と猿の獣人を助けたそうだ。
「猿の獣人は?」
「動ける状態にないので置いて来た。それに二人で来ると問答無用で攻撃されそうだしの」
たしかに。
「そうか。あのライオンに勝ったか。褒美じゃ飲むが良い」
そう言って空の盃を渡して来た。
「これは?」
「霊魂の盃と言って魂を薬に変える盃で魂の強さに比例して美味さが変わる」
魂?
「え? 私の魂をお酒にするの?」
「いや違う。お主が倒したライオンの魂じゃ」
彼の魂か。
「あのライオンも自分を負かしたお主の力になれるのら本望だと言うだろう」
「そう……なのかな」
話したことなんて無いし、会話だって戦闘中にした程度。
私は彼を知らないけど、そんな気もしなくもない。
「どう使うの?」
「魔力を通せ。少量ならまだるじゃろう?」
いや、まったくない。
「先にこっちを飲もう」
魔力回復ポーション(試作)だ。
何か作ってたので勝手にもらった。
あまり美味しそうな匂いはしないので一気に飲む。
「なんじゃそれは?」
「魔力を回復させる薬」
「なんとそんなものが作れるとは凄いのう!」
「でも不味い」
「それは重要じゃのう」
魔力が少し回復したのを実感して盃に魔力を通す。
そうすると底からとくとくと黄金色の液体が溢れてきた。
「飲むが良い」
そう言われて盃に口を付ける。
黄金色の液体は口の中に入り、喉を通り、胃へと流れていく。
液体はお酒のようでアルコールの味が少々するが、荒らしく力強い辛味とそれを覆う甘さが心地よく口の中を転がすと風味が顔をだす。
風味は鼻を通り、香ばくもその中に清涼感を漂わせている。
彼の魂を感じる味だ。
気が付くと盃が空になっていた。
「美味しかった」
「そうであろうな。可能なら私が飲みたかった」
「飲めないの?」
「魂を変換できるのは自分が殺した者だけなのじゃよ」
そうだったのか。
「ありがとう」
「ふむ。それで身体の方はどうじゃ? 回復したであろう」
「え? あ、本当だ」
指摘されるまで気が使ったけど、お酒を飲んだことで身体の傷も体力も魔力も回復している。
いや、それよりも。
「力が上がっている?」
「魂を吸収したからのう。当然じゃな」
何が当然なのか分からないけど、そういう理屈なのだろうと思いことにした。
「では下に行こう。猿が待っている」
そうか。
猿の獣人も仲間に出来そうなんだっけ。
「分かった。でも一旦基地に戻って回復アイテムを持ってから行こう」
「そうじゃな」
彼の死体もついでに基地に運んで生産職の方々にお願いした。
牙やら爪やら毛皮も使えると喜んでいた。
「私も死んでいたらこうなっていたと思うとゾッとするのう」
彼女のその一言は思いのほか私の笑いの線に触れ、笑ってしまった。




