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勇者

 ヤツの拳が遅く感じる。


 あぁこれが走馬燈ってヤツか。

 俺、死ぬのか?


 いや、まだだ。

 俺はまだ、戦える。


 動け!

 動け!

 動け!


 まだ戦えるはずだ!


 俺の心は折れていない!


『勇者の器が進化しました』

『勇者の資格を獲得しました』


 勇者の資格?


『勇者の資格を得たことにより進化が可能になりました』

「進化しますか? YES/NO」


 進化?

 俺も進化できるのか?


 もちろんYESだ。


 俺はまだまだ強くならなくちゃいけないんだ。


 身体が熱くなり、力が溢れ出した。


 身体の枷が外れたように身体が軽くなるのを感じる。


 間延びした時間が更に伸びる。

 もはや時間が止まってしまったかのような錯覚さえ起こす始末だ。


 傷も治った。


 俺は進化したようだ。

 人間から『勇者』へと。


 止まった時間が再び動き出した。


 眼前に迫る拳を俺は片手で止めた。


「なに!?」


 まぁさっきまで死にかけていたのに片手で止まられたらそりゃ驚くよな。


 獣人はすぐさま距離を取ってこん棒を構えた。


 獣の感なのか、死にかけていた俺に対して最大限の警戒をしている。


 俺は戦闘中なのを無視し、スマホを取り出して自分のステータスを確認する。


「……なるほど。勇者ってのは偉大だな」


 進化して今まで持っていたスキルとかレベルが無くなっている。

 けど、これまでよりも遥かに強い。


=======


名前:加納 翔

種族: 勇者

職業 “英雄”

レベル  1

HP    50,000(1,250,000)

MP    25,000(625,000)

攻撃力  10,000(250,000)

守備力  10,000(250,000)

素早さ  10,000(250,000)

魔攻力  10,000(250,000)

魔防力  10,000(250,000)

運    10,000(250,000)


スキルポイント 15,000


称号

・勇者の資格

・英雄願望


スキル

・育む稲穂(レベル1)

・刹那の千戦(ランク1)

・雲外蒼天(ランク1)

・質実剛健(ランク1)

・不惜身命(ランク1)

・一意専心(ランク1)

・勇者のオーラ(ランク1)

・英雄の聖杯


=======


 詳しい説明は見ない。

 スキル自体がどのような性能なのかを教えてくれる。


「どうなっている。さっきまで死にかけていたはずだ」

「死んだんだよ、そして生き返った」


 おそらく、それが進化条件だったんだ。


 俺はあの拳を受ける前に死んだんだ。


 それでも足掻いた。


 死を受け入れずに更に先に手を伸ばしたことで勇者の器を壊して資格を得たんだ。


 今なら分かる。

 あの時諦めていたら死んでいた。


 傷は治ったが、流した血までは元には戻っていない。

 致死量を超えてた出血をして未だ立っていられるのは意思の強さだ。


 死ねない。

 戦うんだ。


 戦って勝つ!


「命を賭してでも戦うんだ! 『勇者のオーラ』、『不惜身命』発動!」

《不惜身命の申請を受理しました。不惜身命を発動します》


 身体から赤いオーラが溢れ出す。

 力を得る為に命を燃やす。


 生きるために、戦うために、勝つために。

 何より生きて明日を迎えるために!


 オーラを剣に!


「めんどくさいとか言ってらんないな。『武装換装』『猿王のオーラ』『狂化』」


 全ての力を剣に込める。


 剣が光りエネルギーの塊となる。


 その光は生命の光。


「一撃必殺『ロンギヌスの槍』!!」

「エクスカリバー!!」


 彼のこん棒が装飾を纏い、槍の形となった。

 その槍に全ての力と全身のバネを使って投擲し、その槍はまさに夜空を流れる流れ星の如く、一瞬で流れる。


 俺はただ一閃し、エネルギーをぶつけるのみ。


「負けて……たまるかーー!!」


 双方の力は絶大で大爆発を起こした。



==========黒井沢 視点


 凄い爆発が聞こえた。


 ダンジョン自体が揺れたほどだ。

 おそらくは翔だろう。


 助けに行きたいが、今は行けそうにない。


「私のダンジョンにようこそ」


 目の前には九本の尻尾を靡かせた狐の獣人と6本の腕がある化け物と対立していたからだ。


翔くん、マジ勇者

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