再戦
2話投稿。
1話目。
芋男爵を落としてから2週間が経過した。
現在の居場所は獣型ダンジョンの前だ。
そして。
「なんだよ。生きてたのか、女」
ダンジョンからライオンの獣人が姿を現している。
「久しぶり。今度はお前を倒す」
新武器の刀を向けてそう宣言する香奈。
闘志が静かに揺れている。
「お前、この前いなかったよな?」
香奈の宣言を無視して俺に視線を向けた獣人は俺に殺気を飛ばしている。
「まぁな」
「っち」
俺の返事が気に入らないのか期限を損ねる獣人。
「お前だな? 手下どもを全員殺したのは」
「そうだな」
「殺す」
地面が爆発するほどの力を込めて俺に突進してくる獣人。
消えたと錯覚する程の速さで俺の首に爪を立てる。
だが、その攻撃は俺に届かない。
「私を無視するな」
「雑魚が」
香奈が刀で獣人の攻撃を防御した。
「こいつは私に任せて」
そう言うと鍔迫り合いを止めてあえて力を抜くことで獣人の態勢を崩すことに成功する。
一瞬で態勢を戻すが、その隙を逃さずに回し蹴りを腹に食い込ませて後方に吹っ飛ばした。
香奈は吹っ飛んだ獣人を追うようにその場から消える速さで走って行った。
「獣人コエ~」
マジ怖かった。
「ビビッて片言しか言えてなかったですよ」
翔が笑って言うが、まさにその通りである。
「まぁ予定通りに事が進んだんだ。結果オーライだ」
「行きますか」
俺たちはあの獣人を香奈に任せて先を急いだ。
獣型のダンジョンを攻め落とすぞ!
――――――――――――香奈視点
あの人たちを無事にダンジョンに向かわせることに成功した。
幹部クラスのコイツをおびき出すだけで先が楽になるのは間違いない。
「いつまで寝てるつもり?」
「……」
横に伏しながら動かない獣人。
まさかこれで倒せる訳がないけど。
「お前、本当に前の女か?」
「そうだよ」
まったくダメージがないように起き上がる彼のタフさは脅威だな。
「一つ聞くが、お前本当に『人間』か?」
「あなたの『人殺し』は効かないよ」
「あの男か」
すごいな。
あの人が鑑定を持っていることも鑑定されたことも一瞬で気が付くなんて。
「俺の『人』に対して優位に立つスキルが効果なくても俺は強いぜ?」
「私は弱いよ。だから負けないよ」
「意味の分からないことを」
彼はすぐさま戦闘モードに切り替わり、オーラを装備に変換した。
「今回はこれも必要だな」
前回は無かった武器を腰に携えている。
剣だ。
かなり大きいから大剣の部類なのだろう。
それが2本。
「前回、手を抜かれていたのは知ってたけど、そこまで手を抜かれていたなんて心外だな」
「今回は前回ほどやさしくできないぜ」
「倒す」
「殺す」
彼は剣を持たずに拳で攻めてきた。
私は瞬歩を使って避ける。
お互いの位置が変わり、距離を取り、空中に避けてを繰り返す。
3分ほどの攻防は私にある確信を持たせてくれた。
彼は今の私よりも強い。
そう思えるほど、私は強くなれた。
彼の動き、殺すという確かな覚悟、気迫。
どれも私には無かったモノだ。
前回の時は彼の強さの底を見る事は出来なかった。
彼は強すぎる。
だからこそ弱点が露わになる。
「どうした! 避けてばっかりじゃ勝てねーぞ!」
避け続ける私にイラだったのか、攻撃を止めて口を開いた。
「あなたは本当に強い。強くなった私よりあなたは強い」
「なら大人しく殺されろ!」
「まともにぶつかったらね」
彼に負けてから彼の動きを思い出さない日は無かった。
ひたすら勝てる道筋を模索した。
だけどいくら考えても勝ち筋は見つからなかった。
そんな日にデュラハンに相談をした。
『勝てない敵に勝つ方法? まぁありとあらゆる手段を用いれば勝てますよ~』
ろくな参考にならなかった。
『香奈の場合は卑怯な手を使えば勝てない敵はいないと思いますよ』
けど、その言葉は何故かしっくりきた。
私は戦いとは正々堂々を意識していた。
剣道をしていたし、家が厳しかったことで卑怯や姑息を無意識に避けていた気がした。
弱いと知りえた今なら、弱者の戦い方をすることはむしろ普通なはずだ。
「私はもう剣に拘らない」
剣を持つ手を変える。
普通の持ち方とは逆だ。
そして、剣を片手で振り上げる。
その姿はまるでやり投げのようだろう。
「お、おい。まさか……」
「秘剣『薄羽蜉蝣』」
私は刀に炎を纏わせて投げた。
私の身体能力は以前よりもかなり向上しており、人間ではなく鬼となっている。
普通の人間が野球の球を160キロで投げれプロになれるが、私はその比ではない。
砲丸投げの球で200キロを超す程の肩を持っている。
刀を投げればどれほどの威力になるだろうか。
魔法で空気抵抗を下げて、出力を上げれば一瞬で音速を超す。
至近距離で投げた刀は彼に向かって飛んだ。
刀はぶつかり爆発する。
魔法を込めて投げたのだ、どこかに当たれば爆発は必至だ。
「この野郎……」
「私、女だよ」
両腕をクロスさせてガードしたようだけど、腕の鎧が砕けている。
火傷や爆発による傷が生々しく刻まれている。
威力は申し分ないな。
「武器を使い潰すとか馬鹿なのか? 丸腰で俺と戦う気なのか?」
ダメージはあるけど、致命傷には程遠いか。
「丸腰?」
私は『武器庫』から次々と刀を取り出す。
「武器の貯蔵は十分だよ」
あの人が決め台詞はこれが良いって言ってたけど、何か有名なセリフなのかな?




