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助ける方法

1日2話投稿です。


2話目になります^^

 緑紅から話を全て聞いた。


 戦闘組の死者は30人、重傷者は50人を超える被害を被った。

 敵の魔物に一矢報えずに逃亡を許した。


「申し訳ございません。私が居ながら香奈を……」

「お前のせいじゃない」


 蟻塚に行く前に香奈の背中が遠く感じて思わず掴んでしまいそうになった。

 あの時、俺が何かしていたらこうはならなかったのか?


 スキルが封印されていた時に翔に連絡を入れておくべきだった。


 今の俺たちに香奈の傷を癒す術はない。


 俺は何も出来ないのか。


「黒井沢さん」


 哲丈の部下の渡辺さんが声をかけてきた。


「何だ」

「香奈さんが目を覚ましました。あなたを呼んでいます」

「……行こう」


 テントに移動し、中に入ると包帯が巻かれた香奈の姿があった。


「香奈……」


 薄く目を開けている香奈の口はゆっくりと言葉を話す。


「ご……め……ん」


 カスカスの声で謝る香奈。


 俺の頬に涙が伝う。


「絶対に助けるから。元に戻すからな!」


 香奈は俺の言葉を聞いて小さく顔を左右に振った。


「も……う。た……す……か……ら……な……い」


 香奈の目から涙が零れ落ちる。


「そんなバカな話があるか!」


 俺は周囲にいる医師に聞いた。


「助かるよな! 香奈の命は助かるよな!」

「……今夜までです」

「嘘……だろ」


 膝から崩れ落ちた。


「ま……さ……よ……し」


 香奈が俺の名前を呼んだ。


 足に力を入れて香奈の表情が見える位置に立つ。


「し……っか……り……し……て。ま……だ……お……わ……って……な……い」

「香奈。死ぬな。頼む……」

「ご……め……ん」


 涙が止まらない。


「さ……い……ご……に……お……ね……が……い……し……て……も……い……い?」

「何だ?」

「キ……ス。し……て……ほ……し……い」

「あぁ」


 俺は香奈にキスをした。

 香奈の唇は火傷でカサカサで血の匂いもした。


「う……れ……し……い」


 香奈はそう言うと目を瞑ってしまった。


「香奈! おい、香奈!!」

「落ち着いてください! 眠っただけです!」

「そ、そうか……」


 俺の足はそのままテントを脱し、外のベンチに腰掛けた。


「あぁセバスチャンたちを呼ばないとな」


 スキルで4人を呼んだ。


「あれ? ここは自衛隊基地」

「ビックリしたです!」

「黒井沢さん!」

「主様、どうなさったのですか!」


 俺は何も喋らない。

 近くにいた緑紅が説明をしてくれた。


 全員が香奈のテントに向かった。


「すべて弱いのが悪い……か。まぬけか俺は」


 レベルが上がって上位職になって、仲間も順調に集まりつつある。

 蟻塚の敵も容易に排除できたことで忘れていた。


「俺たちは弱いんだ」

「大丈夫ですか?」


 そこには蟻の女王がいた。


「いたのか」

「置いて行かれたです」

「すまないな」

「……あなたの親しい人ですか?」

「あぁ。俺の……。俺の光だ」


 あいつのおかげで俺は折れずにここまで来れた。


「助けるすべはないのですか?」

「ない。……訳でもない」


 香奈を救う方法はある。

 あるが、これは使ってはいけない。


「ならそれを使うべきです」

「……」


 母親を殺されたこの子がどんな思いであの部屋にいたのかを考えた。


 俺と同じ痛みかそれ以上の苦痛を受けたはずだ。

 それなのに殺しに来た俺たちと堂々と話していた。


 強い子だ。

 俺なんかよりも。


「出来ない。俺にはそれをすることができない」

「……」


 これ以上何も言う気はないらしい。


 俺の隣に座っているが大人しくしていた。


 しばらくして翔がテントから出てきた。

 珍しく涙を浮かべてどっか行ってしまった。


 デュラハンが付いて行くように後を追った。


 セバスチャンは俺に一礼すると彼も翔を追って行った。


 そして緑紅が俺の前に立った。


「主様。お願いがございます」


 人がいない場所に歩いて移動した。


 香奈が戦った跡地である。

 基地から少し離れているし、周囲は整地され近くに人がいないのが分かる。


「香奈を助けるすべに気が付いていますよね?」

「あぁ」


 そうか。

 コイツも気が付いていたのか。


「お願いがございます」

「ダメだ」

「主様!」

「ダメだと言ってるだろうが!」


 俺は苛立ちを隠さずに緑紅にぶつけた。

 ただの八つ当たりに過ぎない。


 落ち着いて話さなくては。


「お願いします! 今なら香奈の命が助かるのです!」

「……お前が犠牲になるのか?」

「そうです! 私は主様の命を守れませんでした!」

「俺に、お前と香奈を【合成】させる気なんだな」


 香奈を救う方法はあるのだ。


 合成だ。


 あのスキルを使えば香奈を助ける事が出来る。


 それをしたら香奈は香奈ではなくなってしまう。


「お願いします! 私は友を救いたいのです!」

「俺はお前が消えて欲しくないんだよ……」


 もう、仲間が死ぬのは嫌なんだ。


「頼む。……俺に合成を使わせないでくれ」

「香奈が死んでも良いのですか!」


 それも嫌だ。


 彼女は俺の光だ。

 俺のそばで俺の不安を祓う光なんだ。


「私の意思は変わりません。香奈が死ぬ前にお決めください」


 そう言って緑紅は去って行った。

 香奈の元に行ったのだろう。


「どうするんですか?」

「……翔か」


 上空から翔が飛んできた。


 器用なヤツだな。


「香奈を助けべきだと俺は思います」

「最悪は香奈に殺されるかもな」

「その時は俺も一緒に殺されますよ」


 冗談だと思って目を見た。


「本気か?」

「本気です」


 目には確かな覚悟があった。


「俺、勇者なんて職について浮かれていたんですよ。実際、強いですしね」


 その表情は全く嬉しそうではない。

 逆に悲しそうで今にも泣きそうだ。


「主人公的なポジションで俺は絶対に死なないんじゃないかとさえ思ってました。香奈さんも同じように思ってましたよ」

「俺も同様だな」


 強くなった気でいた。


「実際は何も変わってなかった。蟻に捕まった時と同じことが起きて、俺は何も出来なかった!」


 怒りを露わにする翔。


「黒井沢さん。俺……勇者になろうと思います」


 翔の表情から楽観的な雰囲気が消えた。


「この先、折れる事のない剣になると誓います。あなたが死んでも俺以外の誰もいなくなっても、俺は戦うことを止めません」


 翔は基地に向かって歩き出した。


「あなたは俺達を導いてください。その責任は俺も一緒にとりますから。あなたは一人じゃない」


 それだけ言って翔は行ってしまった。


「分かったよ。本当に俺は弱いな」


 年下の高校生に諭されるなんて、情けない。


 俺も誓うよ。

 この先、俺は手段を選ばない。


 全てを使って日本を救う。

 仲間が全員死んでも俺は足掻く、死ぬまで生き続ける。



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