刀を振るう意思
翔からオーラに関して説明を聞いておいてよかった。
オーラは意思で操作することが出来る。
意思を形にする力。
「私はあの人からここを任された。お前は私が倒す!」
オーラを剣に纏わせる。
今の私では彼のように装備にすることは出来ない。
なら武器に纏わせる。
攻撃しか取り柄がないなら更に攻撃に特化する!
「面白い!」
彼の爪と私の剣が衝突する。
拮抗した力は爆発的は衝撃を生み、辺りの地面が吹っ飛んだ。
「私はもう負けないんだー!」
蟻に何もできなくて死を望んだ私はもういない。
明日を生きるんだ!
あの人と一緒にどこまでも!
拮抗していた力をオーラの力でねじ伏せる。
そして彼の爪を斬った。
斬れた!
これなら彼の鎧も斬るはず。
迷わず彼の首に刀を走らせる。
「甘いな……」
「ぐふっ……」
お腹に熱い何かが刺さった。
下を見ると原因が分かった。
「……尻尾」
身体を貫通している。
致命傷だ。
「香奈!!」
緑紅さんの声が聞こえる。
あれ?
おかしいな
時間の感覚が伸びてる気がする。
「オーラの使い方も知らないでここまで戦ったことは脅威だ。確実に殺す」
彼の動きも遅い。
あぁこれが走馬燈ってやつか。
身体が怠い。
力が入らない。
刀を落としてしまった。
「爆拳」
斬った爪の方の拳が真っ赤になった。
咄嗟にオーラを両腕に纏わせた。
腕をクロスさせて防御する。
容赦なく彼の拳は私に振り下ろされ、私の腕を破壊した。
「ギャァアアアアアアアア!!」
熱い!
痛い!
熱い!
痛い!
オーラが無かったら身体も残らなかった。
「香奈!!」
「おっと」
「うぐぅ……」
緑紅さんが間に入り私は追撃を免れた。
「香奈を下がらせて! 絶対に死なせてはいけません!」
「分かってる!」
他の人もいるのか。
もう、目が開かない。
あぁダメだ。
これは死んだ。
最後にあの人に……。
正義さんに合いたかったな……。
―――――――緑紅視点――――――――
まさか香奈が負けるなんて!
「お前、魔物だろ? 何で人間の味方してんだ?」
「あなたには関係のないことです」
勝てない。
対峙した瞬間に悟ってしまった。
私の攻撃は彼には効かない。
怒りで飛び掛かれば一瞬で殺される。
「まぁいいか。……グフッ」
彼の口から血が吐かれた。
「やってくれたな。あの女の刀と砲撃に毒を仕込んでたな?」
効果のない砲撃を何度もしていたのは毒を彼に浴びせる為のものだ。
私たちは解毒薬を飲んでいるので効果は無いが、彼は戦闘中に毒を吸い続けた。
生産組の錬金術師たちが作れる最強の毒を全て使っても今頃になるまで効果を発揮しないなんて化け物ですか、こいつは。
「まぁいい。ここは去ろう」
「……」
正直ありがたい。
けれど信用できないもの事実。
「あの女に免じて1週間は猶予をやる。それだけあれば逃げられるだろう」
「ふ……っ」
ふざけるな!
そう言いたかった。
だけど言葉が出なかった。
「俺は主の部下の一人だ」
踵を返し地上に出てきた穴に足を進めながら話す彼の背中に油断の文字はない。
「主直属の部下は4人」
本当にこのまま帰ってくれるのだろうか。
「その4人の中で俺は……」
彼は一体何を言っているのだろうか。
「一番弱い」
「なに……!?」
あの強さで一番弱いなんて。
「一番強い奴は俺が子供みたいに遊ばれる程だ。くれぐれも下には来るなよ」
そう言って地下に去っていく。
プレッシャーも同時に消えた。
彼なりの優しさなのでしょか。
いや、それよりも香奈の容態が気掛かりです。
「動ける者は負傷した者を運びなさい!」
私の号令で動き出す者達。
プレッシャーが無くなり腰が抜けてしまった者も多い。
私も笑う膝に喝を入れて香奈の元に向かう。
「か、香奈……」
自衛隊基地にいる医療の方や回復魔法や治癒魔法が使える者が揃って香奈の治療を行っていた。
彼女の状態は酷い。
全身に顔や身体に火傷をしているし、両腕が二の腕から無くなってしまっている。
「香奈をよろしくお願いします」
「絶対に死なせません!」
私に出来る事は何もない。
外の警戒をしましょう。
あの魔物が約束を守るとも思えない。
「うっ……。うぅう……」
負けた。
たくさんの仲間が死んだ。
香奈があんな……。
今の回復魔法で腕を元に戻す術はない。
ポーションも同様だ。
香奈の腕は元には戻らない。
私は一体何をしていたんだ!
彼女を死んでも守るのが私の役目だった。
主様から彼女を守って欲しいと命を受けていたのに、不甲斐ない!
『緑紅! 今すぐこっちに来れるか?』
主様から連絡が入った。
「あ、主様……」
『ど、どうしたんだ、緑紅!』
私が泣いているのを知って動揺している。
「わ、私は……主様の命を破ってしまいました。そのせいで香奈が……」
『今すぐそっちに行く!』
目の前に主様が現れた。
「今すぐ香奈の場所に案内しろ」
「はい」
治療中のテントに入る。
「か、香奈」
フラフラとした足取りで香奈に近づく。
「治療中です! 下がって!」
すぐに外に追い出された。
「緑紅。一体何があった」
私は戦いの全てを主様に話した。
次回は蟻塚に戻ります。




