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私は弱いから

 歩くライオンが喋ることに驚いた。


 驚いている最中にライオンの魔物は口を開く。


「で? お前らは()()()()?」


 何位?

 何を言ってるのか分からない。


「お前らはまだ登録もしていないとはな。俺たちは5位だ」

「何の事を言ってるの?」


 意味が分からないので聞いてみた。

 答えるとは思っていないけど何か情報をもらえるかもしれない。


「あぁ? お前らも『救済プログラム』に組み込まれた種族じゃねーのか?」


 分からない。

 救済プログラムは世界が変わってしまった原因であると思ってるけど、それ以外に何かあるの?


「その顔じゃ何も知らずに戦ってるのか?」

「……」


 このライオン強い。

 これだけ話していて瞬きの一つもしないし、呼吸も一定でいつでも攻撃と防御が出来る態勢で構えている。


 打ち込む隙がまるでない。


「まぁいいか。俺の“名前”は【獣王キングバルグ】。主の命でお前らを殺す者だ」


 プレッシャーが強くなった。

 この魔物から暴風が吹いていると錯覚する程の威圧感。


 ただでさえ大きい身体がより大きく見える。


「私は桜屋敷 香奈。お前を倒す者だ」

「やってみろ!」


 魔物が私に接近してきた。


 彼の戦闘スタイルは近距離。

 私との相性は良い。


 彼との間合いはギリギリ外だったが、間合いに入ってくれた。


「居合抜刀・火炎斬」


 甲高い鍔の音がする。


「ギャー!!」


 抜刀し納刀を終えた。

 つまり彼を斬った。


「つまらない演技は止めて」

「何だよ。バレたか」


 彼の腕から赤い血が流れている。

 だが傷が浅い。


 全力の居合と魔法剣の混合技を素のステータスでここまで防がれた。


「見えなかったぜ」

「次は切断する」


 私と彼は息をする間もなく攻防を繰り返す。

 地面は爆発し、空気は振動する。


 20回程の打ち合いを経て再び会話が始まる。


「……何だ。この程度か」


 全身が切り傷塗れで大量に出血をしているのに全然気にしていない。


 私はギリギリの綱渡すで彼の身体に傷を付けているのに、攻めてる気がしない。


「撤回しよう」


 彼は構えを解いた。


「お前は弱いな」


 気を抜いてはいなかった。

 けれど彼の姿を一瞬だけ見失った。


「まず目に頼り過ぎている」


 いつの間に後ろにいた。


「次にスキルに頼り過ぎている」


 瞬歩して間合いを取ったのに私の動きについてくる。


「最後に気迫は足りない」


 拳が私の顔に迫った。


「っぐ!」


 攻撃を当てて相殺する。


 だが、刀と拳で鍔迫り合いになってしまった。


「終わりだな」


 鍔迫り合いのしていない方の腕で私に攻撃を仕掛けた。

 拳ではなく、指を揃えた貫手だ。


 爪の鋭利さで私の身体を貫く気だろう。


 腕を引き私の心臓目掛けて放たれた。


「ッチ!」


 だが彼は私から距離を取った。


「残念」


 彼の頬から血が垂れていた。


「狙撃で俺の目を狙うとはな」

「私たちはチームだから。私が弱いのは分かっているし、あなたが強いのも知っている」


 狙撃をしたのは哲丈さんの部下で副隊長の渡辺さんだ。

 元々狙撃が上手い彼女は狙撃手の職業に付いてその腕を更に上昇させた。


 サイレントのスキルがある彼女は音を消して狙撃が出来る。


 まさか避けるなんて。


「私たちは負けない!」

「一斉射出!」


 陣営から魔法が彼に向かう。


「当たるかよ!」


 地面を踏ん張る彼の足元が一瞬で柔らかくなる。

 緑紅さんの魔法だ。


「クッソ!!」


 様々な魔法が叩き込まれる。


「砲撃準備!」


 魔法のインターバルが始まると次は砲撃が始まる。


「撃て!」


 最初に撃った砲撃だが、身体に傷があれば食らうダメージに変化があるはず。


「魔法部隊は魔法の準備! 砲撃部隊も補充を急げ! 歩兵部隊! 香奈の盾になれ!」


 哲丈さんの号令と共に戦闘組が陣営から出てきた。


 装備は防御よりで攻撃よりも防御を優先してある。

 私は彼らを生きる盾にして戦わなくてはいけない。


 砲撃の煙が晴れると血だらけの姿で立つ彼の姿があった。


「雑魚がいくらいようと無駄だと知れ! 獣王のオーラ発動!」


 オーラ!?


 翔が使えるようになったあのオーラ!?


「武装装着!」


 彼の身体から溢れたオーラは身体に巻き付き、物体となった。

 神々しい光を放つ装備となり、戦士と呼ぶにふさわしい姿となった。


「撃てー!」


 止まっている敵を攻撃しない者はいない。

 砲撃が彼を包んだ。


 煙が晴れると無傷だった。

 鎧には焦げの一つもない。


「無駄だ。本気の俺にそんな玩具でダメージなどない」

「撃てー!」


 ダメージが無いとは分かっているが、哲丈さんの砲撃は止まない。


 数度の砲撃を完全に耐えた彼はようやく動き出した。


「断罪の爪・処罰の牙!」


 動きがまったく違う!


「みんな逃げて!」

「逃がすと思うか?」


 私がみんなを守らないとみんな殺される!


 数秒で5人が殺された。


「この!」


 瞬歩を使って彼の近くに移動する。


「かかったな?」

「しまった!?」


 拳が眼前に迫っていた。


「グハァ!?」


 戦闘組の一人が私を庇った。

 頭部を破壊された彼は即死だ。


「香奈! お前の仕事を全うしろ!」


 仲間の死に思考が停止する寸前に哲丈さんから檄を受けた。


 私の隙を見逃す彼ではない。

 仲間が身を挺して私を守っている。


 そうだ。

 私はあの人から任されたんだ。


「ここは私が守るんだ!!」


 心の奥から溢れた何かが身体をめぐって外に放出される。


『剣聖の器が満たされました』

『オーラを獲得しました』


 私の身体からオーラが溢れ出した。 

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