謎のプレッシャー
6月から土日2話投稿します。
時間は9時と12時です。
夜明と共にプレッシャーを感じて目を覚ました。
「香奈さんも感じますか?」
「何、このプレッシャーは……」
気持ち悪い。
寒気と嫌悪が混ざって身体に巻き付いてくる。
「おそらくは外の獣が湧いてくるダンジョンの中からですね」
それしか考えらてない。
少しずつプレッシャーが大きく、強くなっている。
確実にこっちに近づいて来ている。
「結構強い敵が来てる」
「主様もいないのに……」
仲間に危機が迫った場合はどんな状況であれ連絡を優先しろとあの人に言われている。
すぐに連絡をするべきだ。
「……もしもし?」
おかしい。
返事がない。
スキルによる連絡を使用しているのは確かだけど、あの人から返事がない。
出れない状況にある?
それなら折り返す返事ぐらいしても良いのに。
「あの人が出ない。もしかしてあの人の身に何かあったんじゃ……」
どうしよう。
私が守ると言ったのにあの人に何かあったら私は立ち直れない。
ここを任されているけど、私が命令をしても良いの?
このプレッシャーを放つ相手と戦う?
無理だ。
死んじゃう。
もうダメだ。
あの人が傍にいないと私は刀を振れない。
あの人の笑顔がないと私は明日を望めない。
「た、助けに……行かなくちゃ」
「香奈!!」
「はっ!?」
緑紅さんに大きな声で名前を呼ばれて抱きしめられた。
「大丈夫です。主様は生きています」
抱きしめられて気が付いた。
私の身体は震えていた。
体温も下がっているし、涙も溢れている。
「大丈夫、大丈夫です」
「はぁはぁ……。はぁはぁ……」
荒れていた呼吸も少しずつ収まりつつある。
大丈夫、そう大丈夫だ。
あの人は生きている。
あっちにはあのデュラハンさんとセバスさんが付いて行ってる。
あの二人が居てあの人が死ぬわけがない。
「もう大丈夫そうですね」
「ありがとう、緑紅さん」
「落ち着てよかったです。あれでパニックでも起こされて暴れたら殴って止めなければなりませんでしたよ」
笑顔で言っているけど、この人なら本気で躊躇なく殴って止めるだろ。
良かった暴れなくて。
「それでこれからどうしますか?」
「迎え撃つ」
あの人のスキルで学校に移動が可能だけど、それはあの人のスキルであって私たちには使用できない。
ヘリでの移動は人員が多すぎて無理。
徒歩で移動は自殺行為にしかならない。
学校に向かう途中で別の魔物に合わないはずが無いし、動物の魔物に回り込まれたら非戦闘員を庇いながらの戦闘となる。
その戦闘中にこのプレッシャーを放つ魔物が来たら庇いながらの戦闘は不可能。
やっぱり迎え撃つしか活路はない。
「それしかありませんね」
「早く準備をしよう」
「そうですね」
あの人も言ってたけど、奴らは待ってはくれないのだから。
着替えて作戦本部に足を運ぶ。
すでに多くの人がいた。
「来たか」
あの人に隊長さんと呼ばれていた哲丈さんが中心となり話をしていたようだ。
「このプレッシャーを放っている魔物は危険」
「分かっている。ここに集まってる者に甘い考えをした奴はいない」
確かに皆の表情に余裕は感じられない。
「黒井沢さんに連絡が取れないのは知ってるか?」
「うん」
この人も連絡したようだ。
私に折り返しがないのにこの人にあるはずもない。
「君はどうするべきだと思う?」
「迎え撃つしかない」
「やはりそうだよな……」
この期に及んで何を悩む必要があるというのだろうか。
「あの人はあなたに指揮権を預けている。私はここの人たちを守るように任された。命令には従うけど決断できないようなら私が変わる」
「……すまない。俺もまだまだ意識を前に向けていなかったな」
意思が定まった目をしている。
あの人がいつもする目だ。
あの人の方がカッコいいと思う。
「全戦闘員で迎え撃つ! 準備しろ!」
「「「はい!!」」」
絶対に死人が出るだろう。
皆分かっているけどそれぞれの大切な何かの為に恐怖に飲まれないように耐えている。
耐えて死地に向かう。
「私たちも行こう、緑紅さん」
「えぇ」
武器や防具の点検をして軽い食事をした後、部隊の編制の通達があった。
「やっぱり私が先頭か」
「妥当な判断ですね」
哲丈さんが悩んでいたのは迎え撃つことにしたら私を先頭に出さなくてはいけないからだ。
自分よりも年下の女性に死んで来いとは言えなかったのだろう。
だけどこれで良い。
私はここの皆を任されているのだから。
各自が準備を進める中、魔物の動きに変化があった。
ダンジョンから攻めてくる数が減少している。
プレッシャーが徐々に強まり、数時間後には魔物の姿は居なくなった。
そして迎え撃つ準備を始め、敵が姿を現したのは太陽が頭上に昇ったころだった。
地面の爆発と共にそいつの姿を確認する。
「ライオンの獣人」
「身長は3メートルはありそうですね。牙に爪に隆起した筋肉とか化け物ですね」
一言で表すならデカいライオン。
普通のライオンよりも凶悪で獰猛そうな、の言葉も付けくわえるけど。
「砲撃準備!」
哲丈さんが号令を掛ける。
生産職の人たちが作っていた大砲。
名前を聞いたけど忘れてしまったけど、キラキラした目で説明していた。
あの人もロマンがなんちゃらって言ってたけど、良く分からなかった。
「撃てー!!」
こちらにゆっくりと二足歩行で向かっているライオンの魔物に砲撃が集中する。
数十発が直撃し煙で見えなくなる。
「これでダメージがあれば良いのだが……」
流石に哲丈さんも敵がこれで死ぬとは思っていないらしい。
煙が晴れると体毛が少しだけ焦げたライオンが立っていた。
両腕をクロスさせて顔面を守っているが、守る必要も無いのだろう。
「改造された武器であの程度のダメージしか入らないとは」
確か通常の2~3倍の威力になったとか言っていた気がする。
通常武器では無意味になりそうだ。
「私が出る」
「……頼む」
哲丈さんの目には『死ぬなよ』と言っている。
「大丈夫。そう、大丈夫」
そう言ってライオンの魔物に近づく。
本来ならいろいろな武器で弱らしてから私が出る手筈だった。
だけどこの魔物に兵器は相性が悪い。
複数ある手筈の兵器を無駄に消耗させない方を選んだ。
敵は目の前だけではないのだから。
居合の間合いまで近くによる。
あと少しで間合いに入る寸前に驚くことが起きた。
「お前、強そうだな」
ライオンの魔物が喋ったのだ。
「喋れるのか」
「もっと驚いても良いぜ?」
とてもビックリした。
だけど魔物が喋るのはゴブリンや緑紅さんとかと一緒。
彼らを知らなかったら隙を作っていたかもしれない。
「で? お前らは今何位だ?」
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