マルテン商会の息子トマスの手記
きょうから、聖堂の学校に通うことになった。
父さんは、商売をするなら読み書きと計算ができなくてはだめだと言った。
ぼくは計算ならもうできる。店のおつりをまちがえたこともない。
でも、字はもっときれいに書きなさいと言われた。
先生は、毎日、学校で習ったことを帳面に書くようにと言った。
だから書く。
きょうは神学の授業があった。
先生は、この世界をおつくりになったのは唯一神さまだと教えてくれた。
唯一というのは、たったひとつという意味だそうだ。
でも、神さまはたくさんいる。
公爵さまたちには、それぞれご先祖の神さまがいるし、その神さまから魔法をもらっている。
父さんも前に、神胤の魔法はふつうの魔法とはちがうのだと言っていた。
だから、神さまがたくさんいるのは本当だと思う。
先生に聞いてみた。
先生は、唯一神さまだけが本当の神さまで、ほかの神さまは本当の神さまではないのだと言った。
よくわからなかった。
本当の神さまでないのに、どうして神さまと呼ぶのだろう。
それに、本当の神さまでなくても魔法をくれるのなら、本当の神さまと何がちがうのだろう。
もう一度聞こうとしたら、先生に、まずは教えられたことをきちんと覚えなさいと言われた。
だから、きょう習ったことを書く。
*この世界をおつくりになったのは、唯一神さまである。
これは覚えた。
でも、まだよくわからない。
あした父さんにも聞いてみようと思う。
(聖堂附属学校の練習帳より)




