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『勇者ですが、勇気しかありません』  作者: asnt2026


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第四十話 魔王を殺せば勇者になれる

 ルシアが教えた場所は、《聖源墓地》と呼ばれる地下遺跡だった。


 神聖魔法が体系化される以前、治療術を研究していた者たちの施設跡。


 教会の正式な地図からは、三百年以上前に削除されている。


「何で聖女がそんな場所知ってるの?」


 ノアが聞いた。


「知らない方がいい情報まで与えられるのが、適合率百%なのかもしれません」


 エルナ。


「便利ね」


 ミレイア。


「便利だから怖いんでしょう」


 聖源墓地までは二日。


 しかし。


 その途中。


 レオンの能力表示に。


 異変。


《職業解除条件進行――2/3》


 その下。


 これまで。


 見えなかった項目。


《第三条件――解析中》


「解析中?」


 レオン。


 歩きながら。


 何度も見る。


「今までそんなの出てなかったよね」


 ノア。


「なかった」


「そろそろ分かるのかな」


「分からない」


「またそれ」


「最近これ言うと自律率上がるかなって」


「狙って言ったら駄目じゃない?」


「確かに」


 夜。


 山中。


 野営。


 レオンは。


 一人。


 焚き火。


 見ていた。


 ミレイア。


 隣。


 座る。


「眠れない?」


「うん」


「第三条件?」


「それも」


「他は?」


「六将」


 ミレイア。


 少し。


 黙る。


「強かった」


「うん」


「みんな」


「うん」


「昔は俺たちみたいだった」


「そうね」


「それが」


 レオン。


 炎。


 見る。


「怖い」


 ミレイア。


 答えない。


「俺たちも」


 何か。


 きっかけ。


 一つ。


「誰かが死んだり」


「守れなかったり」


「どうしても力が必要になったら」


 完成。


 選ぶかもしれない。


「私は」


 ミレイア。


「選ばない」


 レオン。


 見る。


「今はね」


 ミレイア。


 続ける。


「でも未来の私が絶対に選ばないなんて、言えない」


「……そっか」


「だから」


 彼女。


 杖。


 膝。


「今のうちに」


「何を」


「忘れないようにする」


「何を?」


「私が何で魔法を好きなのか」


 噛んでも。


 失敗しても。


 魔法。


 面白かった。


「レオンは?」


「俺?」


「何で勇者やってるの」


「選ばれたから」


「それ以外」


 レオン。


 答え。


 すぐ出ない。


「……誰かが」


 一度。


 考える。


「怖くて動けない時に」


 自分も。


 怖い。


「一人くらい」


 立つ。


「先に行く奴がいた方がいいかなって」


「それ?」


「多分」


「弱いのに?」


「うるさい」


 ミレイア。


 笑う。


「忘れないでね」


「お前も」


 二人。


 焚き火。


 見る。


 翌朝。


 事件。


 起きる。


 小さな村。


 襲撃。


 魔王軍ではない。


 巨大な魔物。


 黒角竜。


 村。


 炎。


「助けて!」


 人。


 逃げる。


 レオンたち。


 走る。


「ノア!」


「黒角竜は興奮状態! 多分子供とはぐれてる!」


「追い払える?」


「今は無理!」


 竜。


 炎。


 吐く。


「結界!」


 エルナ。


 光。


 人々。


 守る。


 ガルド。


 倒れた柱。


 支える。


「早く!」


 村人。


 逃がす。


 シオン。


 家。


 中。


 子供。


 救出。


 ポキッ。


「こっち!」


 音。


 暗闇。


 目印。


 ミレイア。


 拒風。


 竜の顔。


 逸らす。


「レオン!」


 竜。


 目の前。


 レオン。


 剣。


 握る。


 倒せる?


 無理。


 でも。


 逃げれば。


 後ろ。


 村。


 人。


「くそ」


 足。


 震える。


「怖い」


 それでも。


 立つ。


 黒角竜。


 突進。


 その時。


 遠く。


 巨大な黒い光。


 竜。


 吹き飛ぶ。


「何?」


 ミレイア。


 空。


 一人。


 浮かぶ。


 ゼルディア。


「魔王!」


 村人。


 悲鳴。


 ゼルディア。


 地上。


 降りる。


「久しぶりだな」


「何しに来た!」


 レオン。


「竜を止めに」


「何で」


「理由が必要か?」


「あなた魔王だろ!」


「お前、まだそんなこと言うのか」


「いや、そうだけど!」


 黒角竜。


 立つ。


 ゼルディア。


 手。


 向ける。


「殺すな!」


 ノア。


 叫ぶ。


 ゼルディア。


 止まる。


「子供探してるだけ!」


「分かった」


 黒い魔力。


 変化。


 鎖。


 竜。


 拘束。


「……言うこと聞いた」


 ノア。


「何だ」


 ゼルディア。


「魔王なのに」


「俺にも話くらい聞く知性はある」


「ちょっと見直した」


「そうか」


 六人。


 村人を避難。


 ノア。


 竜の子。


 探す。


 やがて。


 森。


 一匹。


 幼竜。


 見つかる。


 親。


 解放。


 二匹。


 森へ。


 去る。


 被害。


 建物。


 多い。


 しかし。


 死者。


 ゼロ。


「終わった」


 レオン。


 地面。


 座る。


 ゼルディア。


 隣。


 立つ。


「相変わらず弱いな」


「助けてもらった直後だけど腹立つ」


「事実だ」


「ヴァレスも同じこと言ってた」


「教育が行き届いている」


「そこ誇るなよ」


 その時。


 レオン。


 能力表示。


 光。


《職業解除条件――第三条件解析完了》


「出た」


 レオン。


 全員。


 見る。


 ゼルディア。


 顔。


 変わる。


「待て」


「何?」


「見るな」


「何で?」


「レオン!」


 遅い。


 表示。


《勇者職業解除・第三条件》


 文字。


 浮かぶ。


《魔王ゼルディアを殺害する》


 静寂。


 レオン。


 意味。


 理解。


 できない。


「……え?」


 ミレイア。


「魔王を殺せば」


「勇者をやめられる?」


 ノア。


「おかしくない?」


 ガルド。


 顔。


 険しい。


「勇者として最大の役割を果たした結果」


 エルナ。


「勇者を解除する?」


 ゼルディア。


 目。


 表示。


 睨む。


「違う」


「何が?」


 レオン。


「それは解除条件じゃない」


「でも」


「罠だ」


 ゼルディア。


 声。


 低い。


「カイルだった頃」


 同じ。


 表示。


 見た。


「俺にも出た」


「第三条件?」


「ああ」


「何だった?」


 ゼルディア。


 少し。


 目を閉じる。


「当時の魔王を殺せ」


 レオン。


 胸。


 冷える。


「殺した?」


「ああ」


「その後」


 ゼルディア。


 苦い笑い。


「勇者を解除できると思った」


 結果。


 逆。


「魔王を殺した瞬間」


 世界。


 次。


 役割。


 必要。


 魔王。


 不在。


「勇者だった俺に」


 一言。


「《魔王》が上書きされた」


 全員。


 息。


 止まる。


「じゃあ」


 ミレイア。


「レオンがゼルディアを殺したら」


「同じことが起きる?」


「可能性は高い」


 ゼルディア。


「勇者として完成し」


 役割。


 固定。


 そして。


 次。


 空いた場所。


「魔王になるかもしれない」


 レオン。


 表示を見る。


《第三条件》


《魔王ゼルディアを殺害する》


 解除条件。


 そう。


 書いている。


 なのに。


 解除させるためではない。


「世界が」


 レオン。


「嘘ついてる?」


 ゼルディア。


「世界は嘘をつかない」


「じゃあ」


「定義を変える」


「どういう意味?」


「勇者を解除する」


 確かに。


 勇者ではなくなる。


「代わりに魔王になる」


 言葉。


 正しい。


 でも。


 意味。


 騙している。


「最悪」


 ノア。


「詐欺じゃん」


「世界規模の」


 ミレイア。


 レオン。


 しばらく。


 黙る。


 その後。


 笑った。


「何がおかしい」


 ゼルディア。


「いや」


 レオン。


 剣。


 腰。


「ちょっと安心した」


「何が」


「条件分かったから」


「殺す気か」


「まだ決めてない」


 ゼルディア。


 呆れた顔。


「ここまで説明して?」


「あなたの言うことをそのまま信じるなって」


 レオン。


「あなた自身が言っただろ」


「…………」


「だから調べる」


「何を」


「本当に殺したら魔王になるのか」


「俺が証拠だ」


「一人だけ」


「十分だろう」


「俺たち」


 レオン。


 五人を見る。


「普通じゃないらしいから」


 自律率。


 不適合。


 世界の予測から。


 外れている。


「別の方法があるかもしれない」


 ゼルディア。


 長い間。


 レオンを見る。


 そして。


 小さく。


 笑う。


「本当に」


「何」


「昔の俺と違うな」


「良い意味?」


「今のところは」


 レオンの能力表示。


《職業解除条件進行――2/3》


 その下。


《第三条件――未達成》


 さらに。


 今まで見たことのない。


 小さな文字。


 一瞬だけ。


 浮かぶ。


《代替条件――検索不可》


「待って」


 ミレイア。


「今何か」


「俺も見た」


 レオン。


「代替条件?」


 表示。


 もう。


 消えている。


 ゼルディアの表情。


 変わる。


「そんな表示」


「何?」


「俺の時にはなかった」


 六人。


 顔。


 見合わせる。


 正解は。


 まだない。


 魔王を殺せば。


 勇者として完成する。


 殺さなければ。


 職業解除条件は満たせない。


 世界が用意した。


 二つの道。


 でも。


 そのどちらでもない道が。


 一瞬だけ。


 表示された。


「探そう」


 レオンが言った。


「代替条件を?」


 ミレイア。


「ああ」


「どこにあるか分からないよ」


「うん」


「存在するかも分からない」


「うん」


「見つからないかもしれない」


「怖いな」


「じゃあ?」


 レオン。


 少し。


 笑う。


「だから行く」


 ミレイアも。


 笑った。


「それ」


「何」


「ちょっと勇者っぽい」


《勇者適合率――18%》


 点滅。


 レオン。


 空を見る。


「今のなし!」


 六人の笑い声が。


 焼け残った村に。


 久しぶりに響いた。


 そして。


 世界のさらに深い場所では。


 一つの記録が。


 静かに更新されていた。


《勇者個体》


《第三条件の欺瞞性を認識》


《代替条件探索行動を確認》


《予測不能率上昇》


 続いて。


 新しい命令。


《代替経路を封鎖》


《対象六名の分離を優先》


 世界は。


 理解し始めていた。


 六人をまとめて相手にしてはいけない。


 一人ずつなら。


 迷わせられる。


 誘惑できる。


 完成させられる。


 だから次に狙われるのは。


 六人の中で。


 最も強くなることを望んでいる者だった。

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