↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『勇者ですが、勇気しかありません』  作者: asnt2026


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
38/64

第三十八話 忍者は見つかってからが強い

「次は俺か」


 朝食の途中、シオンが突然言った。


「何が?」


 レオンがパンを齧りながら聞く。


「ヴァレスはお前。セレネスはミレイア。バルガはガルド。リュネはノア」


「ということは」


 ノアがニヤリとする。


「影王!」


「来るなら来い」


 シオンは妙に堂々としていた。


 ポキッ。


「今のうち鳴らしとく?」


「鳴らし貯めはできない」


「残念」


 その日の昼。


 シオンが消えた。


 文字通り。


「シオン?」


 レオンが振り返った時には、いなかった。


「さっきまで後ろにいたよね?」


「いた」


 ミレイア。


「音は?」


 ノア。


「……そういえば聞いてない」


 全員の表情が変わる。


「まさか」


 森。


 静か。


 レオンが叫ぶ。


「シオン!」


 返事。


 ない。


 いつもなら。


 どこかで。


 ポキッ。


 くらい鳴りそうなのに。


 何も。


 聞こえない。


「逆に怖い」


 ノア。


「探すぞ」


 ガルド。


 その頃。


 シオンは。


 目を覚ました。


「…………」


 暗い。


 両手。


 拘束されている。


「起きたか」


 声。


 目の前。


 男。


 黒い装束。


 影王クロウ。


 気配。


 ない。


「誘拐か」


 シオン。


「忍者相手に真正面から連れ去るのもどうかと思うが」


「お前は気づかなかった」


「ああ」


「それが差だ」


「認める」


 クロウ。


 少し。


 意外そう。


「悔しくないのか」


「悔しい」


「なら適合を受け入れろ」


「嫌だ」


「即答か」


「最近うちのパーティーで流行っている」


 クロウは無表情。


「忍びが感情を表へ出すな」


「お前、面白くないと言われないか」


「必要ない」


「友達は?」


「必要ない」


「趣味」


「必要ない」


「好きな食べ物」


「任務に関係ない」


「人生楽しいか?」


 クロウ。


 止まる。


「質問の意図が不明」


「だろうな」


 シオンは拘束されたまま。


 少し。


 笑った。


「昔の俺なら」


「何だ」


「お前を見たら死ぬほど羨ましがった」


 音。


 鳴らない。


 存在。


 消せる。


 完璧。


「俺は任務に失敗するたび」


 関節。


 鳴る。


 敵。


 気づく。


 仲間。


 笑う。


「何度、自分の身体を恨んだか分からない」


「なら」


「でも」


 シオン。


 クロウを見る。


「最近分かった」


「何を」


「俺」


 一度。


 笑う。


「見つかってから結構強い」


 クロウの眉。


 わずかに動く。


「意味不明」


「だろうな」


 シオン。


 手首。


 動かす。


 ポキッ。


 音。


 クロウ。


 反射的に。


 音のした方向を見る。


 その瞬間。


 シオンの指から。


 細い針。


 飛ぶ。


 拘束具の留め具。


 外れる。


「!」


「お前」


 シオン。


 立ち上がる。


「音に反応する癖がある」


 短剣。


 抜く。


「俺を捕まえてからずっと」


「わざと鳴らしていたのか」


「半分」


「残りは?」


「勝手に鳴った」


「…………」


「便利だろ」


 クロウ。


 初めて。


 少しだけ。


 苛立った顔。


 シオンが踏み込む。


 正面。


「忍びが正面から来るか」


「俺は来る」


 刃。


 交差。


 クロウ。


 消える。


 シオン。


 追わない。


「右」


 ポキッ。


 音。


 わざと。


 クロウが。


 無意識に。


 右へ反応。


 本体は。


 左。


「そこ」


 シオン。


 蹴る。


 クロウ。


 腕で防ぐ。


 初めて。


 数歩。


 下がる。


「なぜ分かった」


「お前」


 シオン。


「完璧すぎるんだよ」


 音。


 消す。


 気配。


 消す。


 視線。


 消す。


「だから予想できる」


「…………」


「絶対に見つからない位置へ移動する」


 シオン。


 笑う。


「俺は逆だ」


 ポキッ。


「どこにいても見つかる」


「誇るな」


「最近ちょっと誇ってる」


 能力表示。


《忍者適合率――18%》


《17%》


《職業解除条件進行――1/3》


「出た」


 シオン。


「何だ」


 クロウ。


「こっちの話」


 その時。


 外。


「シオーン!」


 レオンの声。


「どこだー!」


「大声で呼ぶな!」


 シオンが怒鳴る。


「いた!」


「返事するのか」


 クロウ。


「仲間が馬鹿だからな」


 壁。


 向こう。


「聞こえてるぞ!」


 レオン。


「だったら早く来い!」


「入口どこ!?」


「知らん!」


「忍者!」


「誘拐されたんだよ!」


 クロウは。


 しばらく。


 シオンを見る。


 そして。


 短剣。


 収めた。


「帰れ」


「いいのか」


「今日は確認だけだ」


「そうか」


 シオン。


 出口。


 向かう。


 途中。


 振り返る。


「クロウ」


「何だ」


「お前」


 一言。


「見つけてほしいって思ったことないか?」


 クロウ。


 完全に。


 動きを止めた。


「意味不明」


「ならいい」


 シオン。


 去る。


 一人残されたクロウ。


 静寂。


 完璧。


 誰にも見つからない。


 誰にも気づかれない。


 それこそ。


 影王。


「見つけて」


 口。


 わずかに。


 動いた。


「……ほしい?」


 自分の声。


 まるで。


 知らない人間のものに聞こえた。


《自律率――0%》


 数字。


 一瞬だけ。


《1%》


 そして。


 すぐに。


 消えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。