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『勇者ですが、勇気しかありません』  作者: asnt2026


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第三十四話 勇者がいなくても進める

「次、右」


 レオンが言った。


「左だ」


 ガルド。


「地図だと右」


「山の傾斜を見ろ」


「じゃあどっち?」


「左」


「でも勇者の勘は右」


「今まで何回当たった?」


「……二割」


「左だ」


「はい」


 六人は。


 西へ向かっていた。


 目的。


 特にない。


「これ大丈夫?」


 ノア。


「何が」


「旅の目的ないよ?」


「一応ある」


 レオン。


「職業解除条件を調べる」


「どこで?」


「知らない」


「目的地ないじゃん」


「それもそうだな」


 ガルド。


 額。


 押さえる。


「少なくとも人間領の大都市は避けるべきだ」


「魔王領も」


 ミレイア。


「ゼルディアに近づきすぎる」


「じゃあ」


 エルナ。


「国境沿いを移動しながら情報を集める」


「それが現実的」


 シオン。


「決まり」


 レオン。


「待て」


 ガルド。


「お前今何も決めてない」


「勇者に頼らない訓練」


「言い訳するな」


 でも。


 レオンは。


 少し。


 意識していた。


 今まで。


 何かあるたび。


 皆。


 最後。


 自分を見る。


 勇者だから。


 決める。


 それが。


 普通。


 でも。


「ねえ」


 レオン。


「何」


 ミレイア。


「次の宿営地」


「川沿い」


「理由は?」


「水があるから」


「いい」


「何が」


「任せる」


「気持ち悪い」


「何で!」


 ノア。


 笑う。


「レオン、リーダーやめるの?」


「やめない」


「どっち?」


「リーダーではいる」


 少し。


 考える。


「でも全部決める必要ない」


「勇者だから?」


「勇者だからって」


 一言。


「全部決めるのは違うと思う」


 表示。


《職業解除条件進行――1/3》


「え」


 レオン。


 止まる。


「出た」


「何が?」


 全員。


 集まる。


《勇者》


《職業解除条件進行――1/3》


「何した?」


 ミレイア。


「何も」


「今の会話」


 エルナ。


「リーダーとしての役割と勇者を切り離した?」


 ガルド。


「勇者が決めるべきという職能から外れた」


「それだけ?」


 レオン。


「簡単すぎない?」


「多分」


 エルナ。


「一回理解するだけでは駄目でしょう」


「あと二つ」


 ノア。


「何する?」


「分からない」


「そればっかり」


「分かんないものは分かんない」


 その日の夕方。


 問題。


 村。


 小さい。


 だが。


 入れない。


 門。


 老人。


「勇者様!」


 レオンを見る。


 駆け寄る。


「助けてください!」


 レオン。


 反射。


「何が――」


 止まる。


 適合率。


 でも。


 それ以上に。


 何か。


 違和感。


「どうしたんです?」


 老人。


「村の北に魔物が!」


「種類は?」


 ノア。


「大蜘蛛」


「数は?」


 ガルド。


「二十ほど」


「被害?」


 エルナ。


「まだありません!」


 六人。


 止まる。


「まだ?」


 レオン。


「はい」


「襲われてない?」


「森にいるだけです!」


 ノア。


 眉。


 寄せる。


「じゃあ何で倒してほしいの?」


「怖いからです!」


 老人。


 当然のように。


「魔物は危険です!」


 レオン。


 以前なら。


 勇者として。


 すぐ向かった。


 でも。


「ノア」


「うん」


「見てきて」


「一人で?」


「シオン」


「行く」


 ポキッ。


「二人で」


「お前が一緒だと見つかる」


「黙れ」


 一時間後。


 二人。


 戻る。


「どうだった?」


 ノア。


「卵守ってる」


「やっぱり」


「森の奥」


「村へ来る気配?」


「ない」


 老人。


「しかし魔物です!」


「だから?」


 ノア。


 老人。


「危険でしょう!」


「人間も危険だよ」


「何を」


「私たち今、人間にめちゃくちゃ追われてる」


「確かに」


 レオン。


「お前は黙って」


 ノア。


 地図。


「この森を通らなければ問題ない」


「でも木材を取りに」


「二週間だけ避けて」


「そんな」


「卵が孵ったら移動する」


「本当に?」


「大蜘蛛の習性」


 老人。


 不満。


「勇者様」


 レオンを見る。


「倒していただけませんか」


 ここ。


 来る。


 勇者。


 期待。


「俺が決めることじゃないです」


「え?」


「この森をどうするかは」


 レオン。


 村人。


「あなたたちと」


 ノア。


「そこに住んでる魔物の問題だから」


「魔物と話せと?」


「話せなくても」


 レオン。


「考えることはできる」


 老人。


 納得していない。


「勇者なのに」


 一言。


「魔物を倒さないのですか」


 胸。


 少し。


 痛む。


 期待を。


 裏切った。


 でも。


「はい」


 レオン。


「倒しません」


《勇者適合率――18%》


《17%》


《職業解除条件進行――2/3》


 表示。


 光る。


「二つ目」


 ミレイア。


 レオン。


 苦笑。


「勇者の仕事を断ったから?」


「おそらく」


 エルナ。


「ただ」


「何」


「魔物だから倒す、という勇者の役割を拒否した」


 ガルド。


「なら最後は」


「何だろ」


 ノア。


「魔王を倒さない?」


 全員。


 黙る。


 その言葉。


 重い。


 レオン。


 遠く。


 北。


 見る。


 魔王ゼルディア。


「……分からない」


 でも。


 もし。


 職業解除条件の最後が。


 勇者として最大の役割。


 魔王討伐を拒むことなら。


 それは。


 単なる数値の話では済まない。


「先に進もう」


 レオン。


 その夜。


 宿営地。


 誰も。


 その話題を。


 もう一度出さなかった。


 ただ。


 レオンだけは。


 眠れなかった。


《職業解除条件進行――2/3》


 あと一つ。


 それを達成した時。


 自分は。


 勇者ではなくなるのか。


 そして。


 勇者でなくなった自分に。


 何が残るのか。


 怖かった。


 その怖さに。


 少し。


 安心した。

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