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『勇者ですが、勇気しかありません』  作者: asnt2026


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第三話 ゴブリン三匹は強敵です

勇者パーティー結成三日目。


 レオンたちは最初の依頼を受けた。


 街道沿いに現れたゴブリンの討伐。


 数は三匹。


「ちょうどいいじゃない」


 ミレイアが言った。


「私たちの初戦として」


 レオンもそう思った。


 勇者パーティーなのだから、いきなりドラゴンとはいかなくても、それなりの敵と戦うのだろうと覚悟していた。


 ゴブリン三匹。


 いくら自分たちでも大丈夫だろう。


 一時間後。


「全然大丈夫じゃない!」


 レオンは叫びながら木の陰へ飛び込んだ。


 棍棒が頭上を通過する。


「ミレイア! 魔法!」


「やってる!」


 ミレイアが杖を構えた。


「爆ぜよ、紅蓮の――ぐれ、ぐりぇ……」


「来てる!」


「分かってる!」


「ゴブリン来てるって!」


「急かすから余計言えないの!」


 一匹がミレイアへ突進する。


「ガルド!」


「任せろ」


 ガルドが大剣へ手をかける。


 抜こうとする。


 動かない。


「…………」


「何してる!」


「予想より鞘に食い込んでいる」


「飾りって言ってたじゃん!」


 ガルドは大剣を諦め、腰の小剣を抜いた。


 ゴブリンが棍棒を振り下ろす。


 その瞬間。


「右」


 ガルドが半歩ずれた。


 棍棒が空を切る。


「次は左」


 また避ける。


「すごい!」


「動きは読める」


「じゃあ倒して!」


「それは別問題だ」


 小剣を振る。


 ゴブリンの皮膚で弾かれた。


「硬い」


「お前が弱いんだよ!」


 別の一匹がノアへ向かった。


 ノアが両手を広げる。


「待って!」


 ゴブリンが止まる。


「ゴブリンは本来、臆病で群れを大切にする魔物なの。争う必要なんてない!」


「グギャアア!」


「私は敵じゃないよ!」


「グギャ!」


「ほら、怖くないから!」


「ギャアアアアア!」


 殺意が増した。


「なんで!?」


「嫌われるって言ってたよね!」


 最後の一匹が森へ逃げた。


「シオン!」


「任せろ」


 シオンの姿が消える。


「おお!」


 レオンは初めて感心した。


 完全に見失った。


 茂みの奥。


 ポキッ。


 ゴブリンが振り返った。


「ギャ?」


 パキッ。


「ギャア!」


「場所教えてるじゃん!」


 結局。


 三匹のゴブリンを相手に、六人は追い回された。


 その中で、ゴブリンの一匹が近くの荷馬車へ向かった。


 そこには母親と小さな男の子がいた。


「いや!」


 母親が子供を抱く。


 レオンの足が止まった。


 怖い。


 はっきりそう思った。


 手が震えている。


 剣を握っているのに、自分が勝てる映像がまったく浮かばない。


 逃げたい。


 でも。


 ゴブリンと親子の間には、誰もいなかった。


「……くそ」


 レオンは走った。


「レオン!」


 棍棒が振り上げられる。


 レオンは親子の前へ飛び込んだ。


 剣を構える。


 格好よくはなかった。


 腰は引けていたし、歯も少し震えていた。


「こ、来い!」


 声も裏返った。


 ゴブリンが棍棒を振る。


「左!」


 ガルドが叫んだ。


 レオンは反射的に身体をずらす。


 棍棒が外れた。


「今!」


「煉――れ、れん……」


 ミレイアが噛んだ。


「もう短いやつでいい!」


「火球!」


 小さな火の玉が飛んだ。


 ゴブリンの足元で爆ぜる。


 体勢が崩れた。


「シオン!」


 ポキッ。


「分かっている!」


 背後からシオンが蹴りを入れた。


 ゴブリンが前へ倒れる。


「ノア!」


「ゴブリンは耳を引っ張られるのが大嫌い!」


「それ知識として役立つの今!?」


 ノアが耳を掴む。


「ギャアア!」


「ほんとだ!」


 レオンは剣の腹でゴブリンを殴り、気絶させた。


 残り二匹も逃げていった。


 六人は地面に座り込んだ。


 誰も喋らない。


 しばらくしてミレイアが言った。


「……勝った?」


「一応」


「ゴブリン三匹に?」


「一応」


 ガルドが真剣な顔で言う。


「魔王まで何年かかると思う?」


「考えたくない」


 その時だった。


 六人の身体を光が包んだ。


《経験値を獲得しました》


《レベルが上昇しました》


 レオンの前に文字が浮かぶ。


《レベル1→2》


「おお!」


 初めてのレベルアップ。


 少しだけ力が湧いてくる感覚。


 レオンは拳を握った。


「これなら、少しずつ強くなれるかもな」


 誰も反対しなかった。


 その時は。


 それが危険なことだなんて。


 六人の誰も知らなかった。

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