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『勇者ですが、勇気しかありません』  作者: asnt2026


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第二十四話 第七観測区

 そこには。


 何もなかった。


「……ここ?」


 レオンは。


 地図。


 目の前。


 交互に見る。


「位置は合っている」


 ガルド。


 第七観測区。


 かつて。


 六人の不適合者が送られた場所。


 今。


 草原。


 崩れた石柱。


 それだけ。


「マルタさんが言ってた」


 ノア。


「地下」


「入口探すか」


 六人。


 散らばる。


 シオン。


 地面。


 壁。


 石。


「ここ」


「何かある?」


「風」


 隙間。


 小さな穴。


「地下から?」


「ああ」


 ガルドとレオン。


 石をどける。


「重い!」


「戦士!」


「お前も持て!」


「俺勇者!」


「荷物持ちだろ!」


「最近それ正式職みたいになってない!?」


 岩。


 動く。


 階段。


 地下。


「本当にあった」


 ミレイア。


 光球。


「行く?」


 レオン。


「ここまで来て帰る?」


「ちょっと聞いただけ」


 階段。


 深い。


 五十段。


 百段。


「長くない?」


 ノア。


「地下施設だ」


 ガルド。


「どこまで」


 シオン。


 ポキッ。


 音。


 下。


 響く。


 ……ポキッ。


 全員。


 止まる。


「今」


 レオン。


「二回鳴った?」


 シオン。


 真顔。


「俺は一回だ」


 静寂。


「下から」


 ミレイア。


 もう一度。


 ポキッ。


 シオンの肩。


 数秒。


 遠く。


 ……ポキッ。


「返事してる」


 ノア。


「やめて怖い!」


 階段の下。


 大きな扉。


 錆。


 紋章。


 教会のものではない。


 円。


 その中。


 六つの線。


「何これ」


 ミレイアが触れる。


 光。


《認証》


 古い文字が。


 浮かぶ。


《職業を入力》


「どうする?」


 レオン。


「入れるしかない」


 ミレイア。


「勇者」


 レオン。


《拒否》


「え?」


「魔法使い」


《拒否》


「戦士」


《拒否》


 全員。


 拒否。


「壊れてる?」


 ノア。


 エルナ。


 扉を見る。


「違うのでは」


「何が?」


「職業を入力、と書いてある」


「うん」


「だから」


 エルナ。


「職業を答えない」


「どうやって?」


「あなたから」


 レオンへ。


「俺?」


「職業は?」


 レオン。


 扉を見る。


 勇者。


 そう答えるのが。


 普通。


 でも。


「レオン・アルヴァ」


 光。


《認証》


 六人。


 固まる。


《一名確認》


「……正解?」


 ミレイア。


「次」


「ミレイア・ノルン」


《二名確認》


「ガルド・レイン」


《三名確認》


 ノア。


 シオン。


 エルナ。


《六名確認》


 そして。


《自律個体群を確認》


 扉。


 開く。


「嫌な認証だな」


 ガルド。


 内部。


 巨大。


 円形。


 中央。


 六つの椅子。


「矯正院みたい」


 ノア。


「違う」


 ミレイアが。


 壁を見る。


 大量の文字。


《世界職能制御観測施設》


「世界……職能?」


 レオン。


 ミレイアは。


 古代文字を読む。


「ここは」


 息。


「教会より古い」


「どのくらい?」


「少なくとも千年以上」


 エルナ。


 神像。


 ない。


 代わりに。


 壁。


 巨大な図。


 人。


 その身体へ。


 上から。


 糸のような線。


 そして文字。


《職能付与》


《行動誘導》


《個体最適化》


 ガルド。


「つまり」


「職業を与える仕組み」


 ミレイア。


「この施設は、それを観測する場所」


 レオン。


 天井を見る。


「神が職業を与えるんじゃないの?」


「そう教えられてる」


 エルナ。


「神を信じていない私でも」


 一度。


 微笑む。


「これは少々腹が立ちますね」


「信じてないのに?」


「存在しないと思っていた相手の仕事まで偽物だったので」


「怒る方向そこ?」


 シオン。


 奥。


 端末。


「記録がある」


 起動。


 古い。


 しかし。


 まだ動く。


《最終使用――二十六年前》


「来た」


 レオン。


 記録。


《被験対象六名》


 カイル。


 リネア。


 バルト。


 サシャ。


 ハク。


 ユリア。


 映像。


 光。


 六人の姿。


「本人たちだ」


 ノア。


 若い。


 笑っている。


 今の自分たちと。


 似ている。


 映像のカイルが言う。


『これ、本当に動いてる?』


 リネア。


『た、たぶん』


 発音。


 少し不自然。


 ミレイア。


 映像へ近づく。


「私と……」


 違う欠点。


 でも。


 同じ。


 カイル。


『もしこれを誰かが見ているなら』


 一瞬。


 真顔。


『俺たちは、これから神に会いに行く』


 レオンの背筋。


 冷える。


『ただ』


 カイル。


『多分』


 一度。


 仲間を見る。


『俺たちのうち誰かは戻れない』


 映像。


 乱れる。


『それでも行く』


『この世界で』


 ノイズ。


 言葉。


『勇者と魔王が――』


 途切れる。


「続き!」


 ミレイア。


 操作。


《記録破損》


「肝心なところ!」


 レオン。


 次の映像。


 ユリア。


 僧侶。


 一人。


 カメラ。


『神は』


 顔。


 泣いている。


『神じゃない』


 エルナ。


 動かない。


『あれは――』


 映像。


 消える。


 次。


 最後の記録。


 カイル。


 血。


 顔。


『もし次の六人が来たら』


 息。


『絶対に』


 言葉。


『俺と同じ選択をするな』


 背後。


 何か。


 巨大な光。


『魔王になるな』


 映像。


 終了。


 静寂。


 そして。


 六人の背後。


 ポキッ。


 シオンが。


 振り返る。


「今の」


 レオン。


「俺じゃない」


 暗闇。


 誰か。


 立っている。


「誰だ!」


 光球。


 ミレイア。


 照らす。


 男。


 長い黒髪。


 古い服。


 年齢。


 三十代ほど。


 だが。


 顔。


 壁の絵。


 映像。


 同じ。


 レオンの口が。


 動く。


「カイル……?」


 男は。


 笑った。


「違う」


 声。


「もう、その名前じゃない」


 六人。


 武器。


 構える。


 男。


 ゆっくり。


 前へ。


「俺は」


 目。


 赤。


「魔王ゼルディアだ」


 時間が。


 止まったように感じた。

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