第25話 敗北と死は同じ味
毎日20時投稿です。
しっかり読んでくださいね。 byリーセル
〔幻創龍〕に新たに生えた腕。
3本の鋭い爪は透き通るほど白い。
その爪から繰り出される【重爪撃】は、リーセルを叩き潰せるほどのパワーだ。
その衝撃で空気が振動する。
空気の振動は、フロア内に龍の雄叫びのような音を発した。
リーセル「やはり、召喚相手には効きませんか...」
クレナイ「転移系の罠か?」
リーセルは俺の視界から消え、声は俺の後方10m先から聞こえた。
リーセル「それにしても、無詠唱とは...これを機にスキルを明かして欲しいものですね。」
俺は立ち上がり、相手の攻撃に備えたが、まだ【死の響歌】の影響で頭が痛い。
多分これは呪印系の攻撃だったのだろう。
俺の回復魔法では、身体の自由をどうにか取り戻すのが限界。
当然〔創造神〕にも呪印対策につながるものはまだ無い。
〔幻創龍〕が破壊されたら間違いなく、
ーー“敗北”
そして、それは“死”でもある。
クレナイ「俺のスキルか?」
〔幻創龍〕を俺の前に移動させる。
〔幻創龍〕の咆哮は、リーセルの髪をなびかせる。
クレナイ「〔幻創龍〕、召喚系の一種だ。」
リーセル「何か事情をお持ちのようですね。まぁ、深いことは聞きませんよ。それでは...【水撃の矢】!!」
リーセルの杖の水晶玉が青くなり、先程のように魔法陣が浮かび上がる。
魔法陣から放たれた水の矢は、俺ではなく〔幻創龍〕に向かって飛ぶ。
クレナイ「【龍...」
ドクン!
頭の奥で心臓の鼓動のようなものが響いた。
その影響で詠唱が中断される。
やむを得ず、〔幻創龍〕に避けさせる。
しかし、水の矢は向きを変え、避けた先の〔幻創龍〕に命中した。
リーセル「水属性の攻撃は、操作が容易。どれだけ逃げても、私のこの魔法は永遠に追尾します。」
〔幻創龍〕の傷は浅い。少し待てば全回復する。
しかし、問題は俺のほう。
俺への呪いの効果が強くなっていて、回復魔法ではどうにもならない。
〔幻創龍〕が破壊は最期を意味する。
回復が終わるまで、大人しくさせなければ。
残り時間50分。
俺も〔幻創龍〕も動けない。
このままじゃ相手の間合い。
でも、無理に近づいたら罠にかかる。
防御もできないこの状況で、何かしらの攻撃をくらえばほぼ死ぬ。
リーセル「苦しそうですね。次の攻撃が最期ですか...
【葬送立風】!」
水晶玉は黄緑に変わる。
同じように水晶玉の色の魔法陣が浮かび上がった。
〔幻創龍〕はまだ動けない。
玉砕覚悟で突っ込ませるか?
いや、無理か。倒せなかった場合自ら負けにいったことになってしまう。
リーセル「5秒待ちましょう。」
魔法陣の周りでは、すでに風が吹き荒れている。
こうなったら、賭けだ。
〔幻創龍〕が、月燐を咥えて俺に近づく。
そして、
グサッ!!
俺の視界は真っ白になる。
リーセル「自殺ですか?そのプライドがなければ勝てたんじゃないですかね?」
月燐は俺の頭に突き刺さった。
そのまま〔幻創龍〕の魔力で効果を発動。
俺は目を閉じた。
次の瞬間ーー
リーセル「バ...バカな!?自分の頭を壊して呪いを解いたのか...?」
0.000001秒。
一瞬でもずれたら死んでいた。
月燐の効果発動時、〔幻創龍〕が流した微細な魔力で脳だけを破壊。
その後、呪印の効果が切れる。
それとほぼ同時、脳を再生する。
しかし、
リーセル「脳の再生は不可能、できても不完全です。死ぬ未来に変わりはありませんね。」
脳の再生は不可能。
過去にできた者が一切いない。
たとえ、どんな実力者でも。
ただし、それを可能にしたのは、圧倒的な魔力量だった。
クレナイ「5分以内に終わらせる...【真の塵戒】。」
唯一生き残る方法は、〔過剰吸収〕。
さっき使った時、腕輪の制限をなくせることが分かった。
本当は使いたくなかったが、今回はしょうがない。
リーセル「なんだこれは...魔力過疎...?」
リーセルは片膝をつき倒れかけるが、杖を支えに持ち堪えた。
俺は月燐を投げつける。
【真の塵戒】
片手武器でしか使えない。
武器を投げつけ、ヒットした者を壊す。
ただし、使った武器も壊れる。
リーセルの目に映るのは、死。
ただひとつだった。
クレナイ「じゃあな...」
リーセル「あり得ない...人間がここまで......」
リーセルの体は音もなく崩れ、風に散った。
残り時間45分。
そのうち俺も魔力過疎になる。
次に動けるのは、残り32分になった時。
ギリギリ間に合うか?
いや、
ーー間に合わせる。




