第17話 守りきれ
毎日17時投稿じゃ。
忘れたら、どうなるじゃろうな? byラリス
蜘蛛系魔物「シャァァ...」
大型の蜘蛛系魔物の、荒い鳴き声が、薄暗い倉庫の中で響くき、肺の奥は冷える。
今朝、俺らは、ギルド”新星“を結成。
続発する少女誘拐事件の犯人たちのアジトへ、任務として乗り込んでいた。
そこで、犯人を追い詰めたかのように思えたが、天井を突き破り、2階から大型の魔物が襲ってきたのだ。
アルト「くそ、逃げられた...まずい...!?」
バコン!!
アルトが魔物の攻撃を受け、置いてあったドラム缶の山に、激突する。
クレナイ「焦るな、あいつらは後でいい!先にこいつを討伐する!」
俺は〔幻創龍〕を発動。
起き上がったアルトも、遅れて〔幻想竜〕を発動する。
蜘蛛系魔物は急に俺らに背を向ける。
魔物が向かったのは、奥の部屋だ。
クレナイ「まずい...ミスラニト!その部屋だけは死守だ!」
ミスラニトは、俺の呼びかけに気づいてくれない。
物陰に隠れてよく見えないが、身体を震わせて座り込んでいた。
アルト「俺が止める!」
アルトは武器を取り出し、
アルト「【炎撃舞陣】!」
アルトの燃える一撃は、魔物の脳天を捉える。
魔物が一瞬怯むが、それでも奥の部屋へ一直線。
アルト「なに!?傷ひとつついてねぇ...」
アルトの一撃は、魔物の厚い甲殻に防がれる。
クレナイ「大丈夫だ!怯ませて時間を稼げ!」
そんな中で、ミスラニトはひどく怯えていた。
俺は、ミスラニトへ寄り添う。俺とアルトだけで勝てたとしても、ミスラニトも戦わないと、意味がない。
アルト「【竜圧】!!」
ドオオン!!
魔物の脚が1本吹き飛ぶ。
蜘蛛系魔物「シュゥゥゥ...」
魔物は一切痛がっている様子がない。
クレナイ「アルト!くる、構えろ!」
アルト「...【竜鱗】!」
ズドン!
一瞬で魔物の脚が再生し、アルトを壁まで飛ばす。
防御が間に合ったため、ダメージは抑えられている。
たが、アルト単騎じゃ勝ち目なしだ。
ついに、魔物が奥の部屋まで辿り着き、扉を開ける。
部屋の周辺の空気が凍りつく。
俺は頭が動くよりも前に、足が動いていた。
あの部屋の中には、凍死した少女の死体がいくつもあった。白く凍りついた指が、まるで助けを求めるように伸びている。用途は不明だが、鮮度を保つために冷凍しているのだろう。
しかし、先ほど運ばれてきた麻袋の中は、抗うように動いていた。
アルト「分かったぜ、お前の意思が!」
死んだ者を復活させることはできない。
でも、その身体を、家族に帰すことぐらいならできる。
蜘蛛系魔物「シャァァァァ!!」
魔物は叫びながら、麻袋に脚を伸ばす。
クレナイ「【龍鱗】!」
ドカァァン!
派手な音が響いた後、一瞬のうちにしてーー
音が消えた。
ミスラニト「.....クレナイ君...?」
アルト「嘘だろ...」
2人の声が、無慈悲にも倉庫に響く。
壁は少し崩れ落ちれ、埃が舞う。
俺は、魔物の脚に身体を貫かれていた。
アルト「ミスラニト!動けぇ!あいつが死んだら詰みだ!」
アルトは、魔物に向かって走り出していたが、先ほど壁にぶつかった際の着地時に、足を捻り思うように動けない。
ミスラニト「やだ...クレナイ君は死なせたくない!」
ミスラニトの身体には、とてつもない量の魔力が溢れていた。
空気が甘く焦げる。
ミスラニト「いくよ、ベア!」
ミスラニトは胸に手を当てる。
赤色の煙が、ミスラニトを包み込み、そこには2つの影があった。
ひとつはミスラニト、もうひとつはーー
アルト「ベア...なのか?」
アルトの目に映ったベアは、前見た時よりも大きい。
その影だけで、倉庫の壁が軋む。
4mを軽々と超える巨体、今までの気配とは全然違かったのだ。
ミスラニト「【夢装】...」
ベアは、白色と桃色が入り混じったような煙に包まれた。
ベア「ウオォォォォォ!!!」
純白の鎧に、2mはある巨大なランス。
それらを、ベアが装備していた。
ミスラ「クレナイ君を刺している脚を、壊して!」
ベア「主人様の望みであれば、私はなんでもしますぞ!」
ベアは、一歩踏み込むだけで、魔物にたどり着く。
その移動距離、約10m。
そして、魔物の脚めがけて、大きく振りかぶる。
ベア「【夢槍撃】!!」
ズバン!!
ズババババ!!
蜘蛛系魔物「キヤァァァ!?」
ベアの一撃は、想像を絶するものだった。
魔物の脚は、根本から千切れ、他の脚3本に深い傷をつけた。
ベア「どどめだ...!」
蜘蛛系魔物「キヤァァァァァァ!!」
魔物の甲高い悲鳴が、倉庫内で反響する。
その音の中に、魔物がが倒れたような、重低音があった。
ミスラニト「クレナイ君!」
アルト「クレナイ!」
2人は、床で倒れている俺にーー
いや、俺の“ダミー”に話しかけた。
ミスラニト「何これ...お人形?」
アルト「じゃあ本物は!?」
クレナイ「ここだ。」
2人は目を丸くする。
俺がいたのは、魔物の背中だった。
その背中には、深く燃えたような十字の傷跡が。
クレナイ「ミスラニトが、いつまでも怯えているから芝居を打った。」
ミスラニト「もう...ほんとに死んだかと思ったじゃん...」
ミスラニトの目で、一滴の滴がきらりと光る。
クレナイ「ほら、任務は終わってないぞ。早く警察と救急隊を呼ばないと。」
麻袋の中にいた少女は、凍死寸前。俺が刺される演技の直前で、少女を救出。物陰に隠れて、回復魔法で応急処置をした。俺の回復魔法には限界があり、少女の意識は戻っていない。
アルト「警察はすぐ、救急隊は後10分で着くそうだ。」
アルトはスマホ片手に話す。
クレナイ「よいしょっ!」
俺は、閉まっていたシャッターを、力ずくで開ける。
ミスラニト「でも、クレナイ君が生きてて安心した。」
クレナイ「俺は、死ぬ訳にいかない。大切な人を守れるような人にならないと。あの人みたいな、背中で守れるような人間に...」
クレナイ「ミスラニト、大丈夫?熱でもあるのか?」
顔を赤くするミスラニトに対して、俺はおどける。
ミスラニト「ううん、大丈夫だよ。ありがと...」
ただでさえ甘い声が、今はさらに甘く聞こえた。




