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3S探索者の代理人  作者: かんだ
第十七章 代理人、大阪遠征に行く

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8. 久宝寺ダンジョン 1

 早朝、ダンジョン前に集まったメンバーはなかなか壮観だった。

 薫、秋人、当夜、聖夜、巌、それに瑛人と匠、さらに綾が立っていた。


「あれ?綾さんも行くん?」

 瑛人があからさまに嫌そうな顔をしている。やはり、父親の治療はこの綾がしたのだろうと薫と秋人は予測をつけた。

 

「うちのダンジョンの閉鎖やもん。ぜひ傍で見たいわあ」

 とにっこりと微笑んで、薫の腕に己のそれを絡ませようとしたが、薫は一刀両断に

「却下」

 と告げた。

「なんで!」

 と薫の返答に顔を真っ赤にしたが、

「ランクCだと無理です。お引き取りください」

 と彼は無情だった。

「回復役がいないんなら私を連れて行きや!」

 と誤魔化すことなく命令口調で薫に告げるも、薫はがんとして受け入れなかった。

 

「今回のパーティーのリーダーは私です。構成員も私が決めます。お気に召さないのでしたらこの依頼はなしです。盟約第六条にしたがってここまで来たのですが、そちらが破棄するというのでしたら、お好きにどうぞ」

 冷徹な口調でそう告げると、彼女はぐぬぬと唇を噛んだ。

 

「そう、意地悪を言わんでやってくれ」

 遅れてやってきた章は、娘の肩を抱き寄せた。

「惚れた男の役に立ちたいという乙女心や。わかってやってほしいわ」

「は?」

 薫が顔を歪める。

「神崎先生もお人が悪いなあ。昨晩娘から誘いがあったやろ」

「ああ」

 薫のテンションがいっきに下がった。薫は不快な出来事だったので脳内から削除していたが、確かに何か紙を渡され、そこに番号とメッセージが書いてあったが、速攻でゴミ箱に捨てたから忘れていた。

 

「あ、これやばいやつ」と神崎家一同は察した。

 

「私が綾さんにまったく魅力を感じない点を三つ挙げます」

 ずばっと切り捨てにかかるリーダーに当夜は頭を抱えた。

 

「一つ、仕事に私情を挟む人間は嫌いです。己の技量を顧みない、他人の足を引っ張るなどは言語道断です」

「二つ、婚約者がいる相手に粉かけるとか最悪です。自分の方が勝ってるとか勘違いも甚だしい」

「三つ、初対面でいきなり自分の部屋にお誘いしてくる女性は好みじゃないです。慣れきってますよね?私そういう性に奔放な方は苦手です」

 と一本ずつ指を折って告げる。

 

「ちなみに私の婚約者はこの三つの条件の正反対の素晴らしい女性です。おまけに人類最強です」

 にこりと笑って見せた。そこでようやく、薫の婚約者が霧崎桜子であるということがどういうことか理解したらしい。薫は顔色の悪くなった2人を見て、鼻でフンと笑った。

 

「どうします?依頼を続けます?私たちこのまま引き上げてもまったく困りません。このまま大阪と京都観光に切り替えます」

 と笑顔で告げると、章はしぶしぶ頷いた。

「わかった。娘は同行させない。行け」

 と偉そうに告げた。

 

 しかし、その目は今日もはっきり見えない秋人の顔に注がれていた。

「今日も顔を見せてくれないのかね?秋人くん」

 男の声には執着が滲んでいるようだ。

「この帽子、最近気に入ってるので」

 秋人は例の猫耳帽子を被っているので、章には顔が見えないのだ。

「作戦が終わったら見せてくれると嬉しいね」

 章のじっとりとした言葉に、秋人はわずかに首を傾げて終わらせた。

 終始、跡取りの優は現れることはなかった。

 

 

 久宝寺ダンジョン入り口で秋人が収納から何やら冊子を取り出した。

「はい、これ」

 全員に配り終わると、聖夜がパラパラと冊子をめくる。

「何ですか、これは?」

「旅のしおり」

 と秋人が答えるも、神崎家以外の全員はそれを見てどう反応していいか分からないという表情を浮かべている。

 

「綺麗にできたな」

 と薫が感心の声をあげると、当夜もうんうんと頷いた。

「そう?よかった」

 と秋人が楽しそうに笑っている。おそらく薫と当夜にとってはそれで十分なのだろう。

 

「遠足じゃねえぞ」

 と匠が低く呻く。瑛人もちょとだけ同じ気持ちだった。しかし、彼らがギャフンと言うのはこれからである。

 

 

迷宮探索(マッピング)

 秋人の詠唱と共に3Dの立体構造地図の構築が始まる。

「48階層か。なかなかの深さだな」

「うん。ボスはここだね」

「オアシスは3箇所かあ。最初のは12階層っすね」

 薫、秋人、当夜は平然と検討している。聖夜も知っているから黙って見ている。聖夜から一応話を聞いていた巌は何とか黙っていられたが、瑛人と匠は

「はあああああ?」

 と珍しく声を揃えて驚嘆していた。もちろん、彼らは一族が残した地図を持っているし、ダンジョンボスのいる祭壇までの道のりも知っているので案内するつもりだった。しかし、こうもあっさりと余所者に把握されるとは思わなかった。

 

「あー、今回は閉鎖目的なので、できるだけ素早く簡易に進みます。1回目の休憩は12階層です。そこまで一気に走ります」

 薫が神崎家以外のメンバーに説明するも、久宝家のメンバーは頭上にはてなを飛ばすだけだ。

「私が防御魔法を掛けますので、あとはみなさん身体強化で走り抜けてください。モンスターは先頭の秋人が倒します。討ち漏らし、あるいは横からの不意打ちは当夜と聖夜にお願いします」

 では、スタート。

 と薫が合図すると神崎家、朽木家のメンバーはあっという間に見えなくなった。

「早く!」

 と遠くから声がする。

 

「おい、瑛人。お前、あれどう思うよ」

「いやあ、なんつーかSランクってバケモンやなって」

「俺Sランク他にも知ってっけど、あんな非常識ちゃうで」

 匠と瑛人はぼやきながら己に身体強化を掛けた。

「ほな、とりあえずあっちの流儀に任せるか」

 匠はしぶしぶという感じだったが、瑛人が目を見張るような見事な身体強化だった。瑛人は一つ首を振ると、当主一家のエースの後を追った。

 

 

「8階層だ!ここのボスはケルベロス…」

 瑛人が説明しようとしたのと同時に、秋人が双剣を振り抜いた。あっさりとケルベロスの首が飛ぶ。

「よし、次!」

 ガコンとボス部屋の先に通路が現れる。ほぼ足を止めることなく全員が駆け出す。

「やってられっかあああああああ」

 と匠が叫んだが足は止めない。瑛人は必死に前を向いて駆け抜ける羽目になった。

 

 

 12階層のオアシスで、瑛人は肩で息をしていた。

 神崎家の3人が涼しい顔なのは納得だが、聖夜と巌は自分たちと同じ条件ではないのだろうか。特に巌は今までこんなバカな方法でダンジョンを攻略したことなどないはずである。蔵持の当主だったのだから。しかし、彼は感慨深そうに幾度も頷いていた。

 

「いやあ、懐かしいな。春彦と夏実ちゃんを思い出すよ。あいつらもめちゃくちゃだったからなぁ」

 としみじみ告げる。言われた秋人の方が微妙な顔をしていた。

 聖夜は当夜をオアシスの隅っこに引きずっていって何か小言を言っている。どうも、薫への防御が甘いという説教らしい。弟は首をすくめて聞いていた。

 

 そして、一番不思議なのは匠である。

 

 瑛人の中で匠は才能だけはあるが、まったく修行もしないちゃらちゃらした青年で、こんな体力任せな攻略は一番苦手そうな印象だったのだが、彼は息を乱しもしていなかった。


「た、匠、お前、平気なのか?」

 息も絶え絶えの瑛人を見て、匠は

「んなわけねーよ。あー疲れた」

 と言って地面に座り込んだ。だが、汗もかいていないのだ。

 

 

「少し休んだら次のオアシスまで行きますよ。次は23階層。ここで本日は一泊します」

 と薫は秋人が出した3Dマップを指して告げる。

「ラジャーっす」

 と当夜が適当な相槌を打って兄にぽかんと叩かれていた。

 どうやらこの無茶な行軍はまだ続くらしい。瑛人はぐったりとしていたが、「どうぞ」と薫からポーションを渡された。

「美味しいやつです」

 とにこやかに告げる。まあようするに、これ飲んで頑張れよってことなのだろう。瑛人は無言でそれを受け取って飲み干した。

 

「それじゃ、続き行きます!秋人!3階層ぶち抜ける?ここから先3つは迷路階層だ」

「大丈夫!」

 薫の指示に秋人が了解を示す。新参2人は意味が分からなかったが、秋人が階層入り口から通路ごと吹き飛ばすのを見て絶句した。

 

圧縮衝撃波(ハイプレッシャー)って通路壊すのにしか使ってないけど、僕も薫の雷神の雷鎚(トールハンマー)みたいに小分けできるように改造しようかなぁ」

 と秋人が呟く。

「ああ、いいんじゃないか。使いやすいぞ。小分けにしたら。この前も道路1メートル陥没で済んだしな」

「あれ、修理代請求されたの納得いかないっすよ」

 と神崎家の面々は崩れた通路を眺めながら呑気に会話している。

 

「聞いてはいたが、凄まじいな」

 とは巌の感想で、聖夜もため息しか出ない。そして、瑛人と匠はもはや無言だ。

 

「さて、進みましょう」

 にこやかに薫が告げる。絶対にこの攻略方法はおかしいと思っていたが、誰も口には出せなかった。

 

 

 そこからようやく23階層にオアシスに辿り着いたのは、もう時間でいうと夕方だった。

「キャンプ飯を作るぞ!」

 と薫が号令を出して、いそいそと準備を始める。

「聖夜ー、ごはん手伝って」

「はい、先生」

 料理人のジョブを持つ朽木兄は薫のよきアシスタントである。

 

 巌はあまり調理はしたことがないので、テントを張る方を手伝いにいったのだが、薫と秋人が収納に入れてる非常識な簡易宿泊設備を設置するだけだった。

「これ、買った奴誰だ?って思ってたらまさかの神崎先生でしたか」

 若干呆れ半分に、その超高級テントを眺めた。

「いや、快適っすよ。これ」

 当夜が慣れた手つきで設置を終える。彼も最近はもう薫たちの非常識さに慣れているので、不思議そうな顔の叔父にいかにこの宿泊設備がすごいかを説明しだした。

 

 瑛人と匠はそんなメンバーをぼんやりと見つめている。

「なんか、おれたちあんま役にたたんね」

「あー、まあ、連中はSランクやからな。あんま気にすんな」

 珍しく匠が瑛人をフォローしたので、瑛人はちょっとびっくりした。今日1日で瑛人の中で匠の株が結構上がった。

匠「いや、なんかこう。ばかばかしいって気持ちが一番でかいわ」

瑛人「俺、お前と初めて意見が一致したわ」

匠「・・・女紹介してほしいんか?彼女いない歴年齢やろ?」

瑛人「大きなお世話や!!」

薫「喧嘩よくない」


次回の更新は6/28(日)です。

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― 新着の感想 ―
足手まとい連れて行ってもスピード落ちるだけだし、紐で引きずってミンチになっても良ければワンチャン?
「やってられっかあああああああ」 それはそうwww 匠くんドンマイwww 優秀だったはずの自分が急に凡人の気がしてくる、 パラダイムシフトのお時間だ(*´∀`)涙拭けよ若者
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